死神の浮力

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163823003

感想・レビュー・書評

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  • *娘を殺された作家は、無罪になった犯人への復讐を計画していた。人間の生死を判定する〝死神〟の千葉は、彼と共に犯人を追うが――*
    再読にして☆5つに昇格。初読時は、あまりにも残酷で理不尽過ぎる内容に耐えられず、半ばすっ飛ばして読んでしまったけど、改めて読み返してみると、一行一行がとても丁寧に真摯に織られていることに気付く。胸が締め付けられるのは、絶望や憤りや無言の咆哮の場面だけではない。「シェリー」の可愛らしい男のファルセットに。「やったね」とはしゃぐ声に。何とも表現しようのない様々な感情が去来する、深い余韻の残る作品。

  • 「死神の精度」の第2弾「死神の浮力」ずっと読みたかった本だ。前作は短編集だったが、今回のは長編。一人の人物への仕事に密着した話。うーん、悪くないけど期待し過ぎたかな。
    今回死神の千葉は、山野辺という作家の元へ行く。仕事はもちろん「可」か「見送り」の判断だ。そして今回は20年の寿命を保証する還元キャンペーンもついてくる。この辺りは最後に良い味を出していて笑えた。ただやはり長い。サイコパス相手に振り回される山野辺にはハラハラさせられるが、その日までは死なないと確実に分かっているのでちょっと不思議な感じ。外見の描写が少ないせいか、意外と人物を想像しにくかった。客観的な語りが多いので、臨場感が若干伝わりにくい気もした。
    死神は人の近くにいる時間が長いせいか、人間味が強く出ていた。どっかおかしいだろ?というよりかは、人に愛着がわいているように感じられた。死神独特の世界観みたいなのは前作の方が楽しかったかも。
    全体的にまとまり方は好きだし、読み終えた後は雨がちょっとだけ好きになりそうだ。

  • 前作と比べていまいち。千葉がくど過ぎになっている。もっと飄々とかかわりを持つか持たないかぐらいがよかった。あと、一冊で一つの話より、前作のように数話のほうが後でどうつながっているかの楽しみがある。敵の最後もありがちパターン。内容にしては字数が無駄に多い。最後の5ページでちょっといい気分になれる

  • 『死神の精度』の続編であり長編です。
    正直、ガッカリしたー。長編であることがとても辛かったです。。結末はやっぱり知りたいから、最後まで読みましたけども。

    今回は、世の中の25人に1人はいる(とこの物語では設定されている)サイコパスに娘が殺された夫婦の復讐物語です。父親である山野辺諒を死神の千葉が担当し、結果的に復讐をじゃましたり手伝ったりな物語。
    なんですが、もういつもの名言集がこれでもかって出ちゃうんでげんなりです。ここまで名言を乱用されるとうんざり!(主にパスカルの引用)

    伊坂さんの父親の気持ちや、死に対する考えはわかるんですけども。。
    それ以前にお話がだらだら長過ぎて、とにかく読み終えた後「ふぅ」って感じでした。

    『死神の精度』は面白かったのになぁ。
    しばらく読むのやめたほうがいいのかな。
    でも、陽気なギャングシリーズは読もう。。

    山野辺の父子関係は、『ビッグフィッシュ』を思い出させました。

  • 死神のおとぼけ具合(本人はとぼけてないんだろうけど)が面白くて好きです。
    昔の伊坂幸太郎が好きという人におすすめ。

  • 調査過程の結果は神!?がかりな助太刀、、。シリアスな基本ストーリーに愉快痛快な活躍を織り混ぜ、悲愴な復讐を、のっぴきならない復讐劇に変えてしまう…死神・千葉。音楽をこよなく愛すかたわら、やはり神と呼ばれるのは困るらしい♪。あまり読まない伊坂さんながらも、前作より好きな作品。

  • 20150826 読了

    大好きな千葉さんが長編で読めるというなんともご褒美物語!
    ズレてるところとか飄々としているところとかマイペースなところとかちゃんと時代背景に合わせようと努力しているところとか、伊坂作品でも好きな人物上位なのでとっても嬉しかった。

    ストーリーは案の定というか、やっぱり暗くて重い。
    愛娘を殺害され、裁判にも負け(?)、復讐を企てるその親のところに千葉さんがやってくる。
    え、こんなに不幸を背負っているのに死んでしまうの?誰かに裏切られて?復讐を果たせないまま?と終始はらはらしながら読み進める。

    サイコパス相手に「通常の思考」が通用しないことはわかるけど、いざ対峙したときはやはり太刀打ちできないことを痛感させられる。主人公夫妻が不憫で仕方なかった。
    けど「千葉さんのおかげで一週間が楽しかった」という台詞に救われた。
    伊坂作品はこういうのだから大好き。テーマがいくら暗くても辛くても悲しくても、言葉のセンスとユーモアで「作品を読むというエンターテイメント」になるから。多分これは今までも行ってきただろうけど、これからもずっと言い続ける。(笑)

    山野辺夫を「可」にしたのは、「小説は、めでたしめでたしだとつまらない」と作品中でも述べていた通りだと思う。千葉さんはこうやって、どんどん「可」の判断を下すけど、周囲の人物たちが絶望に打ちひしがれていないところがまたいいなと思った。魔王の時も、安藤兄の最後は悲しかったけど、その後の「呼吸」も「モダンタイムス」なんか、もう最高だったし生きていた。死んでしまったけど安藤兄はずっと物語の中でみんなの中で生きていた。

    登場人物にフォーカスするなら、山野辺嫁も強くて凛々しい。伊坂作品の女の子(特に奥さん)ってだいたい強いな。憧れる女性像。芯があって朗らかで逞しい。エピローグはぐっときたし、最後の1行はにやけてしまった。ここでどうなったとしても、千葉さんは千葉さんだし想像させる感じに終わらせて「ちくしょー、やるなー!」ってまたひとりで妄想にふける楽しみが待っていた。

    確執のある父親とのエピソードにもぐっときた。
    「怖いかどうか、確かめてきてやる」なんてかっこよすぎる。親ってこういうもんか。子供のために身を徹す。
    親がカッコ良ければ子供はグレないとチルドレンであったけど、まさにその通り。まぁぐれてはないけど仲が良いとも言えないけど。(笑)
    でもこのエピソードがあるから、「死ぬのはなんだか、怖くない」っていうので、あぁ、良い親子関係だな、と感じた。

    人はいつか死ぬ。それはわかっているけどせめてその日まではそんなこと知らなかったというふりをして生きていたいけど、そんな中でも前向きになろう、家族を愛そう、と思える物語でとってもよかった。
    あと何があっても仕事は仕事と割り切る、だけど真面目すぎるほどの姿勢は社会人は見習うべきだとも思った。(笑)

    働いたのは「浮力」だ、なんて。かっこよすぎる。
    千葉さん大好きです。

  • 久しぶりの伊坂さん作品。

    千葉さんに長編でじっくりとら関われるなんて…!

    サイコパスな隣人に一人娘を殺害され、その犯人に復讐を企てる夫婦のお話。
    人間っぽく見えて、どうしようもなくズレてて人の機微なんてわからない千葉さんですが、関わった人はなぜか必ず幸せになれる。
    死神だし、その翌日とかには死んでしまうのですが、そんな風に感じてしまうから不思議。

    そして還元キャンペーン…えぐい…
    思い通りといえばそうなのかもですが…

    さらっと読める印象ではありましたが、面白かったです!
    エピローグ、切なかった…


    いろんな人の人生としに向き合うお話。
    死神シリーズ、また出してほしいなぁ。

  • 死神の精度は短編集だったが、今回の浮力は一本の話になっていた。

    千葉が不可を出すのか出さないのか気になりつつも、結局は出さずに可となりターゲットは死ぬ。

    サイコパスを追う夫婦の物語。

    死を判定に来ている仕事人間の千葉が2人に与える空気感が絶妙。

    特に参勤交代に参加した話はユニークだった。

    最終的に夫婦の知らぬところでサイコパスへ望む苦しみを与えることができる。
    たった7日間が瞬く間に過ぎて行くスピード感は読む手を早めた。

    人間はずっと平和なままでいることはできない。
    平和であり続けると不安になり、それは争いを生む。
    そして再び平和を願うということの繰り返し。

    ただの毎日の繰り返しを人は飽きる。
    その毎日を失って初めて自分のいた場所の尊さを知る。
    人間とはめんどくさいなと思った。

    故に、こうして本を読み、新聞を読み、テレビを見、世間を知ることで自分の現状のありがたみを知って日々を大切に過ごさねばと思う。

  • 死神のシリーズといっていいものか。
    死神の精度の続編です。

    修辞法を理解しない(ようにみえる)
    音楽に耽溺する
    雨が降る

    そんな死神こと千葉のお話です。
    連作短編だった前作と違ってこれは長編です。
    でもあっというまに引き込まれる。

    サイコパスの話や子供を殺された親の復習というミステリはあまたあって、でも伊坂幸太郎のアプローチはさすがというか。

    凡百にしないなぁという感じです。

    幽霊屋敷の話が、最後、死に向かうときの心がまえに結び付いた時に涙が出た。
    父を思い出して・・・。

    亡くなった父は最後の一週間ぐらいかなり意識が混濁していたんですが、付き添いの私に向かって夜中にふと「心配しなくていい」みたいなことを妙にはっきりした声で告げたことがあったなぁと。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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