- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163823003
感想・レビュー・書評
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話を畳むことができなくなったミステリー作家は何を書けばいいんだろう
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「死神の精度」につづく二作目は、娘の仇を追う夫婦と死神の千葉の波乱に満ちた一週間を描いた物語。
あまりにも理不尽に生を終えた娘、なのにこれもまた理不尽に無罪放免された「二十五人に一人」のシリアルキラーの素質を持つ犯人の青年。彼の存在のおぞましさに立ち向かう夫婦の無力でありながらも必死なさまは、幾多のリアルな事件を思い出したりもしてきりきりと悲しくさせられます。
そしてただ静かに夫婦の顛末を時に見守り時に邪魔し、そして時に助ける死神の千葉の存在が、夫婦の救いの光明となっているのがどこか、ほほえましいし、死神なのに、と肩をすくめたくもなる。
これらのシリアスとファンタジックな要素のバランスがとても巧く、基本的に辛さの滲む復讐譚で逃亡譚でありながら、読み手をそこまで重く引きずらせません。けれどいったいどうなってしまうのか…という緊迫感は終盤までつづき、ある意味残酷ながらもほっとできたその結末は納得できたのでした。
繰り返される父子のエピソードがまた印象深くて、このようなかたちで子にものごとを教えることのできた父親は、やはり素晴らしい父親だと感じました。それを諦念や終わりでとらえるのではなく、いつかの当然の帰結、と考えるということ。それによって、今現在がより重要でかけがえのないものだと、信じられるようになるんだな、などと思えました。 -
サイコパスVS娘の復讐に燃える夫婦+千葉さんの話。
面白かったけど死神シリーズは短編の方がいいと思った。長編では千葉さんの異常さが目立ってしまって、短編ではクスッと面白く感じたことが今回はだんだん重く感じた…。
千葉さんは正義の味方でもスーパーヒーローでもない、ただの生真面目な死神だから、馴れ合いみたいな密な時間はあまり描く必要ないと思う。千葉さんと調査対象者の間は淡々とだけどそこには何かがあったかもしれないぐらいがちょうどいい。
山野辺の父の話がよくわかり泣けた。深く考えさせられた。 -
死神はいつもマイペースで愉快痛快。
しかし、メインの話よりも山野辺の父の話の方がぐっと来てしまった。お化け屋敷…! -
忙しくてなかなか読了に時間がかかってしまいましたが、それでも面白かったなあと思える作品。
フィクションといえども、「死」について作中ですっと言葉にしてしまう伊坂先生すごい。 -
山野辺夫妻と箕輪くん。本城。
そして千葉さん。
死についてのいろんな話とちゃりんこ爆走(笑)
山野辺さんのお父さんの最期が印象的。 -
この作品は犯人に復讐をするストーリーではあるが死神千葉と人間の少しズレた会話を楽しむ作品かもしれない。
死神による寿命還元セールは笑える。死んだほうが楽な本城にはいい気味(笑) -
人間の死というとても重いテーマなのに、最後まで一気に読ませてしまう、伊坂さんの文章力はすごい。
幸せ、不幸せというものは、今際のきわまでわからないものなのかもしれません。 -
14/05/06
「死神の精度」は短編集だったけど今回は長編で、くどいなと思うことちらほら。それでも死神の千葉が面倒に思いながらも(音楽を聴くためにも)、人間と共に過ごす時間は読んでいてとても愉しい。ママチャリに背筋を伸ばして乗り、山野辺に「後ろに乗れ」と声をかけるシーン(P396)はもうほんと素敵すぎると思う。(!)
同僚の香川が語る「誰かの記憶に溶けるから、減らない」(P183)、‘のっぴきならない’小木沼くんの「何をするにしても、協力しますよ」(P300)のシーンがわたしの中でのこの小説の山場であります。 -
久々に死神「千葉」の登場。なんとなくずれているところが素敵。雨の中、無表情の男がこぐ猛スピードのママチャリが自分の車に近づいてきたら、ものすごく怖いだろうな~
あくまで仕事だからといえど、とことん付き合う千葉の真面目っぷりも楽しい。