イエス・キリストは実在したのか?

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900933

感想・レビュー・書評

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  • 近所の本屋でたまたま目に入りタイトルにつられて思わず購入。
    イスラム教徒による研究の成果だと言うことでますます興味をそそられた。
    イエスの活躍した時代の時代背景、イエスや同時期にたくさん現れた予言者の活動、そしてキリスト教の成立について検討し、聖書の福音書の他に当時のいろいろな文献からキリスト教信仰の対象としてのイエスではなく、実在のイエスについてその実像をとらえようとしている。
    当時イスラエルはローマ帝国に支配されている。ローマの統治はその地域の支配層を使った間接統治であり、ユダヤ人あるいはユダヤ教の支配層と結託している。それに不満を持ち現政権を倒しローマから独立してユダヤの王国を作ろうとする革命家の一人がイエスだったということである。現代でもよくある話だ。
    従ってイエスは暴力を否定しないし、ローマ人から見れば世間を騒がす過激派の指導者者と見られて不思議はない。
    イエスはユダヤ教徒で、ユダヤ人にしか説教をしていないし、奇跡も行っていない。言ってみればキリスト教徒は何の関係もないわけである。
    奇跡と言っても現代の目で見ればやらせ、まやかし、奇術の類だったようなので少々笑える。
    結局、イエスをキリスト教の信仰の対象にしたのはパウロであり。パウロ教と言ってもいいくらいである。そのパウロでさえもユダヤ教徒からは異端扱いされて、異教徒に信仰を広めてキリスト教という世界宗教になったというわけである。
    本書は冷静な視点から書かれている。巻末に約70ページにわたり注釈があり、論拠や見解の相違点などが記されている。
    著者はイラン革命の時にアメリカに亡命して成人になっており、高校の時にキリスト教に触れて一旦はキリスト教徒に改宗してキリスト教を学んでいる。そこで、聖書が矛盾だらけであり、イエスの実像が全くわからないと言うことが本書作成のきっかけの一つである。著者の20年に及ぶ研究の成果であり非常におもしろく読めた。
    ただ、翻訳が時々おかしなところがあり、一度読んだだけでは理解できないようなところがいくつかあり少々残念だった。

  • タイトル通り、イエス・キリストの実像に迫る。当時の記録、習慣などなどから、実在したイエスはどんな生き方をして、いかに死んでいったか、そして神になったのか。
    当然ながら聖書の知識があったほうがより楽しめる。

    図書館から借りて、途中で挫折。

  • キリスト教が時間をかけて入念に、また、政治的な意図で創作であるのが分かった。

  • みなとLib

  • 本書の原題は『Zealot』“熱情”とかいう意味らしい。
    そして副題は『The Life and Times of Jesus of Nazareth』たぶんナザレのイエスの生涯と時代とでも訳せばよいのだろう。

    第1部「ローマ帝国とユダヤ教」、第2部「革命家、イエス」、第3部「キリスト教の誕生」に分かれた本文は約250ページ。その後に2段組で約70ページの膨大な原注が付く。(この原注が本文以上に面白い)

    帯には「イスラム教徒による実証研究で全米騒然の大ベストセラー」「“聖書”から落とされた史実」「捏造された物語」などの惹句が書かれている。

    本書は、聖書やその基になった記録からの文献学的歴史学的アプローチである。

    新約の諸福音書にある記述を、時代や資料や風俗などを勘案した上で事実と創作に分類していく。福音書も著作物である以上著者の思想が反映され、それを政治的に利用する上で、事実は恣意的に解釈され、求められる形になるよう不都合な部分は削られ創作部分が付け足されていく。

    イエスの処刑から40年後に書かれたマルコ、60~70年後に書かれたマタイとルカ、70~90年後に書かれたヨハネ。あたりまえのことだがその時代によりキリスト教はその立場が変わっている。その後も様々な文書が付け加えられ現在我々が手にする聖書となっている。

    本書は、聖書の記載にあるイエスの物語や思想の虚実を明確にして、実像に迫ろうとしている。またその内容も邦題や帯の文言にあるような扇情的で下品なものではなく、至極穏当な文献学的な研究内容となっている。もちろん信仰や宗教を否定するものではないことは言うまでもない。

    本書を読んで最も重要と感じたのは、イエスの言動が、統治者の代表であるローマの総督にとって、また大祭司などの宗教者にとって、更には各階級や各民族に属する民衆にとってどうだったか、という状況を推察することであろう。その政治的立場の違いによりイエスは予言者にも宗教家にも革命家にもテロリストにもそして神にもなり得るのである。それは彼がそうであることを周りが望んだからなのである。

    信仰がどのようにして生まれ育っていくのか。宗教がどのように求められそれに成っていくのか。興味は尽きない。本書はとてもエキサイティングな内容の良書である。

  • 久々にキリスト教関連の本を読んだ.ふしぎなキリスト教という新書を数年前に読んだけど,比較するのが憚られる.こちらは,きちんとした本.ユダヤ教とキリスト教の断裂していることが,歴史的に説明されていて,勉強になった.

  • うーん。何だか分からん。

  • 紀元30年頃のユダヤがどのようだったかが良くわかる.イエスは意外とナショナリストだった.でもやっぱり主な資料が聖書だからなあ.もうすこし突っ込んで人間イエスを描いてほしかった.

  • 【全米騒然の大ベストセラー】救世主(キリスト)としてのイエスは実在しなかった。いたのは、暴力で秩序転覆を図った革命家(ゼロット)としてのイエスだった。

  • 丁寧に文献に当たって、イエスの行動の背景、ローマ帝国との関係、エルサレムの状況等、わかりやすく述べられている。
    パウロに改ざんされたイエスではなく、革命家としての人間イエスを私も知りたいと思う。

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