サロメ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 2009
感想 : 246
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905891

感想・レビュー・書評

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  • オスカーワイルドのサロメの挿絵を担当した画家ビアズリーに関するフィクション。画家が夭折してしまったこともあり、サロメの挿絵が代表作となってしまったが、長生きしていれば、あんな美しくもないサロメだけじゃない傑作を残していただろうなというのが一番感じた。
    ビアズリーの姉目線という独特の切り口ではあったが、
    あんな干渉してくる姉は嫌だなという率直な感覚があったし(女独特の粘着をしつつもそれを悟らせない狡猾さがさもありなんで気持ち悪い)オスカーワイルドを巡って、ダグラス卿とビアズリーが火花を散らしていたという設定も少々無理があるのでは‥。ダグラス卿はオスカーは結局自分に首ったけというその傲慢さが良いのであって、コソコソと根回しが出来るほどお利口さんではないと思う。
    せっかくなら当時噂されていた姉との近親相姦で書いた方が面白かったのではないかと思う。数段スキャンダラスだし。とりあえず私の中ではダグラス卿=ジュードロウ で変換されていたので、嫉妬に狂うだけのダグラス卿の一面は面白味にかけるし彼の魔性な美しさがわかっていないなと感じた。勝手な感想だが、ダグラス卿の残っている写真を見ると、本当に幸薄な絶世の美青年で驚く。それを完璧に表現したジュードロウも凄い。話が甚だしく脱線したが汗

    しかし他が取り上げることのない画家をとりあげ、平易な文章でたくさんの読者を惹きつけることが出来るのが、原田先生の素晴らしいところであり、今回も一般向けに書かれた本としては、ビアズリーやオスカーワイルド入門書として考えればとても最適。ぜひサロメを読みたくなった。

    ただ、せっかくオスカーワイルドとビアズリーというマニアックなところを出すなら、もっとスキャンダラスに書いたら、コアなファンを楽しませてくれるのになぁと感じた。結局姉は女優になりたかったのか、弟の1番になりたかったのかどっちつかずで終わって残念。

  • サロメの不安定さをこれでもかと、感情の中に落とし込めていて非常に面白かった。史実がどこまで本当なのかはわからないけど、だからこそ妄想が一段と膨らんで楽しめる。原田マハの美術系小説は本当に好み。
    現代の話が薄かったことだけが、唯一腑に落ちなくて残念。

  • 戯曲サロメのストーリーもなかなかにエグいけど、それを生み出した作家、挿絵画家、その姉、作家の恋人の嫉妬、情念の方がドロドロで、夢に出てきそう。姉が一番怖かった…

  • オスカーワイルドの戯曲サロメの挿絵を描いたイギリスの画家 オーブリー・ビアズリー
    その生涯を、姉とオスカーワイルドを軸として描かれている。
    芸術に身を捧げる倒錯した世界に魅かれる

  • オスカー・ワイルドと彼の書いた「サロメ」の挿絵を描いたピアズリーとの関係をピアズリーの姉の目線から描いた話。
    ビアズリーは若くして結核を患い、絵の才能があるのに働いて姉と母親を養っていた。
    姉は売れない女優。
    そんな彼らに光明が差したのは、その頃色んな意味で有名人だったオスカー・ワイルドとの出会い。
    オスカー・ワイルドは詩人で小説家、そして戯曲も書いていた。
    そして、何よりその奔放な私生活、同性愛者ではないか?という噂により悪名高い人物だった。
    そんな彼とビアズリーが出会い、芸術家どうしの才能のぶつかり合い、心の交流が生まれる。
    それはやがて一線を越えるものとなりー。
    その様子を側でずっと見ていた姉の目線で描いた作品で、実は姉がこの本の中では手綱を握っていたのだと描いている。

    オスカー・ワイルドは以前映画を見た事があり、何となくどういう人なのかは知っていた。
    ジュード・ロウが出ていた割にはあまり有名な映画でないと思う。
    でも、個人的にはすごく印象的な映画で、ずっと記憶に残っていた。
    芸術、美青年、同性愛。
    多分、そういう倒錯的な世界に個人的に惹かれて興味があるからだと思う。
    と言っても、この本では同性愛の事については何も具体的な描写はない。
    そうだったのでは?という推測だけで、だから、同性愛の話が苦手という人も問題なく読める。
    話の大筋はやはり芸術家という人間性、主人公となったビアズリーの姉の心の動きやその行為、という事になる。
    創作の部分が大きいと思うけれど、事実を大胆に推測して小説として面白く書いているというのは個人的に面白く読めた。

  • オスカー・ワイルドとビアズリー姉弟の愛憎物語。
    ビアズリーの挿絵は強烈に焼き付いているが本人のことは何も知らなかったので(これを20歳くらいの若さで描いていたなんて!)、新鮮で興味深かった。
    ただ、現代パートとの結びつきやラストがちょっと雰囲気で流した感じがあって、置いていかれた気分。
    「カフーを待ちわびて」も、最後そんな印象だったな…。

  • 私と一緒に地獄に堕ちよう

    帯のインパクトがすごい。
    泥沼愛憎劇。

    2017年 文藝春秋
    装丁:大久保朋子

  • (2017.04.24読了)(2017.02.28入手)(2017.02.05・第2刷)
    挿絵画家のビアズリーの物語です。主人公は、姉のメイベル・ビアズリーです。舞台女優です。オーブリー・ビアズリーの代表作は、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の挿絵です。僕も、1980年に岩波文庫版の「サロメ」で見ました。一度見たら忘れられない絵です。
    オーブリー・ビアズリーとオスカー・ワイルドとの交友の様子などが描かれ、どのようにして「サロメ」の挿絵を描くことになったのかというあたりも書いてあるのですが、メインのテーマは、「サロメ」の英訳を誰がやったのか、ということです。
    イギリスでは、聖書に取材した演劇を上演することは許されなかったということで、ワイルドの「サロメ」は、フランス語で書かれ、私家版として印刷されました。英訳と英訳版の挿絵をビアズリーが担当したかったということですが、挿絵しか担当していません。どうしてなのかという謎に迫ったのがこの作品です。(英訳は、アルフレッド・ダグラス)
    「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」と同様、現代からはじまりますが、前の二作品ほどの重要な位置を現代の部分が持っているわけではありません。
    (ビアズリーの英訳版の原稿が見つかったという設定にはなっていますが)
    ラファエル前派のバーン=ジョーンズやフランスの象徴主義の画家、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌなどが登場したりミュシャがポスターを描いて有名な女優のサラ・ベルナールも出てきて、どのような時代にビアズリーやワイルドが活躍したのかがわかります。
    ビアズリーの絵の印象は、ものすごく退廃的なので、ビアズリーやワイルドをもっとえげつなく描いてほしかったのですが、原田マハさんにそれを期待するのは無理があるので、他の人の描いたワイルドやビアズリーの伝記にでもあたってみたいと思います。
    ビアズリーの絵の影響を受けた人は何人かいるようですが、その中に米倉斉加年が挙がっていました。なるほどとうなずけます。

    メイベル・ビアズリー オーブリーの姉
    オーブリー・ビアズリー 挿絵画家
    オスカー・ワイルド イギリス・作家
    サラ・ベルナール フランス・俳優
    エドワード・バーン=ジョーンズ イギリス・画家
    ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ フランス・画家
    フレデリック・エヴァンズ 「ジョーンズ・アンド・エヴァンズ」書店の店主
    ジョン・エヴァンズ レットン劇場の劇場主
    アルフレッド・ダグラス クィーンズベリー卿のご子息
    ジョン・ダグラス クィーンズベリー候
    甲斐祐也 東京国立近代美術館・研究員
    ジェーン・マクノイア ロンドン大学大学院・研究員

    【目次】
    プロローグ 二〇××年九月上旬 サヴォイプレイス ロンドン
    一八九八年三月上旬 マントン フランス
    一八九一年七月 ロンドン
    一八九一年八月 ロンドン
    一八九一年九月 ロンドン
    一八九二年三月 ロンドン
    一八九二年六月 パリ
    一八九二年七月 ロンドン
    一八九三年二月 ロンドン
    一八九三年四月 ロンドン
    一八九三年五月 ロンドン
    一八九五年四月七日 ロンドン
    一八九八年三月十六日 マントン フランス
    エピローグ 二〇××年十一月末 ブフ・デュ・ノール劇場 パリ
    一九〇〇年十一月三十日 ブフ・デュ・ノール劇場 パリ
    主な参考文献

    ●<サロメ>(13頁)
    <サロメ>があったからこそ、ビアズリーはその名を広く知られることになった
    ビアズリーの挿絵があったからこそ、<サロメ>は永遠に人々の記憶に残るものとなった
    ●新約聖書、聖マタイ伝(21頁)
    ユダヤのヘロデ王は、兄弟の妃であったヘロディアを娶ったが、これに意見した預言者ヨハネ(ヨカナーン)を牢につないだ。ヨハネに、ヘロディアは殺意を抱くが、ヨハネが聖人であると知っているヘロデ王はそれを許さない。ヘロデ王の誕生日に、ヘロディアの娘が踊りを披露し、喜んだ王は、なんでも褒美をつかわすと約束する。娘は母と相談して、ヨハネの首が欲しいと言う。衛兵が獄中のヨハネの首を刎ね、盆に載せて娘に差し出す
    ●絵を描くこと(57頁)
    「絵を描くことは女が進んですることではない」という通念が一般的だった。
    ひょっとすると、画家はヌードモデルを相手に創作をしなければならないから、女性が画家になるなんてはしたない、という道徳的観念があったのかもしれなかった。
    ●模写(109頁)
    やがてケイト・グリーナウェイの絵本を描き写し、バーン=ジョーンズやウィリアム・モリスの絵を模写するようになり、彼らの絵を一ミリたがわず完璧に写し取るのを、なんて巧いんだろう、と驚きを持ってみつめた。
    ●魔法(162頁)
    一瞥しただけでもう忘れられなくなってしまう。それがビアズリーの魔法なのだとエヴァンスは言った。
    ●共通点(170頁)
    「ビアズリーが新時代の寵児なら、さしずめこの書き手(オスカー・ワイルド)はいま現在の風雲児だ。しかし、この両者には共通点がある。挑発的で、魅惑的で……悪魔的なところがね」
    ●上演禁止(200頁)
    ロンドンでの初演(<サロメ>)を企画して、懇意にしている劇場主と話を進め、実はリハーサルまでこぎつけていたのだが、突然、当局から「上演禁止」を言い渡された。聖書の登場人物を舞台で演じてはならない、という法律に引っ掛かったのだ。

    ☆関連図書(既読)
    「サロメ」ワイルド著・福田恒存訳、岩波文庫、1959.01.05
    「女のかたち」吉行淳之介著・米倉斉加年絵、集英社文庫、1979.10.25
    「楽園のカンヴァス」原田マハ著、新潮社、2012.01.20
    「ジヴェルニーの食卓」原田マハ著、集英社、2013.03.30
    「暗幕のゲルニカ」原田マハ著、新潮社、2016.03.25
    「デトロイト美術館の奇跡」原田マハ著、新潮社、2016.09.30
    (2017年4月25日・記)
    内容紹介(amazon)
    現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。
    このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。
    彼の名は、オーブリー・ビアズリー。
    保険会社の職員だったオーブリー・ビアズリーは、1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。
    当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。
    退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。

  • 「暗幕のゲルニカ」「楽園のカンヴァス」ほどに力を入れて書いてないと思うけれども、サラっと読めるし、それなりに魅力的。オスカーワイルドとビアズリーの退廃的な関係。姉の女優メイベルが病弱で才能のある弟に寄せる濃すぎる姉弟愛。メイベルはワイルドに対する憎しみの入り混じった複雑な感情。これに「サロメ」のサロメが熱望した愛するヨカナーンの首が捧げられるシーンがリンクして・・・。題材自体興味深いし、相変わらず、原田マハはその絵の魅力の伝え方がうまいと思う

  • 姉のキャラがブレてないか?

    戯曲サロメを書いた男色家で魅力的なオスカー・ワイルドと、サロメの挿絵作家である天才画家オーブリー・ビアズリー、そして姉のメイベルの話。

    まず、素材としては最高ですね。

    サロメの話自体が刺激的だし、ビアズリーの挿絵も不思議な魅力がある。

    なんで只の白黒の絵があんなに目を惹いて、印象に残るのか、それこそが天才の技なのか…

    残念なのは、よくよく思い返すと大したドラマがないって事なんだよな〜、なんかワイルドとオーブリーの心の内が描かれてないような…

    もっとワイルドとビアズリーの絡みを中心に書いていたら、さらに面白くなったのでは?と思わざるを得ない。
    (姉視点だからしかたないのだが…)

    ついでに、姉のメイベルのキャラがぶれてるような気がするのがどうにも違和感があった。

    売れない女優が主演を掴みとるとか、初心な女が狡猾な策略家になったりとか、まー変化はあって当然なのだがその変化の過程がないような気がする。

    総論としては、材料は良いけど味付けと煮込みが足りない感覚。

    うーん、オススメしたいような、したくないような微妙な本です。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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