Iの悲劇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

感想・レビュー・書評

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  • 限界集落を舞台としていて、設定そのものが興味深かった。
    ザ・公務員な主人公を見ながら、公務員が市民と接するときはこんな気持ちなのかな…など考えながら読んだりして、それも面白かった。
    ストーリー自体は薄っぺらいというか、ちゃちゃっと話が進められていく感が否めない。
    が、それだけさくさく読めるので非常に読みやすかった。
    そして、最後の「Iの喜劇」
    なるほどそう来たか〜!というのが率直な感想。
    西野課長と観山には何かあるなとは思っていたけど。
    すごく切なくなるラストでしたが、それで話全体が引き締まった感じ。
    連作短編の醍醐味!

  • +++
    一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつも―。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ。
    +++

    限界を超えて人がいなくなった集落に、定住者を募り、村を活性化させるという市長肝いりのプロジェクト「甦り課」に配属された万願寺の視点で描かれる物語である。予想以上の応募者があり、何とか移住者がやってきて、村の体裁が整いつつある蓑石村だったが、住民間に次々と問題が発生し、万願寺が新人の観山とともに奔走するが、その甲斐空しく、次々に転居者が出てしまう。どうする万願寺、どうする甦り課、というところだが、途中から、ふとある人物の行動の怪しさに気づいてしまう。それがどういう理由によるものかが空かされるのは最後の最後なのだが、そういうことだったのかと腑に落ちる思いと、そんな七面倒くさいことを、とあきれる思いとが相半ばする。ともかく、駆け引きのあれこれが興味深い一冊である。

  • タイトルから受けるイメージとは違って、「県庁おもてなし課」のような展開
    しかし、これは米澤さんの作品、シニカルでブラックなエピソードが続きます

    連作短編集で、ややつながりの悪い部分はありますが、そうだよねと思わされるお話です
    そしてラストは・・・

  • Iターン推進プロジェクトによって、かつて廃村となった集落に引っ越してきた人々。
    プロジェクトを進める市役所〝甦り課〟の職員を主人公に、移住者の間で起きるちょっとした謎を解決していくミステリー。

    公務員らしくない観山と、公務員らしい公務員万願寺のやり取りが軽妙でクスッと笑える。
    特に公務員経験者としては、予算や所管に縛られ動きの取れないお役所仕事や市長の鶴の一声みたいなところにかなり共感するし、面白かった。

    とは言え、日常の謎なので、個々の謎自体は想定の範囲内。ミステリー半分、お仕事小説半分という感じで読み進めていたら、最後にそう来たか!
    途中で感じた些細な違和感が一気に解決。すっきりはしたけれど、ビターなラストは米澤さんらしい。

  • 面白い

  • 村民がゼロになった山合の集落に、人を呼び込み、定住させようというプロジェクトが立ち上がり、主人公の男性はプロジェクトの一員となる。
    プロジェクトといっても、それに従事するのはたった三人。
    やる気のない上司と、公務員としての自覚がおぼつかない後輩女性、そして主人公の男性。
    最初、12世帯招致する事になったプロジェクトに何世帯か応募し、移住するが、やがて、それぞれの住民の間で問題が持ち上がる。
    火事、事業の失敗、子供の行方不明、毒キノコ、仏を巡るトラブル・・・。

    これを読んで、公務員とはこういうものというのを的確に描いてるな~と思った。
    私が知っている公務員は、優秀な人たちで、だけどその能力を組織の意向に沿って行動する事に注いでいる人たち・・・で、それを的確についてる。
    読んでいて、救急車がくるのに何時間もかかる、学校もない、そんな所に人を呼び込むのはどうなんだろう?
    まず、そういうのを整えてからのプロジェクトじゃないか?
    その二つの考えを見事についた物語の真相だった。

    読み始めるまではもっとシリアスな雰囲気の話かと思っていたが、割に軽いタッチで描かれていた。
    主人公と、とぼけた雰囲気の上司、後輩のやりとりがどこかコミカルだからだと思う。
    とにかく、よく出来た話だな・・・の一言。

  • 人が住まなくなった土地に、移住希望者を募り、地域の再生化を図ろうと動き出した南はかま市の「甦り課」の公務員らしい公務員の万願寺、人当たりはいいが、やる気があるのかイマイチ微妙な新人の観山、定時で帰ることに生きがいを感じている西野課長の三人と、移住してきた住民たちを襲うトラブルを描く連作短編集。
    ちょっとくだらない「謎」なのだけど、その裏に隠された真実が最終章で明らかになり、少しぞっとする。
    さすが、毎年「このミス」にランクインしてくる作家さんだけあり、ミステリー要素は満載でミステリーファンにはたまらない。
    それぞれのキャラも上手く役割分担が出来ており、本格的でありながら、さくっと読めるのもいい。

  • お勧め度:☆6個(満点10個)。一度死んだ村に人を呼び戻す目的で作られた「甦り課」。合併によって、村民がいなくなった村を再生させるためにプロジェクトに加わった主人公「万願寺邦和」「観山遊香」、課長「西野秀嗣」が移住者たちのトラブルを解決するというプロット。なかなか、お仕事物としては面白かったけど、実際はありえないようなトラブルばかりだった。限界集落の現実が見え隠れするが・・・。最後にそれぞれ人の目的がわかるにつれ、なるほど、そういうことかと納得もする。ミステリーでもなく、どちらかと言うとホラーぽいかな?

  • これぞ米澤穂信さんだなーと。
    読みやすい短編が続き、最後にはしっかりと落とす。
    さすがです。
    私は見事に騙されてましたね、、

    これから、こういう限界集落が増えていきそうだなーと重い気持ちになったりもしました。

  • 面白いけどちょっと暗い。
    最後の方は、なんとなく仕掛けがわかってきたからいいのか?とも思えるけどトリックが少し強引に感じる。。。
    しかし、楽しめた!

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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