Iの悲劇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

感想・レビュー・書評

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  • Iの悲劇のIとは?
    それはIターンのI。
    無人となった地区にIターン者を受け入れようとした自治体の話。

    甦り課の3人が魅力的なキャラクターで、悲劇というような悲しさも感じず、楽しく読め進められた。
    最後に万願寺が見た幻、
    移住者が思い思いに過ごす理想的な里山の光景は、私も思い描くことができた。
    でも、それを実現するのには…。
    ここで初めて、地方自治の現実的な悲壮を感じた。

    近年、地方で土砂災害や水害が起きるたび、人の居住を制限するべきではないかという議論が持ち上がる。
    たしかに、その方がインフラ面で金もかからないし、安全。
    万願寺が弟に語った仕事への思いは、そんな社会問題を思わせるものだった。

    ところどころ、なんかおかしいな?という違和感はあるものの、章ごとには不条理劇のような感じで一応の解決をみる。
    それが最後に全部攫われ、すっきりした…いや、これはすっきりなのかな。
    真相がわかってモヤモヤが増したことは間違いない。
    解決したと見せかけて、それもまだ本当の解決ではなかった、という米澤さんらしい「しかけ」だった。

    • kurumicookiesさん
      サマーさん、こんにちは。
      米澤先生の「羊たちの」を読んで、止まってしまったのですが、サマーさんのコメントを見て、こちらの作品を読んでみたくな...
      サマーさん、こんにちは。
      米澤先生の「羊たちの」を読んで、止まってしまったのですが、サマーさんのコメントを見て、こちらの作品を読んでみたくなりました。
      2020/12/02
    • サマーさん
      kurumicookiesさん、はじめまして!
      コメントありがとうございました。Iの悲劇は、なんとなく世にも奇妙な物語っぽい感じで、わりか...
      kurumicookiesさん、はじめまして!
      コメントありがとうございました。Iの悲劇は、なんとなく世にも奇妙な物語っぽい感じで、わりかし楽しく読めました。
      米澤穂信さんの本は、学園ものよりも、こういう大人が主人公の方がわたしは好きだなぁと思います^_^
      2020/12/05
  • 穂信氏読破の道程です。
    いや、不穏。イヤミス。なんか変、が全部伏線。表紙絵の暗さも、イメージ通り。
    犬はどこだ、と同じ読感。救いがあるようなないような。
    作者さんの出身県がモデルになってそう。嫌いじゃない。

  • 村の復興で重要視すべき事柄
    10世帯の家族がこの人里離れた無人の寂しい村にIターンし、それぞれの生活を楽しむことを目的に暮らし始める。ところが、人間関係・隣近所等の問題に接し、遂には全て去って行く。それは町の予算が無く全てに対応しきれない貧そな村の宿命なのだ、と気づく。ミステリーは最後に町の企みが明かされる。町の予算分割「無い袖は振れない」(何を優先にすべきか)をリーダーたるべき管理者(町長)は優先すべきで、名誉等に拘ると最悪の財務状態になるばかりか、町民の支持も低下する。

  • 市役所ミステリー。
    身内に公務員がいるので、市民との間にいろんなことがあり、それは大変だと聞く。公務員も人間だと思っても少しお手柔らかにと思う。この小説も、過疎地に移住者を呼び寄せるプロジェクトを担う市役所職員が、移住者と市職員の間で右往左往する物語。
    頑張ったのに結果は…。
    なぜこうなってしまったのか。
    最後はアガサ・クリスティー。

  • 星3.5

    住む人の居なくなった村を再生するプロジェクト、市長の肝いりで始まったプロジェクトチームメンバーは、仕事しない上司と脳天気な新人と主人公の3人だけ。

    それでも何家族かのIターン希望者を受け入れて村の再生がなるかと思ったが、問題が次々に発生。問題の謎解きもちょっと楽しめます。

    プロジェクトにかける主人公の孤軍奮闘と、物語の結末の意外さと、日本のどこにもありそうな誰もいない村の哀しさと…なかなかにおもしろい一冊でした。

  • 人が住まなくなった集落に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトを担当することになった「蘇り課」の職員が経験する移住者とのあれこれの連作短編集。第一陣で十二世帯が転入してくるが、移住者の間では次々と問題が発生し‥
    一つ一つのエピソードはインパクトが弱いが、読了すると地方行政のままならなさが苦い思いを残す。公務員という範疇で住民のために奮闘する語り手の万願寺はいいキャラだと思う。

  • なんとなく東北地方なのかなぁと思わせる山間部、冬になると雪で埋もれるほどの集落箕石を復活させるためのIターンプロジェクト。
    メンバーは仕事をしない課長、西野と学生気分の抜けない新人観山、そして幾ばくかの出世欲がありながら、この得体の知れないプロジェクトに抜擢されたことは左遷なのではとうなだれながらも日々孤軍奮闘する万願寺。

    移住者どおしのいざこざやトラブルが頻発し、その解決をめぐる過程で繰り広げられる日常のミステリ集。

    まぁそういう畳み方になりますよね。

  • 田舎暮らしにあこがれる瞬間は誰にでもあります。TVの人生の楽園なんて見ると、早い所蕎麦屋かパン屋で修行でもして、明るい山村でカフェでも開いて生きて行きたいななんて思いますよね。
    そしてこの本は無人になった村に移住希望者を募るも、住民に不幸な事が起こって少しづつ住民が離脱していくというミステリーです。
    田舎暮らししようと思っている人が読んだら、ナチュラルに嫌な気持ちになりそうな本です。ちょっと田舎暮らししたいなと思っている人には鬼門かも。

  • 廃村復活のユーモアミステリーと思って読み始めたが、、「悲劇」と銘打つ通り、最後には、「そして、誰もいなくなった」。

    地方行政の現実と、何にでも寿命がある、という真実とを痛感した。

    トリック自体は小仕掛けなものが多いが、「浅い池」はシンプル過ぎて、やられたー感を楽しめた。

    主人公の万願寺さんが、一生懸命なだけに最後はかわいそう。。

  • 読後感が悪い
    苦々しい思いがする
    もしかすると主人公万願寺の胸の内と同じかもしれない
    感情移入させられたとも言えなくもない

    次々と起こる事件には一応の謎解きが示されるが小さな違和感が残り積み重なっていく
    最後には違和感の正体がひとつの流れであったことか解き明かされるが、は〜スッキリしたとはならない

    作者の視点、力点あるいは「願い」はなんなのか?
    目的は問題提起?
    う〜んどうもスッキリしない

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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