Iの悲劇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

感想・レビュー・書評

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  • 序章を読んで「人が一人も居なくなった村で、これからどんな呪いが…?((((;゜Д゜)))」とガクブルしながら読んでいたけれど、途中から「田舎をなめちゃいけない!」とか「市役所の人もちゃんとフォローしてやりなよ!」とかIターンもの小説として気持ちがゆる~く(^^)しかし最後に真相が分かって、ガーンとなった(゚A゚;)結局、金なのか(-_-;)

  • ① この本を選んだ理由
    筆者の作品が好きだから。

    ②あらすじ 
    市長肝いりのIターンプロジェクトに挑む万願寺を中心として、ストーリーが展開されていく。


    ③心に残ったこと


    ④感想
    途中で、そして誰もがいなくなったを想像した。
    よくできてるな…という感じ。
    こころに残るものはないけど、面白かった。


    ⑤登場人物

    (南はかま市Iターン支援推進プロジェクトメンバー)
    万願寺 まんがんじ
    観山遊香 かんざん
    西野課長

    市長
    飯子又蔵

    (移住希望者)
    第一陣

    久野吉種 くのよしたね
    久野朝美


    安久津淳吉 じゅんきち
    安久津華姫
    安久津きらり 4歳


    第二陣

    牧野
    夢見る若者

    立石
    普通の夫婦と、好奇心旺盛な5歳の子供

    久保寺
    本の出版をしている50代の独身男性

    上谷
    31歳独身男性。
    アマチュア無線。

    河崎
    29歳のヒステリックな妻。
    年上のおとなしい夫。

    滝山
    24歳独身男性。

    若田
    美男美女の夫婦。

    長塚
    自己主張の強いダメなオヤジ


    丸山
    女性2人組。



    ⑥読み方
    蓑石 みのいし

  • 住人がいなくなった集落に移住者を集めて、村の再生を目指す「蘇り課」。
    しかし、市職員の奮闘にも関わらず、移住者は次々に転出していき、一年もしないうちに全員がいなくなった。

    最後に解き明かされた謎にゾクっとした。

  • 公務員の仕事って。
    リアルな描写があって現実ではないかと錯覚してしまう。
    第5章で、万願寺が弟と電話で話してる会話が印象に残った。地方自治って何だろうと考えてしまった。
    読み終わって、題名におおいに納得した。

  • 市の目玉政策として打ち出されたIターンプロジェクトは、人のいなくなった集落「蓑石」に再び人を呼び寄せるというものだった。このプロジェクトのために「甦り課」が組織され、三人の職員がプロジェクトの成功のために尽力するのだが、蓑石には次々にトラブルが起こり……
    そんな物語は、ひとりひとりのささやかな夢や希望を含めていきながらも、きわめてシニカルに収束していきます。

    その収束のさせ方こそ作者の真骨頂、ではあるのですが…、主人公に肩入れしたわけでもないですが、ただ「それでは彼らがあんまりだ」とやるせなく思ったのは事実でした。

    なるほどという着地点ではありますし、現代日本の事情を考えれば有り得るリアルさがある。それぞれのエピソードの読み応えも意外性もあって、話としてとても面白い。けれど、主人公のようにひとりひとりの居住者のことを思いやると、なんとも切ない、むなしいばかりだな、と感じてしまうのです。

    誰が悪い、という悪を見つける爽快感や勧善懲悪の醍醐味がある物語ではなく、ただ「そうせざるをえなかった」という巨大な事情がのっぺりと横たわる話、というか。
    そのために、ひとりの力では抗えない無力さがじわじわとつらくなってくる話だと感じたのでした。

  • 地方再生のIターンプロジェクトを担った3人の公務員が一癖も二癖もある移住者とそこで発生するご近所トラブルめいた謎を解決するミステリ。

    まず驚いたのは一人称の巧さで「僕」「私」をほぼ使わずに進行する万願寺の語り口の妙味に感服してしまった。語り手である万願寺は至って普通の面白みのない皆がイメージするところの公務員でありながら、凡庸ではなく、さりとて優秀すぎるということもない絶妙な塩梅であり、読者の目線に非常に近く感じるため非常に読みやすかった。余談だが、一人称における「僕」「私」の自己主張は自意識の強さや幼さとも受け取れるため、そこの部分で古典部シリーズや季節限定シリーズなどと差別化を図っている点が上手い。自分を過度に意識しない語りこそが観察力のある公務員らしさであるとも言える。

    また本作の上手い点は明確な探偵役の不在であり、直感と洞察で物事を見抜く観山と、安楽椅子探偵である西野課長、そして現場百遍と足で稼ぐ刑事タイプの万願寺と、それぞれが自分の立場を生かして謎を解くというのが面白く、従来のミステリにありがちな配役に囚われすぎると逆に一本取られてしまうだろう。また、主人公の万願寺と弟との電話での会話シーンに、作者にしては珍しく公務員に対する考え方が随所に見え隠れしていながらも、それが強固な強い主張というわけではなく、あくまで公務員と地方再生という本書のテーマの範囲を逸脱しない点に非常に好感を持ってしまった。

    連作短編集ではあるが、最後の謎とそのトリックはあらかた読めていたため最後のネタばらしはあまり驚かなかったが、西野課長が一枚噛んでたことまでは読めなかった。確かに揉め事を軟着陸させる天才なら、もともと無理のあったプロジェクトを移住者の住民の自主的な形で失敗に終わらせるというのは理にかなっており、その手足となって動いた観山も含め、その構図自体がミステリにおける「あやつり」の構図になっているのは舌を巻いた。そして米澤ミステリのお家芸である動機重視のホワイダニットへと収束していくのも非常に巧みである。

    久しぶりの米澤穂信作品だったが、現代作家とは思えない昔語りの雰囲気の出る筆致と、うらぶれた地方都市のどんよりした空気感が最高にマッチしており、誰もいなくなってしまったというフィニッシングストロークも効いている。苦い結末と主人公の抱える青臭さ。これこそが米澤穂信作品の最大の魅力の一つだろう。

  • ブラックで全然爽快じゃないけど妙に現実的だった。

    住む人の居なくなった集落にIターンで人を呼ぶ
    蓑石市甦り課の万願寺が主人公。

    甦り課って名前が怖いよ。

    なんだかなぁ、万願寺くんは相当な単細胞と思われていたのだなぁ
    実際そうだったし。

    米澤さんうまいなぁ。
    短編の校正もほんと上手い。

  • エラリー・クイーンにあやかってか、『○(アルファベット)の悲劇』というタイトルのミステリは他にも書かれたことがある。
    この作品の「I」って何だろうな~と思って、手に取りました。
    “Iターン”の“I”なんですね。
    それはそれは…いろいろあるだろうな。

    限界集落を立て直すお話は読んだことがあるけれど、この作品は、住人が全くいなくなった後、空き家に賃貸として人を入れ、村を再生しようというプロジェクトにかかわった市役所の職員のストーリーだ。
    プロジェクトのチーム『甦り課』は、定時で帰る課長・西野秀嗣(にしの ひでつぐ)、新人の観山遊香(かんざん ゆか)、そして自分・万願寺邦和(まんがんじ くにかず)
    移住者と地権者(大家さん)の間を取り持ち、生活に不便のないよう便宜を図る、相談に乗る、といったサポートが主な仕事。

    誰もいなくなった村に、全く新しい人たちを入れたところで、それは元の“蓑石”という集落なのか…?
    というのが万願寺の最初からの疑問だが…

    ご近所トラブルミステリとして、興味深くどんどん読めた。
    75ページの移住者リストは時々見返すのに便利。


    序章 Iの悲劇
    蓑石がいったん無人になったいきさつ。

    第一章 軽い雨
    広いからって、何しても迷惑にならないと思ったら大間違いだよね。

    第二章 浅い池
    簡単に起業できると思ってる若い人。

    第三章 重い本
    大量の本と古い家、相性抜群。
    病弱な子供に田舎の空気は良いが救急車が来ない。

    第四章 黒い網
    極端な自然主義者には手を焼く。

    第五章 深い沼
    万願寺の弟は、兄の仕事の内容を心配している。
    蓑石は税金をのみ込むだけの深い沼…、と彼は言う。

    第六章 白い仏
    極端な自然主義者と同じくらい手を焼く神がかり。

    終章 Iの喜劇
    全然喜劇なんかじゃないけど。

    どんどん読めて、どんどんどんでん返しでビックリ!
    ひょっとして、村そのものが事故物件?
    なんて思ったけれど、そうではなかった。

    そうか…過疎の村って、行政的にはそうなのね、と考えさせられる。
    それぞれが自給自足だった昔昔ならいいけれど…

    理屈では分かっても、もしかして上手くサポートして行ったら定着した人もいたのではないか?
    村に明日が広がったのではないか?
    …と、万願寺は考えるが、税金はもっと重要なことに使うべき、とすぐに理性が囁く。
    それでも…
    困った人たちは多かったけれど、夢を持って移住してきた人たちの人生を弄んだことは許せない、と思う万願寺であった。
    いいやつだな。

  • 図書館本。そして誰もいなくなった。日常は止まらない。Iターン計画。町を甦らせる。甦り課。ずっとつきまとう不安な空気。不穏な雰囲気。そっか。そういうことか。最後のどんでん返し。ぞくぞくしたな。観山ちゃんも。西野課長も。一筋縄ではいかない雰囲気。頭のキレる感じ。最後に納得。万願寺くんのその後が気になるな。

  • 社会派ミステリと呼んだら良いかもしれない。
    過疎問題を解決させるべく、Iターンを狙う市長直属の甦り課の課長・西山、主人公の万願寺、学生の雰囲気の抜けない新人・観山。それに蓑石に引っ越してきたあくの強い住民たち。
    面白くなる要素満載の題材を、米澤さん上手に描いています。一つ一つのエピソードもミステリ仕立てで解決が図られますが、全体のストーリーにも謎が。
    この作品で終わりにするのは勿体ない。ぜひ続きが読みたいです。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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