- Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163914022
感想・レビュー・書評
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幕末に現茨城県笠間市(当時の笠間藩)の下士の娘として生まれ、日本初のイコン画家となって、昭和まで生き抜いた山下りんさんの話。あの時代に、結婚せずに画家として独り立ちをしたいと考え、浮世絵師や蘭画家に弟子入りし、日本初の美術学校の1期生となり、正教徒となって日本初のロシア留学を果たした女性がいたとは…。才能も熱意もあり、幸運もあったとはいえ、人生を切り拓いていく彼女があまりに勇敢で強くて、圧倒された。頑固で不器用なところもあり、決して要領よく生きているわけではないところも、リアルな人間臭さを感じられて、良かった。これまで全く知らなかった方だけど、いやぁ、すごい人がいたものだ。
読み終わった後で、ネットで検索して、りんの描いたイコンを何作か見た。芸術と信仰の間で苦しんだりんのイコンは慎ましやかで清潔な雰囲気で、美しいなと思った。いつか本物を生で見てみたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ニコライ主教様が素敵でした。
ところで
駆け落ちして戻ってきた美人、もおそらくモデルがいるのだろうが、子孫がこの本を読んだらどう思うのか気になる。 -
この主人公のように、とんでもない時代に想像もつかない事をやってのける、強さ、たくましさ、一途さを尊敬して止まない。
少し自分と似ていると思いながら、その決断の早さ、しかし早計で後悔もともなう生き方に圧倒される。
それでも前に進むしかない人生
たった一度の人生
これを運命というのか -
読み応えがあった。イコン画家、山下りん、実在の人物だものなあ。感嘆。作品は国内にけっこう残っているようだからいつか目にする機会があるといいな。
明治維新期のもと士族、女性、という出自で、翻弄されるような人生を送った方はあまた存在したろうけれども、そのなかでもかなり稀有では。あの時期のロシアの地をみたことがある日本人女性がいたんだなあ。
生まれながらの芸術家の資質があり、学ぶ欲求があり、宗教はたまたま手段であったような出会いなのに、彼女の人生にロシア正教が染み込んでいくように芯を成していく。宗教のことも、いろいろ調べながら読んで、勉強になった。神のいる宗教とともに生きるひとたちのことをどこか遠くに異質に見ていたかもしれない私。生身の人間臭さに溢れていた。いつの世も理不尽で、ひとは間違い、悔いて、ひとつひとつ気づくんだな。2021の夏に刊行されたこの話を、いままさに世界中がロシアの指導者に注視しているこのタイミングで手に取ることになろうとは、なんだか奇な感じがしながら読んだ。宗教と芸術。先日読んだ仏師定朝の、仏の姿を彫るという問いに触れたばかりだったので、心のなかですごく対比が光った。
兄も良いよなあ。しゃああんめえ。肝の太い人物。可枝の選んだ道のことも読後まで残った。エレナも脇役ながら強烈。量も、さいごの訪問のひと幕が深かった。じわじわと後味長引く物語。強く生きる姿に学びと力をもらえる一冊。でした。 -
ロシアでの葛藤、お姉さんたちの行末。
歯がゆい人生の中での気づきや支えられるあたたかさ。いいことも悪いことも人生なお話。 -
山下りん、を初めて知りました。
なんと、可愛いげのない、自分が、自分がと驚くほど自分だけの人かと。それが、芸術家の性なのかしら?
魅力的なニコライ主教様がいなければ、途中で読むのを止めてました。
そのニコライ主教様が独りであるのでは?
と思いたってからのりんは、イリナとなり
聖像画師と成っていったのだと思いました。
明治時代のロシアと日本の関係が、その時代の空気感が伝わって来ました。
イコンが、ルネッサンスの写実で生き生きした宗教画と違うのが、よく解りました。
絵画ではなく、イコンは祈る人々と聖人たちを繋げる窓だったんだと。
ニコライ堂を見るたびに、東北訛りの180センチ越えの茶色のたっぷりのお髭の主教様を思い浮かべる事でしょう。
ロシア革命時に亡くなった多くのストラストチェールペツに、敬意を。
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こんな人が居たんだなぁ。世の中がどんどん変わっていく中で前だけを見て自分のしたいと思うことをして生ききってる。清々しい読後感で良い読書でした。
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絵が好きで好きでたまらない者の情熱とエネルギーをまざまざと感じる。
明治、大正、昭和を生きた日本初の女性イコン画家、山下りんのサクセスストーリー。頂点に立つものはこれくらい強くないとならないですね。もともと絵の才能はあったから…としてもこの努力と苦労は強靭な精神力を有します。そして、りんさんを支える師匠や上司、同僚、家族が善人で温かい。
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明治時代、西洋画を学びにロシアへと行った画家、山下りんの生涯について。芸術の話と宗教の話が並行して進んでいく。
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まかてのうまさ。ニコライ主教の素晴らしさ。