白光

著者 :
  • 文藝春秋
3.70
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本棚登録 : 600
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914022

感想・レビュー・書評

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  • 日本初の正教会聖像画師の山下りんの物語。

    正教会も良く知らないし、山下りんも初耳ですがニコライ堂は知っていたのでその歴史として興味を引かれました。
    まず主人公については、前半の自分の夢と周りからの期待とのギャップがわからず苦闘する様は息苦しかったものの、悟ってからの聖像画師としての潔さは心が洗われました。
    ほとんど無名な登場人物の中では一番有名なニコライ大主教の半生と日本正教会の歩みも分かるのは勉強になりました。
    そしてなにより巻末の資料の膨大な量が作品に対する著者の真摯な姿勢を示していて圧倒的に感動しました。

  • ドキュメンタリーチック
    正直心を動かされる所が少なかった

  • 序章 紅茶と酒とタマートゥ、これだけでもう「面白そうっ」と思ってしまう(タマートゥがなんだかわからなかったとしても)。
    そしてワクワクとしてくる書き出し。情景が思い浮かび、自然の美しさと豊かさが荘厳に感じられる。きりっと真っ直ぐに気持ちが立ってくるのがわかる。つまらないことにグズグズと揺れる気持ちを払い退けてくれるような清々しさ。物語はそうやって助けて正してくれる、たった1ページでも。ありがたく読み進む。

    胸に迫ったところは、りんがニコライ主教に許しを請うところ。主教の東北ブレンド訛りが微笑ましい。
    朝井まかて作品の中ではグッとくるところが少なかった方だけど、絵師の物語ということで惹かれる。
    それにしても実話なのがすごい。

    ニコライ堂は松本竣介の絵で知ってたけど行ったことはない。訪ねてみようかな。

  • 2022.06.08

  • イリナ山下りん、明治時代に絵を描くためにロシアの修道院へ渡り、描きたいものとの違いに苦しみながら、3年で帰国。
    それにしても、人間が学ぶ意思を持つということはこんなにも人の行動を、駆り立てるものなのか。
    若いということは、ムチャもするけど、素晴らしい。

  • 新聞の書評で知り読んでみました。
    山下りんという人のことも日本におけるロシア正教のことも知らなかったのでいろいろ勉強になりました。
    小説としては並の面白さでしたが、そもそも史実を基にしたフィクションなので面白さというよりはその当時を人々の思いや生活をどのくらい伝わってきたということで感想をかかないといけません。
     その意味ではイコンを描くということ、明治時代に独身で女性が生きるということ、さらに女だてらに洋行を果たすこと、それぞれの覚悟と結末が描かれていてとても面白い小説でした。
     結句と向後ぃう言葉が多用されていて、読みにくかった。結句ってあまり使いはしませんよね。

  • 読了

  • 令和4年

  • 特定のテーマに魅せられ、それを追い求めるというような生涯という物語は、概して興味深いものである。本作は、主に明治時代から大正時代にそういう生き様を見せた人物の伝記に着想を得た小説である。
    山下りん(安政4年5月25日(1857年6月16日)―1939(昭和14)年1月26日)という人物が在る。幕末期に生まれ、明治期、大正期に活躍した女性である。本作はこの山下りん、またはロシア正教関係で使われた呼称ということになるイリナの生涯の歩みを解く物語となっている。
    この山下りんは一部には大変に高名なのかもしれないが、一般にはそれ程でもないかもしれない。彼女は、日本で初めてロシア正教の聖像画を描くことを専らとした女性画家である。
    「幕末期に生まれ、明治期、大正期に活躍した女性画家」と言って、この山下りん以外の例も思い当たらないのだが、彼女に関しては「ロシア正教の聖像画」というモノを描き続けていたので、少し特殊な感を抱いてしまうかもしれない。
    ロシア正教では聖像画を多用する。教会で多く用いるが、信者個人が所持するという例も非常に多い。そういう多数の聖像画を描く画家という存在が必要なので。山下りんはその「聖像画を描く画家」として学び、活動したということになる。
    常陸笠間の武士の家に生まれた山下りんは東京に出て学んで絵師を目指そうとした。その彼女の遍歴、ロシア正教や聖像画との出会い、ロシア留学と帰国後の活動が活写される本作は非常に面白かった。
    聖像画というモノは、「制作 ○○○○」というような明確な署名が入る絵画作品というのとは違う。それでも「あの山下りんが手掛けた」と伝えられる作品は現在に伝えられている。
    本作には山下りん御本人をモデルとしたヒロインや、彼女が出会う様々な人物が登場する。その中で、ニコライ司教は何か強い印象を与えてくれる人物であった。
    或る意味では「日ロ間の文化交流の黎明期」というような時代を描いた物語である。更に大津事件や日露戦争というような出来事も潜った中での、ロシア正教に関わった人達の物語でもある。
    なかなかに読み応えが在って引き込まれた。広く御薦めしたい一冊だ。

  • 2021冬の文芸書フェア

    所蔵状況の確認はこちらから↓
    https://libopac.akibi.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001013474

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝井まかての作品

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