人間の叡智 (文春新書 869)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608690

感想・レビュー・書評

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  • 氏の豊富な知識量と経験に裏づけされた大胆な仮説は、なかなか興味深い。
    自由主義と民主主義は矛盾する....って、あぁ、そうか.....って思った。

  • 著者の知識量、それを活用する思考力、文章力の高さに驚くとともに、少しでも同じような力を持つことができればと羨ましくも思った。
    元外交官だけに、中東情勢、ロシアの論理と、日本の政治や社会の関連をわかりやすく説いてくれていた。
    また、日本の国体のあり方、我々が直面している危機に対して、エリートの育成、読書のすすめなどにより、手元の改善策ともいえる私案を提示されており、こちらも大変興味深く読むことができた。

    哲学、資本論とマルクス経済学の読み解きは、少々難易度が高かった。

  • 小難しい話を、だれにでもわかるように語り下し形式で書いた、とのことであったが、結局は小難しい。

  • 佐藤優氏の本はいろいろと読んでいるが、彼は一貫して、教養の大事さを説いている。

    本書でもそういった話が語られているが、佐藤氏の著作の面白いのは、次に読みたくなる本が紹介されている点である。

    なるほど、氏の論点を理解するにはこういう本を読んでいけばいいのか、、というガイドが得られるという点で、読者に優しいと私は思う。

  • 現代を悲観的にみて危機をあおるやり方は、知の巨人と言われる佐藤氏としては、いかがなものかと思うし、それを強引に新帝国主義の時代を迎えたことをもってその原因としているのは、あまり飛躍しすぎていて説得力がないように思う。

    そして、その解決方法が、個人も国家もストーリーが必要で、第3者的な立場でみるのではなく、それを実践し、体現していくことが重要だとの結論。

    新帝国主義という時代認識は、与那覇潤氏の「中国化する日本」にも通じるものがある。

    そして、国家にも個人にもストーリーが不可欠だというのは、人間の本性には「因果論」が組み込まれているという(「(日本人)橘玲著」)事実から、過去も今も将来も変わらないでしょう。

    とはいえ、内容の面白さとその博識ぶりに感心しながら、一気に読み進めるとが出来る興味深い本なので、一読するに値する本だと思います。

  • ・この筆者では久しぶりの評論モノ。今は、新帝国主義であると説く。この弱肉強食がさらに進むであろう世界での生き方をわかり易く語っている。
    考え方の参考として読んでおくには良い一冊。



    ・マルクス主義者である、カール カウツキーの「超帝国主義論」は、21世紀の超帝国主義的な平和の維持を、読み解く上でカギになると見ている。
    ・中国はいまネーション・ビルディング(民族形成)をしている最中で、「漢人」ではなく、「中国人」という民族が生まれてきている。
    ・中国が航空母艦を持てば、沖縄は海兵隊を置くには近すぎて危険になるので、普天間基地が県外に移設される可能性が出てくる。
    ・民主主義の起源は、良き者を選ぶというより、悪しき者を排除すること。
    ・外交においては、詰めた方がいいことと曖昧にしておいたほうがいいことがある。
    ・国家本来は、絶対的に「力」によって成り立っている。では日本の力の要素は何なのかというと、日米安全保障条約です。
    ・タブーのない社会は悪い社会です。
    ・民主主義について考えた場合、国民一人ひとりが常に政治に感心を持っている体制は、いい体制ではない。生産活動が疎かになってしまうから。
    ・代議制民主主義は、本来独裁への道を開く可能性をはらんでいる。
    日本が独裁の方向へ進むとしたら、それは民主主義の危機ではなくて、民主主義が純化されようとしている。
    ・橋下ブームは実は民主主義の危機ではなくて、自由主義の危機。
    ・テレビで流行るドラマなどは、一種の時代の転換を表している。だから、インテリジェンスの世界の人間は、視聴率の高いドラマを見るのです。
    ・結局、人間はナショナリズム、啓蒙の思想、人権の思想、そういうもので動くのだと思うのです。ただし、それらの思想はまやかしなのです。それを承知でいかにイメージ操作をしていくかというのが課題。
    ・言いかえれば、物語をつくること。ストーリーテリングの能力が大事。
    ・身近な同胞意識をもち、かつ民族だけに縛られない。二重性を認識しておくのが大事。
    ・日本で読書が習慣になったのは、昭和のはじめ。いずれにしても、現代でも日常的に読書する人間は特殊な階級に属しているという自己意識を持つ必要がある。
    ・読書階級はどの国でも総人口の5%前後。彼らは共通の言語を持っている。そしてその人たちによって、世の中は変わっていくと思うのです。
    ・他人の内在的論理を捉えるために、最低2つの古典を持て。
    ・ゲーテのファウストから、内在的論理とは次の4つから成り立っている。「言葉」「心」「力」「行為」。
    ・新帝国主義の時代を生きるうえで必要なのは、案外に小説的な教養なのです。
    ・人口学から、テロの原因を若年世代の人口過剰の問題に還元している。一家族に三人以上の男の子がいるとテロリズムもしくは犯罪がおこるという。
    ・戦前の日本も人口が過剰だったので、対外侵略をしたという仮説で、人口学者は一致している。
    ・インテリは国を超えて共通言語を持っている。
    ・日本人一人ひとりが言葉の使い方を変えて、国民を統合する物語を作り出すしかない。そして、目に見えないものに想いをはせる。

  • 自身の教養のなさを痛感。新・帝国主義との定義をもってしばらく世の趨勢を見ていきたい。

  • アメリカ的な成功を得るための考え方を説明している。
    他者への貢献が、成功の柱

  • 不勉強の自分には新鮮な情報ばかりで、国際情勢と日本の状況の今を読み解く一つの視点をもらえた気がする。歴史、哲学などの、知のシャワーを浴びるのも気持ちいい。

  • 「語り下ろし」とあるので口述筆記ということなのか。佐藤氏の著作はいつもそうなのだが、全体としての一貫性がないので、一冊読んでも全然頭に入ってこない。
    グローバル経済が進展しても、国家の存在意義はむしろ逆転的に重要となってくるという主張はよくわかるけれど。
    あと、エリートが機能してないという嘆きもよくわかるけれど。
    合理主義はエリート否定、拝金主義、刹那主義につながる。非合理なもの、目に見えないもの、物語をもっと重視しろという主張もわからないでもないけれど。
    しかし、人間の叡智が多くの問題を解決に導くという楽観はどうも受け入れられない。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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