- Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167549039
感想・レビュー・書評
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10年以上本棚で埃を被ったままになっていた一冊。陸軍の青年将校たちが起こしたクーデターから87年の「2•26」を迎える前にと一念発起。SF大賞受賞&直木賞候補作、しかも題材は二・二六事件。骨太の歴史改変ものかと思いきや、やけに軽いタッチのSF×恋愛×ミステリーで正直拍子抜けした。語り手たる主人公に共感しづらいとか、無駄に長いとかいうのはあったけれど、終盤のまとめ方はさすがというか「ズルをしない時間旅行」という概念には好感が持てた。
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最初は主人公:孝史の身勝手さに不満も感じたが、読み進むうちに何となく理解できた。最後のところでの謎がすべて解けて、出会いがあり・・
厚い本で、途中で投げ出したくなりましたが、後半から楽しく読み進めることができた。
実際の出来事かと思ったが、後書きでまったくの架空の話とあったが、本当にあった話とおもってしまった。 -
タイムスリップしてしまった主人公。しかも行き着いた先は、歴史で習った二・ニ六事件の真っ只中の軍人のお屋敷!!
続きが気になって気になって、どんどん読ませてしまうあたり流石宮部先生です。
主人公の孝史が当時の民衆を眺めながら一人「とあること」に気づいた瞬間は、私も雑踏の中で自分一人だけ音が途切れた空間にいるような感覚に陥りました。
でも「ここぞ」というときに今一つグッと来なかったのは、孝史やふきや平田や貴之といった主要人物にあまり感情移入できなかったせいかな…。。
人生経験を積んでから、もう一度読み返したいと思います。 -
早、執筆当時と今との時間の隔たりに驚く。
高校時代に読んだ本を、久しぶりに読み返してみました。
海軍3部作などを読んだ今、見返すとまた違うかしら、と。
90年代の、自分が高校生だった頃には違和感が無かったのに、今読むと、高校生がこんな言葉を思うのか?
かと思えば湯たんぽがわからなかったりという、作品が書かれてから20年の隔たりを感じるように。
そうか、湯たんぽは2000年代にブームが来たからわかるけど、90年代だと全然生活に湯たんぽが無かったのかななんて思い出しながら読みました。
NHKかな、ドラマ化されていた記憶もあって、いしだ壱成さんと奥菜恵さんのイメージがちらつくこともありましたが、いしださんはともかく奥菜さんは今の姿を知ってしまっているのでなかなかふきには重ならず。
今や、執筆当時の宮部みゆきさんの方が近い年齢になった今は、宮部さんが何をきっかけで構想を深め、この事件と平田たちの設定を結び付け、孝史を連れてきたのかしら、という事を考えながら読みました。
火車(だいすき)と理由の間における作品。ほんとうに、複数路線の小説を、いろいろ描かれる作家さんですね。 -
場所の雰囲気の解るエンタメ推理小説
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多分、自分が宮部みゆきの名前を意識し始めるきっかけになったのが本作。B!誌で古屋さんが書評を書いていて、それがいかにも面白そうに思えたのに加え、表紙のヘタウマな絵が頭に焼き付いてしまった。で、30年越しくらいにやっと読めたのでした。やたら小さく思えて仕方ない主人公の造形が好きじゃなく、結局そのイメージは、物語が閉じられるまで覆ることはなかった。こういう人物だからこそ、高校卒業したてくらいの設定を充てたのだろうけど、そのキャラと終始付き合わなきゃならないってのは、なかなかのストレスでもあり…。これ以外の著作をいろいろ読んでいる現状、本作が氏のベスト級とはとても思わないけど、それでも面白さはさすが。
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平成6年(1994年)2月26日に予備校受験生の孝史は昭和11年(1936年)の同じ日にタイムトリップとやらを経験した。おりしも歴史が伝える2.26事件勃発の日、その場所に。
そうして、高校卒業間近の少年は歴史のひとこまを肌身で知ることになる。
☆ 2.26事件とは何か?
☆ 昭和11年の風物は?
☆ もう一つの事件、蒲生邸事件とは?
☆ 孝史は現代へ戻れるのか?
人のことは言えない、私もぼやっとしか2.26事件は理解してない。
軍人の一部が暴挙的行為をしたぐらいに。
私の父の思い出話がある。まだ結婚前の若き父、大学を卒業して勤め始めたばかりだった。ラジオで事件勃発を知り、いや事件ではなく騒動(もっと言えば若き血を騒がす行動)と思ったのだろう。いても立ってもいられず、乗り物も動いてないから下宿先から雪の道を歩いて(7~8kmくらい)、皇居のあたりをさまよったという。
それを聞いて私はなんて危ないことを父はしたのだろうぐらいにしか思っていなかった。一般人が巻き込まれたら困るでしょうと。
宮部さんはするすると物語って解き明かして下さる。事件の概要、時代の空気。背景にミステリ事件の面白さも添えて。
あの時代、戦争に突入してしまうまでの不穏な気配をかかえながらも牧歌的な時代。
孝史が偶然知り合うことになり、ほのかな恋心をいだいた「ふき」という女中さんを通してその時代の仕事の大変さ素朴さを知り、なんでも手でしなければならない労働の重みを理解し、羨ましい気がしたと。
「軍事クーデター」のような事件が起こっているのに、人々の暮らしの穏やかさを宮部さんは心に染み入るように書き込んでいる。
軍人のバリケードを遠巻きに見て雪の中にたちつくす野次馬の一般人、そこに父もいたのだろうなーと思いを馳せる。
歴史的事実をすんなり、理解させてくれたうえに、てだれの宮部さんは最後に孝史を通してメッセージをよこす。「歴史は自分達で生きてきて作るもの」と私は理解したが...。今も? -
1996年9月毎日新聞社から上梓。
2000年文春文庫化。
タイムトリップをするまでの展開に、やや冗長なところがあり、再読でも、つまづいてしまうのですが、そこを過ぎれば、面白いです。
タイムトリップを通した歴史観を登場人物達に語らせる部分が興味深く、日本SF大賞受賞もうなずけます。 -
宮部みゆきのタイムトラベル・ミステリー。226事件勃発で緊張感が走る街。混乱の中、とある陸軍大将邸では奇妙な事件が起きていた……というもの。
それほど入り組んだトリックというわけではありませんが、歴史の業を扱ったテーマ性に惹かれました。
過去を見下ろせる立場にいる未来人が、自分の立場にどう向き合い、どう立ち向かおうとするのか。「現在」に生きる意味。細部は変えられても、歴史の流れは変わらない。だからこそ。 -
タイムトラベルができるなら何でもありになりそうですが、きっちりまとまってました。表紙のフキさんが読んだイメージと違いました。