- Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167602109
感想・レビュー・書評
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誰かに必要とされている実感や、誰かが自分を愛してくれていることを感じられていることがどれ程人の心を救うのか…
三人の女性たち…
それぞれにグロテスクなまでにイビツに歪んだ内面に支配され続けて苦しみ抜いてきた。けれど、一番幸せだったのは妹ではなかろうかと感じた。同級生は他者との共生に苦しみ続け最後に小さな希望を見出して死んだ。姉は否定し続けてきた妹と同じ道を辿ることで光を得た。
読んでいて、とても苦しい人生だったけれど、なんだか読後感は軽かった気がする。悪いモノを見続けたことで、小さな小さな光にも大きな希望を見たのかもしれない。
面白い作品でしたが、かなり重いし、長いので読む前に覚悟がいるような物語でした。 -
名門女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。
「わたし」とユリコは日本人の母とスイス人の父の間に生まれた。母に似た凡庸な容姿の「わたし」に比べ、完璧な美少女の妹のユリコ。家族を嫌う「わたし」は受験しQ女子高に入り、そこで佐藤和恵たち級友と、一見平穏な日々を送っていた。ところが両親と共にスイスに行ったユリコが、母の自殺により「帰国子女」として学園に転校してくる。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。「わたし」は二人を激しく憎み、陥れようとする。 -
ありとあらゆるコンプレックスが濃縮されていた
劣等感って社会のシステムに組み込まれた刷り込みでしかないのだけれど、無視しては生きていけない。そんなシステムなんて意に介さず自由に生きていける人達を羨ましく思う
桐野夏生さんの作品は濃厚過ぎて目を背けたくなる部分もあるけれどもその分深く味わうことができる
現実の事件が未だ解決していないことは残念です -
グロテスクの下巻は、ユリコを殺害したチャンという中国人の回想から始まる。
農村で生まれて都市部に出稼ぎに来たチャンの壮絶な半生が語られるのだけど、これが驚くほど引き込まれた。
この小説は、東電OL殺害事件をモチーフにしているようだけど、チャンの話を差し込むことによって、中国の貧困問題や移民問題までも扱っているようで、社会派小説としての重みが増していた。
そして、物語の主観はチャンから再び主人公へ。
チャンの裁判の後、同窓会のごとく再会した主人公とミツルと木島。
変わり果てたミツルは以前のように言い淀む癖を捨てて、主人公の弱さと惨めさを面と向かって指摘する。
一周回ったミツルは達観しており、この物語の中では比較的穏当な妥結点を見出だせているかもしれない。
ミツル自身が語った「自分と向き合うこと」は、主人公と和恵には圧倒的に足りていない部分だった。
そんなミツルから渡された晩年の和恵の日記を主人公は読むことになる。
この和恵の日記がまた濃すぎて…。終盤にこんな盛り上がりを見せるのかと、とにかく最後まで惹きつけられた。
学生時代の和恵と言えば空回りして完全に浮いていたのだけど、日記の中で明かされる大人になってからの和恵がとにかく痛々しい。
その痛々しさは言動や振る舞いだけでなく、存在自体が社会から撥ね付けられているような、どうしようもないレベルに達している。
異常な父の元で育てられ、承認欲求が満たされることがないまま大人になってしまった人間の終局を見ているようで、あまりにも辛かった。
とにかく、グロテスクの下巻は、全編を通して悲しい気持ちにさせられた。社会通念や超えがたい階級のもとで、人間が傷つきボロボロになりながら孤独になっていく様がありありと描かれる。
だけど、老いたユリコの本音を聴いたのは和恵だった。
チャンたちとの性行為の中で、初めて絶対的な手応えを感じたのも和恵だった。
社会的に見れば孤独で下層にいるような和恵だけど、そんな中でも救いに出会えたかのようで、胸が熱くなった。
そして最終章にて、ミツルの言葉と和恵の日記を通じて、ようやく主人公は変わり始める。ユリコが聡明で恐ろしく達観していたことを認め、新しい扉を開く。
それは少しポジティブだけど、あの終わり方はホラーってことでいいのかな?
とにかく最後まで内容が濃くてアップダウンが激しい、紛れもない傑作だった。 -
去年のアメトーークの読書芸人の回で光浦靖子が推薦していたのが印象に残っていて、それからずっと頭の隅にありつつ、内容が大変そうだからちょっぴり避けていたところもありつつ。
を、ついに読んでしまった。
結果、とても疲れた。笑
主人公の“私”(最後まで名前は出てこない)には、怪物のように美しい妹のユリコがいた。
妹と似ても似つかぬ容姿の“私”は、常にユリコと比較される人生に幼少期から嫌気が差し、ずっとユリコを妬み憎みそれなのに囚われるという人生を歩んでいた。
元来男好きだったユリコは、モデルを経て娼婦として生きたが、40歳を目前に殺害される。同じ頃殺害された同じく娼婦の和恵は“私”の高校時代の同級生で、大手の建設会社に勤めながら夜は娼婦をしているという謎の経歴が世間の興味を引いた。
階級社会、女同士の嫉妬と足の引っ張り合い、男の中での女の価値、殺人事件…様々な要素が絡み合う「グロテスク」な世界。
1997年に実際起きた、東電OL殺人事件がモチーフとして使われている。
読んだあと検索してみたら、かなり細部まで似せて書かれているみたいで、エリート会社員なのになぜ?という普通の人間であれば持つであろう疑問を、最初は感じずにいられない。
あくまで物語の登場人物である和恵は、真面目で努力家であるものの容姿や社会の中での自分の立ち位置にコンプレックスがあり、エリート会社員でありつつ娼婦として身体を売ることは社会への復讐だったのだと思う。堕ちたのではなく、むしろ上り詰めたのだと。
美しき怪物・ユリコはその容姿だけで男たちを手なずけすいすいと人生を歩んでいくが、心は常に渇いていて、自分の容姿にも人生にも強い執着を持たない。
ある意味で天賦の才を持つユリコは根っからの娼婦で、そんな彼女を“私”は羨み、妬み、それを全く意に介さないユリコをさらに憎むようになる。
そして事件。ユリコ殺しの容疑者として捕まった男は、和恵殺しの疑いもかけられるが…
(下巻冒頭に男の手記がある。事実との違いは?というのも見物)
(ちなみに実際の東電OL~は未解決のままの事件)
コンプレックスは自分を高める要素に繋がることもあるけれど、単純に人や社会を憎む要素になることもある。
幸福の基準が自分のなかに見出だせないままだと、結果的に自分を傷つけることにもなりかねない。
エリート高校(Q学園)を出た三人と、もう一人ミツルという重要人物がいるのだけど、皆違うかたちでエリートコースから逸脱し、世間から見れば幸福とは言いがたい人生を歩んでいる。
でももしかしたら四人とも幸福なのかも知れない。少なくとも“私”以外は。
(Q学園にもモデルがあるらしいけど、本当にこんな学校があるのだとしたら恐ろしい。私なら三日で退学しちゃうレベル)
“私”の感情は共感はできないけど解る気はする。美しすぎる妹を持ってしまった悲劇。
殺されても尚影響を与え続けるのだから、ユリコという女はまさに怪物。
濃いし長いし、読んでて疲れた。笑
でも面白かったのも否めない事実…
ちなみに一番グロテスク度が高いと感じたのは、和恵の日記の章だった。 -
読む時間なくて流し読みしてたけど内容入ってこないので一旦やめる。
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上下巻の感想をあわせて。
柚木麻子先生の『BUTTER』のような、女性の強烈な内面を描いた作品が読みたくて手に取った作品です。
奇しくも『BUTTER』同様、実際に起きた事件(東電OL殺人事件)をモデルにした小説とのことで、事件の概要を調べながら読み進めました。
それぞれの登場人物の口から語られる自分自身の姿と他人から見た姿のギャップ、美醜と階級に囚われながらも自分だけは美しく立派であると主張する様はまさに″グロテスク″で痛々しさも感じられましたが、怖いものみたさのようなパワーでストーリーに惹き込まれてしまいました。
この本を読んで桐野夏生先生にハマりました。
他の作品も色々読んでみたいです。 -
殺人犯のチャンの生い立ち、和恵と百合子の日記、百合子と和恵がいなくなった後のわたしとゆりおの話
解せない気持ちになるのは絶世の美女だったユリコがたったの35歳?とかで太ったにしてもそこまで醜くなることってないよな〜というのと、和恵が165センチで45キロってかなり細いけど、そんないろんな人に痩せすぎとかガリガリで魅力がないって言われるようなやばい数字じゃないということ
あとこの本が東電OL事件という実際にあった事件をもとにしてると知ってびっくりした。
被害者の本当に気持ちとかなんて何もわからないのに想像で和恵という可哀想なキャラでリアルに書き上げられててこれを読んだ遺族とかもう亡くなってしまって入るけど被害者本人がどんな気持ちになるのかと想像するだけでも吐き気がした