- Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167705336
感想・レビュー・書評
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クライム小説の第一人者であり、〝記憶シリ-ズ〟でも名高いトマス・H・クックによる大人の心理サスペンス小説。平穏だった家族の生活が、少女失踪事件との関わりによって亀裂が生じはじめ、徐々にその深刻さを増していく・・・。原題「RED LEAVES(紅葉)」に隠れた背景的意味合いが、強烈なインパクトとなって息苦しいまでの疑惑と焦燥感に襲われる。
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クックこそ、イヤミスの帝王じゃないかと思うんだけど。
自分の息子と自分の実の兄が、実は幼女を性愛する嗜好を持っているのではないか、と疑い始めたところから始まる、否応なき家族の崩壊。
最後の最後に踏みとどまったかに思えて、実はさらに別の結末を迎えることにより、突き落とされる絶望、というか、虚無感。切なさ。
これぞイヤミスと言わずとして何と言おう。
だけど、読んでしまうんだなぁ。そこがクックの魅力。 -
とても内向的で暗い、最後には希望もあるが、全篇、暗いので希望が押し消されてしまっている。
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少女の失踪事件が発生。少女のベビーシッターをしていたキースが容疑者の一人となる。キースの父親のエリックは息子が事件に関わっているのではないか、という疑いに徐々に囚われていく。
家族なら分かり合えるのか、すべてを知っているのか。エリックは少女の失踪事件の容疑者が自分の息子となってしまったのを機に今までの平穏がもろいものであることを知ります。
意識的にか無意識的にか今まで家族と向かい合うことを避けてきたエリックが、向かい合った結果得たものは?徐々に崩れていく家族の絆と明らかになるそれぞれの顔と真実、構成や展開、エリックの心理描写、どれも光っていて、重い気持ちになりながらも読まされました。
女児失踪事件を巡るミステリとしては、尻すぼみの感じも否めなかったのですが、元には戻らない痛切さや哀愁を感じさせる文章表現や構成、心理描写はクックの面目躍如という出来のよさだったと思います。テンポや場面転換も今まで読んできたクック作品より良くて読みやすかった気がします。 -
幼女の誘拐殺人の容疑者になった息子。
彼への疑いがゆえに、それまでの世界が様相を変える。
息子との事、妻との事、兄との事、父との事。
そして彼の中ですべてが崩壊へと突き進んでいく。
よく言われる、雪崩をスローモーションで見せる
クック独特の筆致はあいかわらずすごいです。
他のどんな作家も真似できないでしょうね。
ほのめかしてはずらしての繰り返しで
主人公が現実と思っていたことの裏が出るたびに
彼の思い込みが悲しくなってきます。
でも、何事にも戦ってこなかった彼に、
この重要な状況で戦おうとして
でも経験の無さゆえにずれた方向に進んでしまう彼に、
読んでる自分と重なる部分がある事も否定できません…
最終的に事件自体は解決しますが
それは何もハッピーエンドを生み出さないのです。
これまでのクックで一番悲しいエンディング。
クックの重さは大好きなのですが
沈んで沈んで、
最後にちょっと浮かせてくれるかなと思いきや
そこからさらに突き落とすとは思っていなかった。
クックに慣れてからの方がいいですよ。 -
自分の息子が幼女誘拐犯ではないのか?…という疑惑だけで、話には特に進展もなく最後まで行く。主人公に魅力があるわけでもなく、テンポがいいわけでもなく、疑惑だけで読ませるのはすごいと思ったが、個人的好みとしては児童ポルノを許せない犯罪としながら、それをネタとして使っている話には嫌悪感を覚えてしまう。
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これは・・・ミステリなんだろうけど、どちらかと言えば
家族とは何ぞや?というテーマの方に重きを置いてる感じ。
自分にとって都合の良いことだけを見て、都合の悪いことは見ない。
見なければならない時は、都合のいいように解釈をする。
全てが受身で、自分から挑もうとはしない。
主人公エリックは、まさにそんな男だったりします。
そして追い詰められて初めて色んなことを考え出したら
疑心暗鬼に陥って暴走・・・
そして、そりゃないよぉ~って終わり方なので
後味がよくないです。
なんというか読みやすくて読ませられたのに
虚しさが残ってしまいました -
覇気のない思春期の息子を持て余す「わたし」。ふとした疑念が果てしなく大きくなって行き着いた結末。有無を言わさず読者を巻き込む緻密な筆力に脱帽。そして、毎度おなじみの重たい読後感。ぐったり。。
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主人公は写真屋を営む平凡な男性。ある日突然、息子に幼女誘拐の容疑がかけられて…。
主人公が過去を回想する形で語られるので、全体のトーンが暗い。暗さと、疑われてでもなんともしようのない焦燥感が重なって、読んでてどきどきした。
主人公の父や兄にも問題があって、彼はそれらから抜け出す形で今の生活を手に入れたのに、事件によってそれに引き戻されていくのが切なかった。
家族を「愛憎を煮詰める大鍋」と言ったのはジョナサン・ケラーマンだが、クックなら「全てを引き寄せ飲み込むブラックホール」とでも言うのだろうか。
あっという展開で終わるのだが、やはり主人公の周りは黄昏ている。
けれど、遠い空に星の瞬きが見えるような終わり方。
バッドエンディングのようで、そうじゃない。そして、こういう終わり方ができるのはクック以外にいないだろう。