星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 489
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167709013

感想・レビュー・書評

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  • 随分前のものですが、直木賞受賞作品です。

    やっぱりこの人の表現力はすごいです。
    心の葛藤も、季節の流れも、美しくて切ない。
    いくら文章が上手でも、情景描写過多でうっとおしくなる作家さんもいるのに、そうはならない。私の好みなんだろうなあ。。

    さて内容ですが、うっとりする文章とは裏腹に、各章ごとに、次男・次女・長女・長男・長男の娘・父親目線で描かれた連作短編集で、かなりヘビーです。
    近親相姦、不倫、レイプ、いじめ、幼児虐待、戦争体験など・・・辛い話ばかりでちょっと読むのがしんどいほど。
    しかもそれが(家族であっても)人によって微妙に違って受け止められ、その捉え方の違いが憎みあったり諦めたりに繋がってゆくという…なんとも切ない気持ちになりました。

    そして、お互いが知り得ない事情を密かに抱えあいながら、最終的には皆ひとりで生きていかなければならない、という当たり前の事実に戻っていきます・・・
    生き続けていくには忘れていくしかないのかなあ、なんて思ったりして。皆忘れられないから苦しんでいるのです。。

    それにしても、母の死がきっかけで物語が始まるのですが、一番知りたい母目線の章がないのは作者の意図、でしょうねえ。

  • ある家族の一人ひとりが主人公となる短編連作小説。
    とはいえ、出てくる話題は、近親相姦、自殺未遂、不倫、堕胎、性的虐待、レイプ、いじめ、そしてなぜか従軍慰安婦、と多種多様の出来事が語られています。

    ストーリとしては全6作

     雪虫ー次男、暁の視点で書かれた物語
    後妻の娘である長女、沙恵との近親相姦の話が出てきます。実は血のつながりがあり、禁断の恋となってしまう物語

     子供の神様ー次女、美希の視点で書かれた物語
    家族全員と血のつながっているのは自分だけという思い込みを持ちながら、不倫をし、堕胎し、そして別れてしまう物語

     ひとりしずかー長女、沙恵の視点で書かれた物語
    美人がゆえに性的虐待をうけたり、レイプされたり、自殺未遂までしたり、そして、禁断の恋に悩んだりと一人ですべての不幸を背負っているような物語
    これはつらい...

     青葉闇ー長男、貢の視点で書かれた物語
    堅実な人かと思いきや、やはり部下と不倫してしまう。しかし土いじりが好きで田舎暮らしにあこがれる物語。
    うーん、土いじりは癒されますからね。

     雲の澪ー貢の娘、聡美の視点で書かれた物語
    中学時代のいじめの相手に捕まってしまい、今の友達を売ってしまう、そんなつらいことをしてしまう物語。
    これは、読んでいて、つらい。
    祖父にあたる重之のフォローがよい。

     名の木散るー父、重之の視点で書かれた物語
    戦争体験者で、朝鮮人慰安婦に愛情をもってしまい、かつ、その慰安婦が殺されてしまう物語。
    なぜ、戦争体験で語るのが慰安婦との関係?

    ひとつの家族ながらも、いろいろ悩みを持ち、生きているそんな物語となっています。連作ということで、話もつながっています。
    しかし、この家族、異性関係にだらしないのでは?(笑)

    また、ちょっと納得がいかないのが、なぜか最終章で出てくる従軍慰安婦周りの話。なぜ、そんな話がここで出てくるのか理解に苦しみます。
    結局、強制連行の従軍慰安婦の話にもって行きたかったの?それとも反戦の話にもって行きたかったの?それまでの家族の話は何だったの?
    と戦争体験の話がかなり違和感を感じてしまう構成です。

    全体のテーマそのものが暗めということで、気分的にもすっきりしない物語でした。

  • ひと家族のそれぞれの人生とか恋愛とかを書いたもの。重之がずっと嫌な役で出ていたけど、重之も重之でそうなった理由があるのが最後に描かれていた。とはいて許せないよね。
    さえちゃんとかは美人だからこその辛さなんだろうなあ。噛み合わない家族だなぁ。

  • 禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、居場所を探す段階世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱えて…。愛とは、家族とはなにか。別々に瞬きながらも見えない線で繋がる星座のように、家族は、「家」という舟に乗って無限の海を渡っていく。心震える感動の短篇連作小説集、第129回直木賞受賞作。

  • 禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、自身の居場所に悩む長兄、幼馴染への恋慕、親友に対しての劣情を抱えていた孫、戦争の傷を抱える父、それぞれの視点から語られる彼らのこれまでの人生を通して星々を繋ぐように見えてくるひとつの家族の形、彼らの在り方。

    「足を踏んだほうはすぐ忘れるけど、踏まれたほうはそう簡単に忘れられないもの」
    家族間で互いに様々な感情を向けていたけど、彼ら、特に子供たちの劣情は作中のこの言葉に尽きるなと思った。
    読み進めてそれぞれの見てきた世界を知れば知るほど、登場人物の見方が変わる。表面的な情報、断片的な状況で捉えられるものなんてない。わたし達は自分のことすら完全にわかることはできない。だからこそ語り合うこと、自分自身で触れ、確かめていくことが大切なのだと漠然と思った。

    途中読み進めるのが辛くなってしまう描写もあったが筆者のあとがきにもあるように、一筋の光があるような構成ではあったのでそこは救いだったなと思う。

    印象的だったというか良いなと思ったのは最後まで志津子の語りがなかったこと。後悔も思い出も、これまでの人生に意味を持たせるのも、抱えている気持ちを語るのもあくまで生者だなと思った。

  • 2007年09月20日 19:18
    直木賞受賞作。

    一つの家族のそれぞれの人物の視点が6つの章に分けて書いてある。

    ただ、話が過去に行ったり現在に行ったり、過去の過去に行ったりして最初のうちは戸惑ったが括弧の工夫がなされていたので助かった。

    有り触れた内容と言えば有り触れた内容かもしれないが、

    文章力・表現力で読ませると思う。

    最後の父親の章は、実際に話を聞いて書いただけあってリアルだと思う。

    戦争体験について、あまり知らない人は読んだ方が良い。

    しかしながら、帯にもある「こころふるえる感動の物語」とまではいかなかった。

  • 「幸福とは呼べぬ幸せもあるのかもしれない」
    衝撃。
    人に幸せねって言ってもらえる人生でなくていいし
    だからって幸せじゃないわけじゃない。
    言葉にすると強がって見えるし心もとないけど
    読めばストンと落ちてくる。
    好きで好きでやめられない、仕方ない人がいる。
    その人が生きている同じ世界で自分も生きていて、
    だからこそ心を通わせ合い、なんなら触れ合い、
    添い遂げられなくてもいつも心を満たす。
    その人にも自分だけ。そうお互いになんとなくわかっている。
    それだけでそこに存在する価値がある。生きる価値がある。
    片割れだからお互いに。生きないと。
    そりゃそんな二人が一緒にいられるともっと幸せに違いない。
    でも、一緒にいられなくても、触れられなくてもいい。
    だから私を消さないで。私からその人を消さないで。
    それ以上何も望まないから。

    ところで、私は人生において結婚や子育ては情熱を、命を燃やすための必要アイテムなのではないかと思うときがある。
    妬みやひがみなのかもしれないけど、「結婚」や「子育て」は、「暇な人生」への解決策、「人生を全うできないような手持無沙汰感」を紛らわすための手っ取り早い方法にすぎないのではないかと。
    人は生まれたときからライフポイントを持っていて、生きることにともなう精力の使用量でそれは減り、使い切ることが使命なのだとすると、打ち込む仕事や趣味がない多くの一般的な人はなかなかそのライフポイントが減らない。だからどうしたって神経や精神力、体力をすり減らす結婚や子育てをしようとする。それはライフポイントの半分以上を稼ぐとこができるボーナスタイムだから。
    恋愛においてひとりの人を愛すると決めて貫くことは、同じくらいのポイントになると私は思う。自らをひとり孤独に耐え、守り、大事にするということ、そして愛す一人をどんな形であれ守り抜くということがどれだけライフポイントを削るか。
    そんな相手に出会えた幸運は奇跡で尊く、辛く、幸せだ。
    どちらかと言えばむしろそういう唯一無二の人に出会うということはむしろ、「人生の全う」を約束された勝ち組の人生なのかもしれない。そうであればいいと思う。

  • p258迄は、活字をひたすら追うだけに
    終わった。他作品に多く見られる
    家族、個人の描写に思えた。
    あとがきにあったが いっそうのこと
    戦争小説にしてしまった方がよかったかも知れない。

  • どうにもならないことが世の中には数多くある。
    人間関係も、仕事も。だが、そういったものを呑み込んで、人は今を、未来を生きていく。その結果がどうなろうと、それは意味のある人生だったのではないか。

    少なくとも、当人にとっては。

    憤りと癒やしを得られる一冊だと思う。

  • 近親相姦、レイプ、いじめ…と過激な出来事ばかり起こるストーリーに90年代の野島伸司のドラマ(というか、ひとつ屋根の下)みたいだなーと思っていたけど、最後の戦争の話はちょっと良かった。
    ただ、一番魅力的キャラクターである後妻の話がなくて残念。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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