星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)
- 文藝春秋 (2006年1月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167709013
感想・レビュー・書評
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随分前のものですが、直木賞受賞作品です。
やっぱりこの人の表現力はすごいです。
心の葛藤も、季節の流れも、美しくて切ない。
いくら文章が上手でも、情景描写過多でうっとおしくなる作家さんもいるのに、そうはならない。私の好みなんだろうなあ。。
さて内容ですが、うっとりする文章とは裏腹に、各章ごとに、次男・次女・長女・長男・長男の娘・父親目線で描かれた連作短編集で、かなりヘビーです。
近親相姦、不倫、レイプ、いじめ、幼児虐待、戦争体験など・・・辛い話ばかりでちょっと読むのがしんどいほど。
しかもそれが(家族であっても)人によって微妙に違って受け止められ、その捉え方の違いが憎みあったり諦めたりに繋がってゆくという…なんとも切ない気持ちになりました。
そして、お互いが知り得ない事情を密かに抱えあいながら、最終的には皆ひとりで生きていかなければならない、という当たり前の事実に戻っていきます・・・
生き続けていくには忘れていくしかないのかなあ、なんて思ったりして。皆忘れられないから苦しんでいるのです。。
それにしても、母の死がきっかけで物語が始まるのですが、一番知りたい母目線の章がないのは作者の意図、でしょうねえ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ある家族の一人ひとりが主人公となる短編連作小説。
とはいえ、出てくる話題は、近親相姦、自殺未遂、不倫、堕胎、性的虐待、レイプ、いじめ、そしてなぜか従軍慰安婦、と多種多様の出来事が語られています。
ストーリとしては全6作
雪虫ー次男、暁の視点で書かれた物語
後妻の娘である長女、沙恵との近親相姦の話が出てきます。実は血のつながりがあり、禁断の恋となってしまう物語
子供の神様ー次女、美希の視点で書かれた物語
家族全員と血のつながっているのは自分だけという思い込みを持ちながら、不倫をし、堕胎し、そして別れてしまう物語
ひとりしずかー長女、沙恵の視点で書かれた物語
美人がゆえに性的虐待をうけたり、レイプされたり、自殺未遂までしたり、そして、禁断の恋に悩んだりと一人ですべての不幸を背負っているような物語
これはつらい...
青葉闇ー長男、貢の視点で書かれた物語
堅実な人かと思いきや、やはり部下と不倫してしまう。しかし土いじりが好きで田舎暮らしにあこがれる物語。
うーん、土いじりは癒されますからね。
雲の澪ー貢の娘、聡美の視点で書かれた物語
中学時代のいじめの相手に捕まってしまい、今の友達を売ってしまう、そんなつらいことをしてしまう物語。
これは、読んでいて、つらい。
祖父にあたる重之のフォローがよい。
名の木散るー父、重之の視点で書かれた物語
戦争体験者で、朝鮮人慰安婦に愛情をもってしまい、かつ、その慰安婦が殺されてしまう物語。
なぜ、戦争体験で語るのが慰安婦との関係?
ひとつの家族ながらも、いろいろ悩みを持ち、生きているそんな物語となっています。連作ということで、話もつながっています。
しかし、この家族、異性関係にだらしないのでは?(笑)
また、ちょっと納得がいかないのが、なぜか最終章で出てくる従軍慰安婦周りの話。なぜ、そんな話がここで出てくるのか理解に苦しみます。
結局、強制連行の従軍慰安婦の話にもって行きたかったの?それとも反戦の話にもって行きたかったの?それまでの家族の話は何だったの?
と戦争体験の話がかなり違和感を感じてしまう構成です。
全体のテーマそのものが暗めということで、気分的にもすっきりしない物語でした。 -
禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、居場所を探す段階世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱えて…。愛とは、家族とはなにか。別々に瞬きながらも見えない線で繋がる星座のように、家族は、「家」という舟に乗って無限の海を渡っていく。心震える感動の短篇連作小説集、第129回直木賞受賞作。
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2007年09月20日 19:18
直木賞受賞作。
一つの家族のそれぞれの人物の視点が6つの章に分けて書いてある。
ただ、話が過去に行ったり現在に行ったり、過去の過去に行ったりして最初のうちは戸惑ったが括弧の工夫がなされていたので助かった。
有り触れた内容と言えば有り触れた内容かもしれないが、
文章力・表現力で読ませると思う。
最後の父親の章は、実際に話を聞いて書いただけあってリアルだと思う。
戦争体験について、あまり知らない人は読んだ方が良い。
しかしながら、帯にもある「こころふるえる感動の物語」とまではいかなかった。 -
p258迄は、活字をひたすら追うだけに
終わった。他作品に多く見られる
家族、個人の描写に思えた。
あとがきにあったが いっそうのこと
戦争小説にしてしまった方がよかったかも知れない。 -
どうにもならないことが世の中には数多くある。
人間関係も、仕事も。だが、そういったものを呑み込んで、人は今を、未来を生きていく。その結果がどうなろうと、それは意味のある人生だったのではないか。
少なくとも、当人にとっては。
憤りと癒やしを得られる一冊だと思う。 -
近親相姦、レイプ、いじめ…と過激な出来事ばかり起こるストーリーに90年代の野島伸司のドラマ(というか、ひとつ屋根の下)みたいだなーと思っていたけど、最後の戦争の話はちょっと良かった。
ただ、一番魅力的キャラクターである後妻の話がなくて残念。