物乞う仏陀 (文春文庫 い 73-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717919

感想・レビュー・書評

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  • 一端の旅人として、ずっと読みたいと思っていた石井光太氏の作品。
    古本屋で見つけて、ミャンマーへの旅をするにあたってジャストフィットやと思い、購入しました。

    内容としては、アジア各国の街を歩きながら、乞食や障害者などの弱者に対してインタビューを行い、各国の実情を明らかにしていくといったもの。
    ハンセン病患者の村を訪れたり、町の乞食を食事に連れて行って話を聞いたり、マフィアとの関係を調査したりと、本気のジャーナリストってすごいな、と改めて感じました。

    今では日本でも障害者の人権が主張されるようになってきたけど、それっやっぱ経済的に余裕が生まれて、福祉を充実させたり、家計の中で障害ある家族にお金を使う余裕ができてきたからなんやというのを再認識しました。
    障害者雇用なんてのも、雇用環境が整ってから実現するものやしね。

    経済的に恵まれないアジア各国では、障害を持った子どもが生まれた途端、その家族は不幸になると、みんなが思ってる。
    家計が圧迫されるだけでなく、隣人からは迷惑がられるから、人目を避けて生活しなければならない。
    さらには、輪廻転生を信じる地域では、傷害の持った子どもが生まれたら、それは両親の悪業が要因だと思われて、村を追われたりする。
    そんな不幸の要因とされている障害者は、自ら乞食や露天商になる道を選ぶ。
    そんな状況が、もう何十年と続いているのが、アジアの障害者や乞食の現状である。

    この作品では、そんな現状を明らかにしているだけで、ほんなら自分たちに何ができるかというところまでは書かれていない。
    けど、作者はまず現状を自分が知りたい、そして多くの人に知ってもらいたいという想いで書いているんやと思う。
    経済的援助や教育支援ももちろん大事やけど、こういった現実も知っておかなければならないと感じました。

  • かなりリアルでヘビーな作品。はじめは興味本位で読めるが、後半になるにつれて、ページをめくるのが苦しくなってくる。
    おそらく筆者が疲弊していくにつれての変化なんじゃなかろうか。ノンフィクションのような随筆のような筆致。傍観者であろうとする筆者がだんだんと苦しくのめりこんでしまう様子が伝わってくる。

  • 現実とは認めたくないような現実であっても、そこには糾弾する相手はいない。そんな現実を少し知ることができた。

  • 読み助2012年7月12日(木)を参照のこと。http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2012/07/post-2c5f.html

  •  気候が温暖で米などは年3回も収穫できるし、地方都市なら野菜などは庭でいくらでも手に入るだろうに。干ばつ、寒冷で作物が収穫されず、飲み水も奪い合う地域とは違うのに。集団で平和に生活をして、貧者を救えないものなのだろうか。冬が厳しい北海道では道端で寝ることは死を意味する。逆に道端で裸同然の乞食が生きれる環境が、根本的にその国を替える力を損ねているとしかいえない。

  • アジア各国の物乞いを取材した本

    ・宝くじを売る障害者の姿をよく見るのは、発展途上国に税金を社会福祉に使う余裕がなく、宝くじの仕事や利益を社会福祉事業に回すことを行っているためである。
    ・ムンバイのマフィアはストリートチルドレンを捕まえて手足を切断し、沈黙を強制して働かせる。
    ・物乞いを眠らせて、臓器を摘出し、闇ルートで販売する。
    などなど

  • 同じ人間として生まれながら、なんというむごたらしい有様なのだろう。
    殺人、誘拐、売春、麻薬、地雷、ハンセン病など、過酷な運命や悪に呑み込まれ、最底辺で生きるアジアの物乞いたち。
    その現実をほんの僅か垣間見ただけで、言葉を失ってしまう。
    寺院へ立ち入ることを拒否されたハンセン病患者が、将来の夢はお寺に寄付をすることだというくだり。
    その理由は、苦しみに耐えて功徳を積めば来世は幸せになれると信じているから。そういうふうに考えないと辛い今を生きていけないから。
    そしてマフィアに不具にされ、働かされるストリート・チルドレンやレンタチャイルド。
    以前石井光太さんの児童書「おかえり、またあえたね ストリート・チルドレン・トトのものがたり」を読んで以来、石井さんのノンフィクションをずっと読んでみたいと思っていた。トトの物語に込めた石井さんの願いが改めて胸に迫ってきた。
    劣悪な環境にあっても彼らの中には、夢を抱き、逆境に負けず忍耐と陽気さをもって力強く生きる人たちがいる。
    そこには捨てたもんじゃあない人間の強さと寄り添う絆があった。

  • 衝撃の事実。途上国に行って物乞いを見る目が変わる。

  • ショッキングな本でした。この本は南アジアからインドまで、最底辺の人たちを追ったルポルタージュです。僕もこの手の本は結構読みましたが、最近の人が書いたものの中では、出色の本です。

    この本は以前読んで相当ショックを受けたので、しばらく自分から遠ざけていたのですが、今回、この記事を書くためにももう一度読み直してみました。これを読んでいると、貧困と無知はとっても仲がいいんだ、ということを改めて思い知らされます。私たちから見ると悲惨な現実を淡々とした筆致で描いていますので、万人受けはいたしませんが、一読して欲しい本の一つです。

    貧困・麻薬・障害者…。そして売春問題。この作者の著作の中で一貫して扱われている問題で、これは作者のデビュー作なんですがしょっぱなからカンボジアの不発弾問題で、読んでいた端から鈍器で頭をガーンと殴られたような衝撃を覚えましたね。そして、日本のマスメディアではまず扱われることのない障害者と障害者の施設も克明に記録されていて、これもまた読んでいて、気分が非常に重くなりました。

    極めつけはインドで、これは後に紹介する『レンタルチャイルド』に通じるものですが、マフィアによって手足を切り落とされた子供たちが物乞いをしてたり、女性の物乞いが抱いている幼子が実は…。というので完全にノックアウトされました。

  • 仏教圏内の最貧民、物乞、障害者にスポットを当てたノンフィクション。イスラム圏内の方も壮絶だけど、こっちもひどい。
    私自身の気持ちが引っ張られて鬱に何度なったことか。
    でも、これが事実。それから目を逸らしちゃいけない。(イスラムの方でも書いた気がするけど。)そう思わせる、ぐろい本。読み終わっても「これ本当に事実?」て気持ちが消えないもの。平和ボケとか言われるの仕方ないかも。
    この本を読もうと思ったきっかけは宗教と経済、国家というものが複雑に絡み合いつつもそして理想を語りながら決してなぜか理想の形にならないのが不思議だったから。
    結果、ますます混乱するだけ、だったため、正直いまは宗教というものに疑問しかないけども、何億とも言われる人が信仰するには理由が必ずあるはず。それが少しでもわかるようになりたい。
    まぁ、頭の中で理解しようとしてる時点でまだまだだめなんだろうけど。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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