たまさか人形堂物語 (文春文庫 つ 19-1)

著者 :
  • 文藝春秋
3.60
  • (15)
  • (68)
  • (56)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 383
感想 : 62
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801441

作品紹介・あらすじ

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになった澪は、押しかけ従業員で人形マニアの冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、なんとかお店を切り盛りしている。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告をみて、今日も傷ついた人形を抱えたお客さんがやってくる。人形と大事な思い出を修理すべく澪たち3人の活躍が始まる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • イタリアで日本文学ブーム、人気はエンタメ小説 背景にあの70年代アニメの存在 | 日本再発見|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
    https://www.newsweekjapan.jp/nippon/season2/2021/06/332961.php

    トリノのルイジさんとスマレ先生 - Various Topics 2
    https://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/e/36977259ec8cb8df9f5228395373b04e

    文春文庫『たまさか人形堂物語』津原泰水 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167801441

  • 祖母の形見の零細人形店を継ぐことになった澪。押しかけ従業員で人形マニアの冨永君。謎の職人師村さん。
    「あきらめてしまっている人形も修理します」という広告をみて、傷ついた人形を抱えた人々が「たまさか人形堂」を訪れる。

    日常ミステリーの雰囲気を持つ一冊でした。
    人形がテーマの小説って、思えば本当に少ないかもですね。津原さんの作品も初めてです。少しわかりにくく感じる文章もありましたが、おもしろかったです!
    人形についてかなり詳しく書かれてあって興味深かったです。
    冨永君というキャラクターがかなりツボです。「恋は恋」で一番感じた、(他の章でもちょいちょい感じる…)冨永くんの持つ陰の性質。これから明かされていくのでしょうか。気になります!

    ひょうひょうとした冨永君も穏やかなシムさんも何かしら影があるようなのですが…澪さん、冨永君、シムさんのやりとりがとても楽しいです。澪さんがとても苦労人。
    そして誰もつっこまないのだけど、シムさんがテディベアのことを熊ちゃんと普通に呼ぶのがとてもかわいいです(笑)

    「毀す理由」
    「恋は恋」
    「村上迷走」
    「最終公演」
    「ガブ」
    「スリーピング・ビューティ」

    の6つの短編が収録。テディベア、創作人形、ラヴドール、竹田人形、大浜人形、人形浄瑠璃の人形、マリオネット…いろんなタイプのお人形が出てきて、勉強になります。「最終公演」の作風が他のものとは少し違っていて、それもまたおもしろいです。

    最後はどうなっちゃうのだろうと思いましたが…、とりあえず、冨永くんぱねぇ!(笑)
    続編がないと少し消化不良に感じる終わり方でした。
    ので、続編が早く読みたい!

  • 人形店を継ぐことになったとはいえ、澪はド素人。
    そこに人形マニアの冨永君がやってきて、更には
    謎の職人の師村さんも参加して、人形の修復業として
    なんとか店を続けることができた。
    人形の薀蓄もさることながら、そこに込められた思いを
    敏感に感じ取りながら修復を試みる。
    まさにプロの仕事。
    こういう修復師の話って結構好きかも(o^o^o)
    続編の文庫落ちを待ちます♪

  • 「たまさか人形堂物語」 津原泰水
    「たまさか人形堂それから」 津原泰水
    長年勤めた会社をリストラされ、祖父母から譲り受けた人形店を継ぐことになったアラフォーの「澪」。人形マニアのアルバイト店員「富永」、わけありの過去を持つ人形職人「師村」の助けにより、専ら人形修理で店を切り盛りしている。他所では出来ない高度な技術に惹かれるように、今日も傷ついた人形と謎が持ち込まれる…。
    第二弾のそれからが文庫化されたので、第一弾の物語から一気読み。帯にほのぼのユーモアミステリーとあるが、中々どうしてハードな話も展開されます。第一弾で、早くも師村、富永の素性が明らかになり、ラヴドール製作会社社長の束前などレギュラーメンバーは顔見世終了、キャラクターも含め今後担うことになるであろう役どころも大まかに明らかになる。このシリーズがいいのは、謎解きも楽しいけれど、それぞれの登場人物の個性とそれを裏付け、たまに裏切るエピソードが実に面白い。だから、考えが浅くて安請け合いして失敗ばかりの澪、天才肌だけど人間的には不完全で脆い富永くん、誠実故に重い荷物を背負ってしまった人間国宝級の人形職人師村、Sっ気が強く口は悪いが実は親切な束前、どのキャラもすこぶる魅力的で愛おしい。
    「それから」はユーモア度が増して、会話の掛け合いに口元が緩むことも。最終話の人形同士が勝手なことを喋り合うところはまさにトイストーリー。澪と束前のロマンスの行方も気になり、第三弾の文庫化が待ち遠しい(^o^)

  • 初めて読む作家さん。人形を題材に扱っているし、登場人物が個性的で掛け合いも面白いので、もっとホンワカ進むのかなと油断していたら意外にも穏やかでない事件や苦い過去が。それはそれでスパイス的に人情味も引き立って良かったのかもしれない。続編があるらしいので取り合えずそちらも。

  • 普通のOLだった30代女性が、祖父母の人形店を継ぐことになり、その店の二人の職人と一緒に、持ち込まれた人形の修理がらみやなんやで、ちょっとした事件に巻き込まれたり解決したりしなかったりする、少しだけミステリ要素もある短編連作集。登場する人形の種類も様々(テディベアから人間に生き写しの創作人形、ラブドールに、由緒正しい雛人形、チェコの人形使い、文楽人形など)で、人形好きとしてはなかなか楽しめました。登場人物を通して、ちょっとした人形豆知識的なものを得られるのも面白い。

    個人的に好きだったのは、新潟県村上市で実際に行われてる人形イベントにヒロインが出かける「村上幻想」。古い伝説なんかが絡むと、この作者の本領発揮って感じで俄然筆が生き生きしてくる気が。ただ、連載していた雑誌が突然休刊になったことも関係しているのか、終盤になって突然ヒロインが店を畳むとか言い出したのはやや無理矢理ぽかったかも。まあでも続編ありそうな感じなので、楽しみです。登場人物の中では、理屈っぽく自己中でオタク(むしろ変態?)ぽいのに妙に知的で育ちの良さも感じさせる束前さんが魅力的でした。

    ※収録作品
    毀す理由/恋は恋/村上迷想/最終公演/ガブ/スリーピング・ビューティ

  • お仕事小説というか人形小説?

    3年前に広告代理店をリストラされた澪は、30代後半。
    入院した祖父に、世田谷区の玉阪人形店を生前贈与された。
    祖母が市松人形を作る店の跡継ぎで、祖父は職人の入り婿。
    祖母に可愛がられた澪は、思い出のある店をやっていこうと思うが、特に人形に詳しいわけではない。

    社員第一号の富永くんは、人形マニア。
    気楽な勤めぶりだが、その代わり給料は安くていいという~お金持ちのボンボンらしい。
    富永くん作のテディベアも人気を博すようになる。
    「あらゆる人形を修復できる方」という募集に応じた職人・師村に助けられて、次第に良いコンビになっていくが…?
    修理をメインにやっていくことにしたため、持ち込まれる人形にまつわるエピソードは多彩。

    昭和初期、アメリカから親善のために贈られたという、いわゆる青い眼のお人形。
    実は「青い眼の人形」の歌は、親善使節を送る企画よりも前に作られたので、キューピーのことだった。
    親善のために贈られたのは、アメリカで募金により購入された一万数千体にのぼる色々な人形だから、青い眼には限らなかったそう。
    といった豆知識も色々。

    「毀す理由」
    顔だけがひどく毀れた人形を持参した若い女性。元の写真と、持ち主の顔はそっくりだった…
    30年ぐらい前の古い人形なのに、何故?
    しかも、毀したのは本人らしい。どのように修復すべきなのか?

    「村上迷想」
    村上市での雛祭り。
    旧暦の雛祭りの日まで一ヶ月飾られている伝統ある雛人形をめぐって。
    旧家のミステリ。

    「最終公演」
    チェコの人形芝居の名人の話。
    大国に支配された時代でも、人形芝居は母国語での上演が許されたので盛んだったとか。
    パラフ劇団を主催するパラフ氏は奔放な想像力を駆使して、自由な公演を行っていた。その最終公演とは?

    「ガブ」
    人形浄瑠璃の人形の頭をめぐって、師村の過去が…?!
    ああいう人形って、着物の下には身体がないんですね…
    彫刻と人形との違いといった話題で、たとえば彫刻家は耳を量感で捉えるので耳には穴がない。人形作家は耳を生身に似せるので耳の穴を作る、とか。師村氏の語る仲の良い人形作家の弁なのですが。

    「恋は恋」
    富永くんが友人から預かったのは、ラヴドールという等身大のドール麗美。
    ウェブサイトで一目惚れして貯金して買ったそうだが。
    友人はカメラが趣味で、ちゃんと恋人もいるという。
    亀裂の修理を依頼した所、メーカーのキャプチュアから束前という社長がやってくるが、この型は基本姿勢を誤った失敗作なので直せないという。
    まだ開発途上なのだ。
    新しいタイプのボディに交換することは出来るが、安くはない。

    かなりトーンの違う話が入っています。
    気分が変わっていいけど、期待と違うと感じる人もいるのかな?
    お人形にかける熱意は、一貫していますね。誰がどこに力点を置くかの違いかな。
    なぜ、人は魅せられるのか…
    お人形は広く大好きなので、面白かったです。
    私が特に好きなタイプの人形の話は全く出てきませんけど~確かに普通すぎて小説にはなりにくいと思うけど。
    続編もあるそうなので、楽しみ。

    この作品は2009年1月発行。
    著者は1964年、広島市生まれ。89年、津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。
    97年、現名義で「妖都」を上梓。幻想小説の旗手として注目される。
    2006年、自身の高校時代に材をとった「ブラバン」が話題となる。

  • 「奇譚集」や「蘆屋家の崩壊」みたいな幻想小説の色がかすかに見えるのだが、ほっと心温まる部分もあり、ひとつひとつ楽しんでじっくり読んだ。
    店主の澪と職人2人の間の距離に、お互いを思いやる「本当の大人のあり方」が感じられて心地よかった。続編希望。

  •  祖母の形見の人形店を継いだ主人公。
     人形マニアと、凄腕の職人の三人で、修理専門の人形店として営業中。

     修理として持ちこまれた人形とそれを取り巻くミステリー短編集。
     *毀す理由
     *恋は恋
     *村上迷想
     *最終公演
     *ガブ
     *スリーピング・ビューティ

     一口に人形といっても、様々でそれに対する知識というか、含蓄に圧倒される。といっても、それが嫌みではなく、本当に人形が好きなんだというその気持ちになごむ。が、それを引きだしているのは、押しかけ従業員で人形マニアの富永くんなんだが。
     店主である澪はリストラされたOLってことで、祖父母の思い出は大事にしてるけど、だからといってそんなに人形が好きではない。
     この温度差が、かけひきの面白さになっていると思う。

     そして、二人の温度差を一気にフラットにしてしまう人形職人師村。
     人形は、人の形であると、その重さは決して揺るがない。

     まぁ、とにかく面白かったのだ。
     なので、「ガブ」から「スリーピング・ビューティ」の展開に、びっくりしたり安堵したり…。

     続編をぜひお願いしたいですm(__)m

  • 佳作。
    少しだけコメディ、少しだけハートフル、少しだけブラックで、少しだけ温かくなれる。
    人形は怪異という観念だけではなく、それ以前に工芸品だということを忘れてしまいそうになる自分に気づいた。
    しかし津原氏は、本当にそつなく文章を仕上げるな。まさに職人。

全62件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津原泰水の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×