たとへば君 四十年の恋歌 (文春文庫 か 64-1)

  • 文藝春秋
4.38
  • (32)
  • (20)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 369
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900175

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読書部課題図書番外編その3

  • 読むたびに前とは違う視点をもたせてくれる。
    自分の結婚後初めての読後。
    今回心に浮かんだのは、
    短歌という共通の手段を通して夫と心を通じ合わせることのできた河野さんがうらやましい、ということ。
    意思疎通の成否はやはり、自己・他者表現の巧拙にかかっていると思う。
    男性はえてしてこれが苦手だが、短歌はこの才能がなければ成立しない。夫である永田さんが自然科学系の研究者であることを考えれば、このような相聞歌のやりとり自体がある意味、奇跡のようにも思える。

    「(自分の短歌を)わかってくれる読者は、たった一人(夫)いればいい」という河野さんの気持ち、よく分かる。この一節を読んで私にも思い当たることがあった。論文を書くときは知らず知らずのうち、夫に読んでもらうことを想定していたと。

  • 【この世はこんなにも美しく、残酷だ。感動の相聞歌】2010年夏、乳がんで亡くなった歌人の河野裕子さん。出会い、結婚、子育て、発病、再発、そして死。先立つ妻と交わした愛の歌。

  • 相聞歌の極致を垣間みた。

    病気で自分、あるいは伴侶を失うこと、常に新鮮な目で伴侶と添い遂げることを短歌というフィルターで本当に鮮明に描いていると思う。
    エッセイを交えつつ配置された歌たち、両者の目線が混じる瞬間の感情のすれ違いや隙間を的確に描いた鬼気迫るノンフィクションであるとも感じました。

    可能なら、帯のある状態で買ってほしい。
    引用は、あえて自分の好みではなく象徴的な一首を。

  • 380首の短歌とエッセイで、乳がんで、逝ってしまった妻との相聞歌が、書かれている。
    歌は、勿論の事、恋人時代から40年もの間、短歌を通して、お互いの思いを、二人とも思いやって来たことも、感銘する。

    『共に棲みまだ七、八十年あるやうな君との時間ゆつくり過ぎよ』
    と、アメリカ在住の時に詠っている この最後の『ゆつくり』が、
    「ゆっくり」で、無いところが、本当に、時間が、長く過ぎて行ってくれることの願いが、ここにも含まれているように思う。
    そして、子育ての事が書かれてある所も、自分の身体も、時間も丸ごとみな子供達のためだけにあったのが、「こどもたちのいない日」のところで、今度は、子供達が、自分を置いて遠くに行ってしまうと、、、子供の自立を学び取り、夫婦との共有時間の長さを上手く表現している。

    恋愛の時の京阪七条駅の葉ボタンをキャベツと、称した永田氏のことを、植物オンチと、書かれていたが、春紫苑と姫女苑との違いを分かる人も少ないと、思う。
    やはり、短歌の選者をしているので、四季の花や野花などにも詳しいのだろう。

    『あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない』
    切実な気持ちで詠われたのだろう。
    関西人のあほやなあの言葉で、のけぞって笑っていた姿が、まだ、その椅子に腰かけている気にさせるのに、そこに座る主人公の不在に、戸惑う気持ちが、切に、心に響く一首である。

    同様に、城山三郎の『そうか、もう君はいないのか』と言う本を思い出した。
    「たとへば君」ともに夫婦愛の素晴らしさが、書かれている。

    子供からのお勧めの本で、時間を忘れて、読んでしまったが、もう一度短歌を、かみしめたい思いで、再度読んでいる。
    永田和宏先生の授業(生物)を、聴講していたから、余計に、感動して読んだ事だろうと、思う。

    『たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに 私をさらつて行つてくれぬか』 「薔薇盗人」
    の君は、永田氏であると、私は確信している。

  • 「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか」

    河野裕子さんを知ったきっかけは谷川史子さんの『積極-愛のうた-』(集英社/2006年刊)の表題作で河野裕子さんの短歌が短編のモチーフとして使われていたことだった。

    谷川史子さんの漫画にも通ずる、純粋で真っ直ぐなんだけれども、芯が太く、汚れのない感情が31文字の短歌によって歌われていてとても感銘を受けた。

    河野さんの第一歌集『森のやうに獣のやうに』は絶版となっており手に入らなかった。

    この本が文庫化されていることもつい先日知り、急ぎ購入した。
    歌に生き、歌に死んだ歌人であることは間違い無いが、負けん気が強く人間味に溢れる(若輩の自分が言うのも失礼な言葉だが)可愛らしい人であったことが歌の中からありありと伝わってくる。
    またそれを一番深く近くで寄り添った伴侶の永田和宏の心情とともに読むことができる。

    理想的な夫婦像である。

全41件中 31 - 40件を表示

河野裕子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×