その女アレックス (文春文庫)

  • 文藝春秋
3.81
  • (936)
  • (1723)
  • (1055)
  • (226)
  • (59)
本棚登録 : 11645
感想 : 1516
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901967

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カミーユシリーズ第二作。
    おそらくここ十年で最も有名なフレンチミステリー。年末恒例の各種ミステリーランキングでも絶賛され、ミステリー読者のみならず読んでいる人は多いと思われる。
    詳しい内容はネタバレにならざるを得ないので、後半に。
    一言で言うと私のイメージするフレンチミステリーその物。具体的に言うと、日本の作家である連城三紀彦のような確かな文章力に支えられた騙し絵のような、万華鏡のような読者を眩惑する作品だと思う。
    結末の皮肉さも効いているが、司法としてあの対応はどうなのかと?だが、あれ以外に救いはないような気もするし…

    以下ネタバレ
    三部構成での作品。内容的には
    第一部…被害者としてのアレックス
    第二部…加害者としてのアレックス
    第三部…全ての真相と結末
    上にも書いたように、騙し絵のように見え方が変わってくる作品。
    視点や視線が変わることによって、全く違う構図が見えてくるというのは連城作品と同様に、どんでん返しで騙される快感を与えてくれる。
    真犯人というか、全体の黒幕が行っているのは余りに偶然に頼り過ぎたプロバビリティの犯罪かと思うが、読書中は全く気にならないレベルの小さなキズだと思う。
    本筋に関係ないエピソードだが、カミーユが亡き母の自画像含む作品全てをオークションに出品した際に、こっそりと吝嗇家のアルマンが落札して、カミーユに誰か分からないままプレゼントしていたくだりが、妙に心に残った。

  • どんどん引き込まれ、一気読み。
    もっと読みたい!となってたはずなのに
    読後感が重すぎて辛い。
    それでも話の展開が読めないので楽しめた。

  • 感想を書くとなるとどうしてもネタバレになるので、これから読むつもりの方はぜひ何も前情報を入れないで読んでほしい。

    っていうかそもそも日本の出版の順序自体が盛大なネタバレになっとるというのはほんとアホみたいだ。
    出揃ってから読み始めて良かった。


    さて。
    誘拐事件から始まりシリアルキラーの逃亡かと思いきや復讐劇、と鮮やかに展開していく本作。
    面白く読みました。
    可哀想な被害者から一転、とんでもねぇヤベー奴なのか…?とぞわぞわしつつも何か違うと違和感を抱え最後には…という一人の人物に対して向けるべき感情が全く定まらず、混乱しながら読み進める。
    彼女の背景が見えてきても、彼女が語り手であっても尚、彼女が一体どんな思いで生きてきたか、それが直接には語られていないことが、より彼女の人生の絶望に想いを馳せることを手助けしてくれるように思う。

    でも一点、どうしても分からないというかうーんって思うのは何故トマだけ自らの手で殺さなかったのか、というところで、その一番納得できる理由はどうしても「カミーユの活躍する場が無くなるから」という外部的要因な気がするところ。
    そのせいで「アレックス」という人物がそれ自体として生きている一人の女性というより、小説の中の重要な部品の一部になってしまったような気持ちになる。
    小説の為にただ目も背けたくなるような背景を背負わされた不幸な女。
    結果は同じなんだけど、そう思っちゃうとこちらもとても冷静になってきてしまう。

    自分の過去に関する情報は死ぬ前に捨てているから、彼のやったことを世間に公にする、ってことでもないんだよね。
    彼を殺さず、生き地獄を味わわせるなら妻や母親を手にかけた方が効果的な気がするし…うーん、なんであんなに警察を信用したやり方で最後を飾ったのかが少しモヤっとする。
    ただ真相を分かった上であえてアレックスの仕掛けた罠に乗ってトマを逮捕する、という展開自体はブラックで好きです。
    無関係な観客は真実よりも物語を支持する。


    アルマンのエピソードはやや見え透いてはいるけどやはりジーンとくるよね。前作から読んでいると尚更。その為の執拗な描写だったかと。
    あとルイに関してはスピンオフで何か描いて欲しい。

    そして猫好きの私としては次作でドゥドゥーシュが酷い目に合わないか今から心配です。
    では、次に行こう。

  • 若い女性が男に誘拐されて酷い目に遭う……そういう本でしょ?とぱっと見思う(文春文庫だし)んだけど、それにしては人気で評価が高いというので、本屋さんで平積みされているのを見かけては不思議に思っていた。
    読んでみてなるほど、と思った。装丁はもう少し何とかならなかったのかな。
    悲しい話だった。こうなる前に何とかならなかったのかな、と。暗い、酷い話なんだけど、
    事件の謎を追う警察側の人々がよく書かれていて、バランスの取れた雰囲気になっていた。彼らの人間性に救いを感じる。
    書き方としては、ちょっと出し惜しみ? 伏線と言うにはあまりに細いかなぁ。
    それなりに楽しめたけど、全てがわかってから読み返すと、あちこちで静かに涙を流している彼女が憐れでならない。

  • 再読で、評価うなぎ上りです。
    これ、3部作のうちの2作目なんですよね。でも、前作知らなくても十分面白いって
    評価なんですが、イヤ、それはないわ。

    今回、1作目「悲しみのイレーヌ」読んでから読んだんです。
    再読なんで結末分かってたんですが、それでも全然楽しめました。

    最初読んだときは、ひたすらにグロく悲惨で救いのないお話しに過ぎなかったのです。アレックスだけのお話しになっちゃうからなんですよね。
    ところが、本作にはもう1人、ヴェルーヴェン警部という登場人物がいて、主人公はむしろこっちなんですよ。で、彼の行動原理とか心情とか、1作目を読まないと分からない、ていうか分からなかった。魅力半減でしたよ。

    この本も仕掛けが凄くて、ネタバレ厳禁ですが1作目は本作を凌ぎます。
    絶対に1作目を読んでから、これを読んでクダサイ。

  • 小刻みのいいテンポで、
    新しい情報が入ってくるから
    どうなるんだと展開が気になって読み進んだ。
    個人的には終わり方が気に入らなかった。
    こんな形での復讐か。。。

  • 海外小説。舞台はフランスのパリ、誘拐された女性アレックスと犯人を追うカミーユ警部。しかし、事件は思わぬ方向へ向かい…。中盤まで「白夜行」や「火車」を連想したが、最終的な印象は大分異なる。全三部構成で各部毎にアレックスの印象は全く異なり別人にすら思えるが、バラバラのパズルは最後に見事な絵を描く。反面、回収し過ぎてやや無理がなくもない。また、監禁を描く第一部は冗長に感じた。シリーズ二作目故に一作目のネタバレ満載なので注意。ヴェルーヴェン班のメンバーは魅力的で良かった。ルイはこち亀の中川を連想してしまったが…。

  • 本屋でも必ず平積みされているミステリーの注目作。映画化の予定もあるとか(「その女諜報員アレックス」というなんともまぎらわしい映画があるが、それは全くの別物)。
    読み終わってから本作がカミーユ・ヴェルーヴェン警部三部作の二作目であることを知る。一作目は「悲しみのイレーヌ」、三作目は「傷だらけのカミーユ」。……まだ読んでないけど、タイトルからしてカミーユはとことん不幸な星の下に生まれているようで……。

    とにかく凄惨な描写が続く。苦手な人は読まないことをお勧めする。私も胸が悪くなって、断念しかけた。凄惨なだけじゃなくて、その凄惨さがすごいリアルというか。



    以下ネタバレ。
    タイトル通り、アレックス(だけ)が主人公だと思った。カミーユはじめ警察メンバーは正直脇役だよなあ。後手後手にまわって、最後までなんにもしてないという印象。ラストも(承知の上でだろうが)アレックスの掌の上で踊っていたわけで。でも真実を追求するのが大事!っていうミステリーにばかり触れていたせいか、ラストは、うーん。馴染まないなあ。賛否両論あるんじゃなかろうか。
    はっきり言って、カタルシスはない。いろいろ謎は残されてるし、アレックスの人生を損なわせた面々がやっつけられてスカッとするわけでもない(殺されてるけど、なんで殺されたのかわからないまま殺されてるから)。なんであんなことしたのかとか、後悔してるのかとか、言い訳でもいいけど、もう少しはっきり奴ら側の言い分を聞きたかった。
    それと、硫酸流し込むのが喉なのはなんでなのか、よくわからなかったなあ。作中でも言及されているように、何があったかわかってからは尚更、性器にかけるのが自然だと思った。このあたりのアレックスの心情も描写してくれればよかったのに。
    こういうあえて核心に迫らない手法、もやもや感を残すやり方はわざとなのかもしれない。でも私は、この小説に関しては最後には霧を晴らしてほしかった。

    この物語が多くの人から称賛されているのは、おそらく二転三転するストーリー展開のためだろう。その度に読者のキャラクターへの評価ががらりと変わるわけだが、自分の現在持っている情報だけで安易に人を評価する危険性について感じさせられた。別の本からの引用だが、「判断を留保する」のが大事だろうと。

    ずっと孤独だったアレックス。彼女は死後にようやく自分のために怒ってくれる人、悲しんでくれる人を得た。それはカミーユをはじめとする警察の人々であり、読者である私たちでもある。
    しかし、彼女はそれを知らないのだと思うと、一層悲しくなる。

  • まず、翻訳の上手さに感心する。橘明美さんありがとうございます。
    悲しみのイレーヌを先に読むべきだった。

    1部2部3部でアレックスに対する見方が全く変わる。ただ、カミーユ警部の推理により早い段階でアレックスが性的被害者だということは分かった。
    行き当たりばったりだと思わせた殺人がそうではなかった事や,監禁を抜け出してどうしてもやらなければならない事がそれだったのかと、胸が詰まる。
    真相が分かると何ともやり切れない事件だった。
    ルイも素敵だが、個人的にアルマンがいい…。
    ラストに差し込まれたこのエピソードが、後味の悪い事件の後、せめてもの救いになった。

  • うわーーーこれが絶賛された理由わかるわかるーーー!と叫びたい。
    一部はただとにかくアレックスの無事を祈り、二部でえ?どうなんのこれ?と困惑、三部ですべてが収束していく様が心地良くすらある。結局アレックスは命というものは失ったけれど、兄と母と自分をめちゃくちゃにしたものには復讐を遂げたわけだ。アレックスは助からなかったけれど、スカッとした。
    これはアレックスが周到に用意した罠と考えていいんです…よね?
    悲しみのイレーヌで傷を負った人々も前を向き…しかし、この後がどうなるかさっぱりわからなくて怖すぎる。この四人の中の誰かが死ぬくらいあり得そうで。
    アルマンいいやつだなーもう。四人のキャラクターが濃いから耳慣れないフランス人名もなんとか読み進められた。
    あんまり面白くて1日で二冊読んでしまったよ。

全1516件中 51 - 60件を表示

ピエール・ルメートルの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンデシュ・ルー...
トム・ロブ スミ...
劉 慈欣
アンデシュ・ルー...
ジェフリー ディ...
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×