ミッドナイト・バス (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906719

感想・レビュー・書評

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  • 故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。

  • 支えてくれる人、支えている人を、どんなに意識せず毎日暮らしていたか考えさせられた。体温、重さ、匂いがあるんだよなと思い起こされ、沁みる本だった。

  • たまにしか乗らないけどバスが好きだ。目的地にいる友達に会えるのは楽しいし、バスの隣に座る人と思いがけず話をする事もある。帰りのバスは寂しくもあるが、旅で出会った人や感じた感情を思い返す大切な時間にもなる。
    この物語でも色んな想いを抱えた人が、回り道をしながらも、それぞれ自分の感情と向き合って生きている。周りの人や自分自身を認めるための物語のように感じた。
    もう少し家族と向き合う機会を持たなきゃなと反省。何事もすぐには結果はでない。後悔しないように、お互いに間違いながらも暖めあって行ける関係が築けたらと思う。

  • 東京-新潟間の夜行バス運転手の話。
    東京での仕事を辞めて返ってきた息子、大学生で別居している娘、二人の母親である元妻、東京にいる恋人。それぞれが悔やみ、悩みを抱えながら次のステップに進んでいく。

    まあ、随分と出来すぎなストーリー。50近い冴えない独身のオジサンが恋人と元妻の間で揺れ動く状況なんて、この日本で1% くらいの確立。ベースがこの奇跡的な状況から始まるので、最初からうわっツラな印象。みんな悩んでいるけど、最後は元妻は自分の家庭の居場所をみつけ戻り、ニート息子は就職し海外へ、娘は本気でアイドル活動、別れを告げた恋人との愛を再確認し会いに行くって。。。確率1%からスタートし、どんどん確立の低い軌跡が重なってもう、0.00?% の軌跡の話で、アホらしくなってしまう。

    こんな軌跡が起こらないから、みんな悩んで生きているのに。

  • 7月-24。3.0点。
    新潟在住の長距離バスの運転手、バツイチで社会人の息子、娘が相次いで戻ってくる。息子は会社を辞め、娘はネットアイドルになりグッズを販売する。

    恋人、子供たち、元妻、元妻の父親、降って湧いたような関係に苦しみながらも前へ。
    登場人物それぞれの描写が丁寧。悩みながらも少しずつ前へ。共感出来る。

  • 久々に伊吹有喜の小説を読んだ。やっぱ上手いね、この作家さん、挿話の配置とか、伏線の回収とか、もっていき処が丁寧かつ絶妙やわ。

    家族再生の物語、親子って普通こうなんよ。子供の幸せを願わずにいられない。自分の人生の岐路であっても、子供が泣いてたり…いや悲しい顔や悩んでる仕草を見せただけで、自分のことはどうでも良くなってしまう。

    俺もそうやって両親に育てられてきたし、俺もそういう風に子供に接してしまう。血を分けた子供に対して行うDVとかハラスメントとか、ああいうのは道徳観とかを抜きにしても、生理的に受け付けないのは、どんな形であれ親からきちんと愛情を受けて育ってきたからだと思う。感謝しかない…

    話はずれてしまったが、とにかく出てくる人すべてが、愛情を受けるか注いでいるか、その両方か…なので、少々人間関係でギクシャクするシーンがあっても心を荒ませず読むことができる。

    ラストの主人公の息子が去る間際がカッコいい。
    「父さんの幸せは俺たちの幸せだ」
    俺も本当にそう思うわぁ。息子として。

  • 章立てて進んでいく高速バスを主体にした家族の再生物語。
    離婚家庭が増えていることから第二の家族ってのが普通にありそうな感じで、オタク娘の話も、無職になった息子もそれぞれが結構リアルに読める。
    主人公が温厚なせいか穏やかに読み進められる静かな物語として良かった。

  • 映画化されていて、前々から気になっていたので購入。

    16年前に離婚した妻と偶然会ったのを皮切りにそれぞれの人達がこれからに向けて、人生を歩んでいく物語。
    主人公の視点で、物語は進行しますが、時折、別の登場人物の視点が入ってきます。
    同じ時間が流れているのに一呼吸加わることによって、連作短編集を読んでいるかのような雰囲気を醸し出していました。
    約500ぺーじというやや厚めで、大きな盛り上がりはないものの、一つ一つの出来事を丁寧に描いています。
    普段見ているバスの模様や名前を遠い都市で見かけると、なんだかホッとする自分がいます。小説でも書かれていますが、自分も同意できます。
    この前も滅多にいかない土地で、廃車になったバスが羅列されていて、そこに見たことのある色や模様を見た時は妙な親近感が込み上げてきました。世界は狭いなあと思わず思ってしまいました。
    家族の再生物語で、小説で出てくるような境遇や環境は異なるものの、自分の周りに誰か当てはまるんじゃないかと思ってしまいました。それだけリアル感がありました。
    あの日、あの時、こうすればよかったんじゃないかと後悔の念を持ったことは何度もあります。それが失敗と判断したとしても前へ進まないといけません。そういった過去を持ちつつも人生を生きていることに感慨深く感じました。
    主人公の焦ったさには、イライラしたものの、それを取り巻く人達の温かみがとても良かったです。

  • 映画は2時間半越えの作品だったが、原作の小説を読んで、ようやく物語の全貌が理解できた(長男のアレルギーの原因など)。

  • 深夜バスの運転手の主人公、無職の長男、アニメの長女、東京の定食屋の彼女。みんないい人だ。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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