先生のお庭番

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634506

感想・レビュー・書評

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  • 長崎の出島にて、シーボルトの御庭番として過ごした熊吉の物語。

  • おもしろかった。
    お庭番、とゆー言葉に忍者的要素を期待していたのだが、
    よく表紙をみろ、自分、そんな要素一切ないだろ~~!
    とゆーわけで、純粋にお庭番、植物のお話でした。

    シーボルトの薬草園に雇われた熊吉。
    そうそう盛り上がり、とゆーかこれといって事件があるわけでもないのだが、熊吉の生い立ちであったり、その心情であったり、
    先生のやぱんにむける眼であったり、ふいにはっとさせられるような、
    いろんなもんが積み重なった感じで、淡々とではあるものの
    熱く、読める。
    熱さは、熊吉の植物への愛情だったり、奥方の先生に対する愛情だったりするのかも。
    先生のやぱんに対する愛情も熱いのだけれど、
    時にひやりとする冷酷さが混じる。虫の音についての話、はシーボルトの話としてでなく聞いたことがあったけれど、ここでそーゆー話を入れてくるのは上手いなあっと思う。
    気がつかないけれど、でも決定的な違いがある、という現実。
    まあ、それもいつかは埋まるのかもしれないけれど。

    あの性根の悪い若旦那はさいあくだったな。
    でも泣きマネする熊吉はなかなか賢い。

    だからこそ、先生はその手にそれなりのものを掴んでください、と言ってのけられる熊吉が、いいなあっと思った。まあ腹を切るはめになった方は
    たまったもんじゃないが・・・。
    無残に枯らされたものを嘆きつつも、
    それでもなお生きるものに美しくあって欲しいと願う。
    先生は熊吉にとって特別な花だったのかも。

    裏切られた、という感覚を持つ人もいただろう。
    ただ熊吉は植物を通して先生と向かい合っていたから、
    それを慈しむ心は本当だとどこかで分かっていたから、
    最後まで恨んだり、ということはなかったのかも。

    でも、やっぱり私はこーゆー人はあんま好きじゃないな。嘘の中に本当があったのだとしても。

  • 読後感・・・・・全てが心に響いた本でした。

    登場人物、しぼると先生(シーボルト先生)、奥方(お滝さん)、主人公の熊吉、黒人のおるそん、そして吉岡正之進、忠次郎兄弟、あらゆる登場人物に魅力を感じました。

    前半は、熊吉の生い立ちや、熊吉がシーボルト先生のもとで奥方やおるそんと幸せに関わりながら、真面目で一緒懸命働く姿を中心に話が進んでいきますが、その中でも先生と奥方の仲睦まじさが、自然中心に描かれているこの小説に華を添えているように感じました。
    (熊吉がとても良い。真面目で健気で可愛い。魅力的)

    日本の植物、草木の素晴らしさ、美しさが詠うように描かれています。
    そして、のんきで優しい人柄のおるそんの黒人奴隷としての悲しさ。
    そして、後半は前半からは思いもつかなかった血なまぐさい事件が起こります。

    簡単に表しますと、
    「美・幸せ」から、「疑・哀しみ」に、そして「別れ」。
    お滝さんを思うと、切なく辛くなりながら読んでいましたが、終章で少し救われました。

    講談社の園芸大百科事典であじさいを引いてみました。
     「アジサイの学名中には、変種名がオタクサとある。これはオランダ東印度会社の医官として日本にやって来たシーボルトが、その愛人である長崎丸山の遊女(略)通称お滝さんとよばれた女の名を取ってつけたらしいことが一般に知られている。

  • 長崎の出島を舞台に、シーボルトに仕えた若き庭師の奮闘物語。土と草花を通して、日本の素晴らしさを実感できる。。。。
    作者得意の植木職人物語。西洋に日本の草花を根づかせたい。長崎の若き職人がシーボルトと共に伝えたかったものとは。。。。
    おすすめですよ~

  • シーボルトの野草園を任された庭師のお話し。実在していた人かは解らない。

    シーボルトをどういう人物として描きたかったのだろうか?

    日本に西洋医学を紹介した。
    日本好きだったけれど日本人の感性は理解できなかった。
    自身の名誉欲により多くの日本人を犠牲にした。

    そんな様々な思いが混ざっている様に思う。

    でもお滝さんの名前を紫陽花の学名にした。
    というのがまとめかな。

  • 図書館で借りる。シーボルトについては教科書程度の知識しかなかったが、今作を呼んで彼の行いが周囲に与えたものを考え恐ろしいと思ってしまった。熊吉が考えたように、我欲のためだけに行ったわけではないと思いたいが、後世の人間としてはその後の史実から鑑みるしかないのだろう。

  • シーボルト物。お得意の江戸時代の草木話も相まって、一気に読んでしまいました。辛い奉公先から、憧れの出島で園丁仕事。熊吉の成長と先生とお滝との愛情、おるてん達との生活と、途中までの幸せ感…そしてとシーボルト先生の裏切りとも言える所業で一気に結末へ。真実もこうだといいなあ。作中の日本の自然と職人仕事に改めて感心。
    (おまけ・シーボルト先生が美形描写で楽しかったです)

  • ちらっと中身を確認して図書館で確認して借り出す。
    最初はちょっとどこがどうなっているのやら、時代背景と舞台を把握するのに手間取ったけど、そこが終われば、あっというまに物語にひきこまれました。

    幕末、長崎出島。シーボルトの庭師として少年が青年に成長するまでの時間を描く。植物の描写が本当に美しいのと、庭師としての芸がすぐれていること、また、日本の植物名が連なるだけで美しいことには、瞠目させられる。字面を眺めているだけで楽しい気持ちにさせられるが、そこはどう並べるか作者の工夫あってこそ。

    また、シーボルトの顛末はどう終わるか知っているだけに、主人公の無邪気な信頼がはらはらさせてくれました。

    おもしろかった!
    もっと分厚い長編が読みたいな、とおもいました。

  • 途中で、先生の裏切りに違和感を感じるわ。
    見え隠れする裏切りより前までは、展開も雰囲気も好きなんだけどね…!

    あと、個人的に熊吉が最高に好きだ(笑)

  • 日本の自然の素晴らしさや日本人の美徳を再認識させられた。日本て良い国なんだなあ。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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