- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198634506
感想・レビュー・書評
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江戸時代末期、長崎出島シーボルト邸でお庭・薬草園を造り上げた日本人庭師のシーボルトの関わりが興味深く、また心温かいものを感じた。
シーボルトは日本偵察の命を受けていたのかもしれないが、日本の自然、特に樹木や草花を愛し、ヨーロッパにも根ざせたいと思っていたのは事実なのだろう。
シーボルト邸に住む人達、取り巻く人達との交流も楽しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「剣より花を」。花を手向ける外交なら争いは起きない。
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シーボルト、お滝、お庭番の熊吉。長崎、出島、鳴滝塾。ヤバい。当時、オランダがそんなに力を持っていたなんて、不思議。
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幕末の歴史に、
幕末の暦の学者さんのことに、
長崎の出島の事情に、
日本の本草学の事に、
興味を持つと
必ず 出逢うのが
シーボルトさん
そうか こんなふうに
シーボルトさんを見据え
その本人ではなく
彼に仕えた「お庭番」から見て
その時代に生きた
シーボルトさん
そして
シーボルトさんのまわりの人々を
描き出す
自由自在な想像力に脱帽です
浅井まかてさん
また一人楽しみな作家さんができました -
植木商「京屋」で奉公をする少年、熊吉がこの物語の主人公。
ある日、出島内の薬草園の園丁派遣の要請が京屋にくる。しかし、異国人の容貌、また獣肉を食すなどの文化の違いは、当時の日本では受け入れられないもので恐怖だったため、進んで受ける者は誰もいない。
そして、お鉢が周ってきたのが格下の熊吉である。
彼が世話をすることになったのは、あのシーボルトの薬草園であった。
仕事に対する誠実さや努力を惜しまない人柄を買われ、彼は徐々に園丁として認められていく。
その過程や、植物を通して、先生、瀧、使用人のオルソン、同じく植物を愛する先生の門人との交流は読んでいてわくわくする。
また、教科書でしか知らないシーボルトや瀧がここでは本当に人間臭い。
シーボルトは自尊心が高くて、短気。
瀧は、奔放でお茶目で時に何をするかわからない。
しかし、読み進むにつれて、あのシーボルト事件が起こり、終盤では、(もちろん)先生は本国へと帰ってしまう。
同じものを愛する気持ちで繋がっていると思っていたのに、ぱっと突き放された気がした。
先生がやらねばならなかったこと、やりたかったことは、わかる気がする。
それでも、先生は何が一番大切だったのか。と考えてしまう。
あれだけ日本の植物を愛でてくれていた先生が、秋の虫の音を煩わしく感じ、殺してしまえ、と命じる場面では、やはり大きな隔たりを感じて寂しく思った。
と、まあ長々書いてしまったけれど面白い一冊でした。
園丁の仕事、出島のこと、…などさらに詳しく知りたいなと思ったことも多くてもっと長くてもいいのにと思ったくらい。 -
2014 2月
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★3。8
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一番下なのに、誰も行きたがらずに押し付けられた役目が
阿蘭陀人の庭を『整える』事。
興味があったが故に、渋るようなそぶりをして役目を見事獲得。
しかしそちらに行けば、憧れのものに触れあえるかといえば
そうでもなかったという現実。
けれど何も考えつかなかった状態で、それでも考えたのは
職人としての意地なのか、草木を慈しんでいるからなのか。
たくさんの花々と、穏やかな日常。
しかし一歩そこから出れば、どうでもいい嫉妬とやっかみ。
そこからようやく逃れられて、ただ幸せな日々…かと思いきや
突如として付きつけられた現実は、確かにその通りで。
努力が実って誉められて嬉しい、で終わらないそのギャップが
夢から覚めさせられた、という感じです。
最終的にはお金で解決しているのだから、まぁそういう事、にもなりますし
そうでもなければ、生い立ちと金銭感覚がかなり違う物に。
単なる医者かと思ったら、そうでもなかったですし…。
とはいえ、草木に対して楽しそうでしたし
最後には分かる事がありましたし。
ハッピーエンドとは言い難いですが
現実でこれほど幸せになれるか、という終了でした。