茶色の朝

  • 大月書店
3.89
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  • Amazon.co.jp ・本 (47ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272600472

感想・レビュー・書評

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  • 数ページ読み「?」数日寝かせて始めから読んだら「あれっ?!」表現するに勇気がいる内容で、著者らは武器をペンに代えて訴えている。それでもどちらかが100悪くてそちらの思想は完全に誤っていて、我々の社会が100正しいというわけではなく、物事にはいろんな面があるはず。もろ手を挙げて賛同するわけにもいかないのが辛い。文字の奥にあるすべての思想に潜む狂気というか、これが絶対だ!との表現を感じないでもない複雑な気持ちも抱える。完全とか完璧なんて世界はどこにもないってことを心の芯に持つ。そう思った。

     ギャロさんそういえば、絵を描く人だって知ってたような気もするけれど、こんな本があるなんてびっくり。今はどこで活躍されてるのでしょうか?彼の作品がまた見たい。

  • 金曜日。パワハラ系の上司に安易に仕事を振られ、その仕事自体はチョチョっとやれば済むものだったが、悪い前例になりそうだったので、仕事の振り方に対して意見を言ったら、パワハラ系なだけにその上司が話の途中で大声でわめき始めて、大変な騒ぎになった。
    私の隣の席には、完全無欠のイエスマンが座っている。
    席に戻るとイエスマンがどん引きしていて、「まったく、お前というやつは。俺のようにもっとうまくやらないと」と目で語ってきた。
    俺のように、というのは、太鼓持ちのように常に上司を褒めちぎり、上司がいなくなるやいなや誰かれかまわず悪口をまき散らす、というやり方だ。正直に言うけれど、パワハラ野郎よりもタチが悪い、という印象。

    そのまま週末を迎え、落ち込みを引きずりつつ本屋に入ってこの本を読んだ。

    うまいなぁ、と思った。
    批判の仕方が。
    これよこれ、私が学ばないといけないやり方は。

    絵がヴィンセント・ギャロ、ということで「お!」と思って手にとったのだけど、どんな本なのか、全く知りませんでした。
    小説としてもとってもおもしろい。
    最初のページから「ん? どういうこと?」とぐいぐい引き込まれて、あっという間に読んでしまった。立ち読みで・・・すみません・・・・

    ところどころクスっとくるところもある。でも、最後は突然突き放されて、考えることを余儀なくされる。
    しかも、お話そのものがなんだかおしゃれ。この本を手にとる人を嫌な気持ちにさせない。

    そうよね、反対意見を言うにも、真正面からぶつかってはダメよね、相手は圧倒的な権力を持っていて、プライドもあるんだから、もっと頭を使ってうまくやらないとね、と思った。この著者のように。
    あ、もちろんイエスマンは論外。

    解説は、前半部分は「明らかに蛇足」と思った。
    あまりの逐語訳に、「ここまで説明しないといけないほど日本人の読解力は低下しているかなぁ?余計なお世話じゃない?」と残念に思った。
    でも、後半はすごく良かった。
    解説を書いた方の熱い思いが伝わった。
    後半を読んでいくうちに、確かに、今の日本はかなり細かく説明しないと伝わらないように感じる時があるなぁ、という気もしてきた。ということで、これはこれでいいのかも。

    日本では、昨今はファシズムというより、匿名性が集団心理と結びつくケースが幅をきかせていて、そういうところにもこの解説の「思い」が届くといいなと思う。

  • 短く、簡潔な文章で、人間の自由が奪われていく要因と結果とを描いた作品。蛇足かと思われた解説が、意外に良い(というか、これがないと、ヨーロッパ発のこの作品の意味が読み取れない)。高校生、大学生にすすめたい。いま、また読まれるべき本。

  • 今こそ読むべき本。

  • すごくいろんなものを押さえ込みながら不条理を自分に対して正当化するように言い含めていたはずなのに、どんどんおかしさは感じなくなっていっていつの間にか悪いのは自分以外、の気持ちになっている。でもほんとはきっと最初に猫や犬を手放さなければならないと言われてつらく感じた時に声を出さなきゃいけなかったし、それが結果を結んでも結ばなかったとしても叫び続けなければいけなかった、叫び続けなければいけないんだろう。

  • 茶色に統一された世界への違和感をやり過ごすことで、自分の身に降りかかる問題…。おかしなこと、違和感に対応しないことが自分の首を絞める、そんな風に感じる逸話。ヴィンセント・ギャロのイラストがアートブックのようで読み終わっても手元に置いておきたい素敵な本です。

  • 朝日新聞での紹介本である。短くしかもイラストが代わっている。茶色の猫や犬しか飼えないという決まりから、過去にまでさかのぼって茶色でない犬猫を飼っていた人も逮捕される事態になる。日本でも憲兵隊の服は茶色だったかもしれない。気が付くと廊下の向こうに戦争が立っていた、ということと同じである。
     現在、読む価値が非常にある。特に、香港の事例で現実的である。

  • 信念を裏切らずに生きようと思ったら、居心地の良さや感じの良さを犠牲にしなくちゃならない場面は、人生にいくらでもあるのよね。

    困難な人生も、ファシズムや全体主義に支配される、自分自身を裏切る人生よりはマシだと、いつでも言えたらいいのにと思う。

  • 3.87/899
    内容(「MARC」データベースより)
    『突然「茶色のペット以外は飼ってはいけない」という法律ができたことで起こる変化を描いた反ファシズムの寓話。フランスのベストセラーにオリジナルの絵と解説を加えた日本版。』

    冒頭
    『陽の光がふりそそぐビストロで脚を伸ばしながら、
    俺とシャルリーは、とくに何を話すというわけでもなく、
    お互い頭に浮かんだことをただやりとりしていた。
    それぞれ相手がしゃべる中身に
    たいした注意は払っていなかった。』

    原書名:『Matin Brun』
    著者:フランク・パヴロフ (Franck Pavloff)
    訳者:藤本 一勇、高橋 哲哉 (メッセージ)
    出版社 ‏: ‎大月書店
    単行本 ‏: ‎47ページ

  •  ある政府が、茶色以外を認めない政策をとった。飼い犬が茶色ではなかったシャルリーは、老犬を安楽死させたと言った。
     茶色の犬を飼い始めたシャルリーだが、以前飼っていた犬が茶色ではなかったという理由で逮捕された。

     「仕方がない」でやり過ごしているうちに、状況は厳しくなるばかりだった。

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