嘘だらけの経済報道 アベノミクスに騙されるな!

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  • 文芸社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784286173450

感想・レビュー・書評

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  • 昨年(2015)に予定されていた消費税率アップは見送られましたが、その代りに来年(2017)の4月に必ず10%へ増税されることが決定されました。1989年に3%で導入された消費税は今まで、5%、8%へと増税されてきましたが、増税するたびに不況を迎えています。

    消費税導入の時にはマスコミが中心となって展開された「反対運動」も今では殆ど行われていないように思います。そして増税を後押しするような経済報道だけが目につくように思うのは私だけでしょうか。そのように思っている私にとって、この本のタイトルは私の目を惹きました。

    この本に書かれていることは全て真実だと思います、そしてこの様な内容は、主要メディアには登場することなく、後になって、正しかったことを歴史として気づくことになるのでしょう。増税、インフレ、大部分の人の生活困窮、は避けされない運命のように思いますが、将来の見通しを知って自分に対処できることを考える、良い機会を与えてくれた本となりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・最低賃金の引き上げは、中小企業・零細企業の経営の圧迫につながる。最低賃金が都市部と比べて低い地方では、大きなダメージを受ける。彼らが人を雇うのを減らせば、その影響を受けるのは労働者である(p24)

    ・スイスは殆どなんの産業もなかったが、相続税を廃止した結果、富の蓄積が起こり産業の発展につながった、シンガポールも同様。日本もそうすれば、多くの中小企業が悩んでいる「事業継承」がスムーズに行えるようになる(p37、38)

    ・株価暴落の直接原因が、上海株暴落によるとこは間違いない、中国経済の減速も間違いない。しかし真犯人は、リーマンショック後に世界中で行われてきた、金融緩和が資産バブルを生み出したことにある(p48)

    ・夏場の相場(米国独立記念日から9月1週目のレイバーデー)は上がると信じている人が多い(p49)

    ・世界中で量的緩和が始まってから、株価・為替などの相場は、実体経済と関連しなくなった。だから評論家たちは予測を外す。メディアの経済報道である、企業業績・消費動向などのファンダメンタルズ、各国の経済状況で株価・為替の動きを解説するのは間違っている(p56、57)

    ・日本だけがデフレ下で成長できなかった、これは日本経済システムと産業構造がグローバル化に適応できなかった、生産年齢人口が減って国内需要が低迷したことが主原因で、デフレだからではない(p60)

    ・「いいデフレ」とは、供給側が努力を重ねていくことで、物価が下がること。製品を安く売ることで物価が下落する。需要が減少したわけではないので、多くの人が多くのモノを買うので景気が良くなる(p63)

    ・主要17か国の各5年間平均の実質平均成長率とインフレ率を調査した結果、全595例のうちデフレ事例は73例あったが、デフレと不況を同時に経験したのは、わずか8例。不況の事例は29例あったが、そのうちデフレは8例。デフレと不況の関連性は全くなく、デフレ期の90%近くは、好況と重なっている(p65)

    ・BISが発表した報告書によると、38の経済を1870年までさかのぼって調査した結果、デフレは全期間の18で発生。経済成長率が大きく低下したのは、1930年代初頭の大恐慌期間のみ。日本経済は、人口の伸び悩みと急速な高齢化が経済成長の重しとなった、人口要因を考慮する必要あり(p86)

    ・途中で打ち切られるような記者会見となるのは、政府や官庁の一次報道に対して、新聞やテレビ局でつくる「記者クラブ」が独占しているから。民主党政権時代に、記者クラブのオープン化が行われ、いまでは加盟社以外の記者も参加可能だが、それでも質問は許されないことが多い(p70)

    ・格差がなぜ拡大するかは、デフレ下とインフレ下では生じる格差そのものが違う事にある。デフレ下では、企業倒産リストラにより、一部の労働者が貧困化するが多くの労働者は影響を受けない。それどころか物価が下がっているので相対的に富裕化する。インフレ下では、資産を持つ富裕層と持たない一般層の格差が、インフレが進むほど大きくなる。社会問題としてはインフレ下の格差拡大が問題となる(p73)

    ・日本経済の衰退、不況の原因は、人口動態で説明がつく。生産年齢人口(15-64)が1995年から減少。現在はまだ8000万人をキープ(ピーク時は8726@1990)しているが、2030年には6700万人となり、生鮮年齢人口率も63.8@2010から、58.1@2030となる、2点目として、高齢化率が36.1→54.4@2030へと上昇する(p75)

    ・量的緩和と財政出動はセットになっているので、政治家がいちばん権力を行使できる「ばらまき」を行えるので、政治家と官僚にとっては都合がいい(p85)

    ・インフレには2種類ある、一つ目は、需給バランスにより生じるインフレであり「いいインフレ」である。2つめは、貨幣インフレであり、人工的に起こされたインフレは止まらなくなる可能性がある(p87)

    ・異次元量的緩和により、国債と日銀当座預金は急激に増加したが、現金はほぼ横ばい。市中はお金でジャブジャブになったわけでない。民間金融機関は、保有国債を日銀に売る。日銀はその代金を民間の金融機関が日銀に持っている当座預金に振り込む。これが日銀当座預金、これには利息がつかないが、彼らがお金を引き出さないのは、超過準備部分(準備預金制度に基づく準備を超える額)については、0.1%の金利をつけているから(p97)

    ・アービング・フィッシャの交換方程式:M(通貨量)xV(貨幣流通速度)=P(物価)xQ(総支出量)、V:貨幣の流通速度とQ:モノの取引量が一定ならば、M(マネーストック)を増やせば、物価は上昇する。不況期にはVは落ちていて、お金の巡りが悪くなっているので、マネーストックを拡大してもVは影響できない。また、増やした貨幣がブタ積みされれば猶更(p99)

    ・アベノミクスの量的緩和は事前にアメリカ政府の合意が必要であったが、許可された理由として、、アメリカが量的緩和を手仕舞するにあたって、日本がその肩代わりをするから。つまり、アメリカの財務証券(米国債)を買い増しするから(p102)

    ・日本は半年で約900億ドル(10.8兆円)の米国債を買い増し(2014年)したが、消費税増税分(約6兆円)にも満たない(p103)

    ・米国国債買いは、特別会計のなかの一つである、「外国為替特別会計」によって行われる。ドル買いを国民の税金で行えないので、財務省が政府短期証券(FB)を発行して、債券市場で円を調達して、それを為替市場で売却してドルを得る(p103)

    ・日本は米国債を売却できないことになっている、米国債が満期を迎えるたびに、償還されたドルで再び米国債を購入することになっているので、米国は永遠に日本にお金を返さなくてよい(p104)

    ・米国債の保有残高は公開されているが、それは米国債のうちの為替介入で購入された短期モノのみ、10,20,30年といった長期国債の保有額は公表されていない(p104)

    ・ほとんどの新聞社はその配下に系列のテレビ局を持っているので、政府は新聞社とコントロールすれば、日本の世論をコントロールできる。消費税2%のアップにより、読売新聞は109億円、朝日新聞は90億円の負担増となるので、これを政府が逆手にとれば、新聞社の言論を制御できる(p113)

    ・消費税の3%増税(5→8%)は、1.6倍も上げるわけで「増税率160%」である。多くの中小企業はこの負担増に耐えられない(p117)

    ・現在の国債利払い費は約10兆円で、消費税換算で5%である。私達はすでに消費税を13%払っているのと同じである(p123)

    ・好業績なのは、一部の企業(自動車産業にようにグローバル展開している、中国人爆買いの恩恵を蒙っている国内企業)だけで、イトーヨーカ堂やイオンの業績は悪化している(p128)

    ・海外の現地法人と日本国内の企業との取引はほとんど増えていない。企業活動が「地産地消」となったから、やりとりはライセンス料や配当金のみ(p133)

    ・豊田は14兆円の打ち上げがあるが、6兆円を輸出で得ている。その原材料購入に際して支払った消費税は還付される。豊田税務署では、毎年還付金が納付額を超えている。海外進出企業は、利益を現地でプールして、日本に戻した為替差益による利益の一部を賃上げに回した(p134)

    ・2014年になると、人手不足が深刻化するようになった。景気が良いからではなく、景気が悪いから人手不足が起きた。つまり、給料が上げられない企業で働く「低賃金労働者」がいなくなってしまったから(p143)

    ・ボリュームゾーン不況の原因は、中流層の嗜好が変わったことでも、飽きやすくなったからでもない。中流層が消滅しようとしているから(p146)

    ・日本は労働差別社会である、どんな労働形態にあるかで階層が決まる身分社会である(p157)

    ・厚労省は、新卒一括採用・年齢制限を、雇用対策法の適用除外にしている(p160)

    ・日本の官僚組織は、国から地方公共団体にいたるまで、新卒一括採用と年齢による序列で出来上がっている。自分達の組織を変えない限り、民間は変えられない。このシステムは、1960年代後半にできあがり、それまで日本にはそんなシステムは無かった(p160、163)

    ・高度成長期になる前までは、会社は一部の正社員と多くの準社員、職工といわれたブルーカラーで構成されていた。準社員とブルーカラーは終身雇用ではなく、待遇次第で転職を繰り返していた。新卒一括採用は、一部正社員のみ(p164)

    ・教育格差の本当の原因は、お金ではない。人間が固有に持つ遺伝子が格差を生み出している。行動遺伝学によれば、知能における遺伝の影響は80%以上である(p169、170)

    ・住宅地の物件は、本来投資物件ではない。賃借人がそれに見合う賃料を払うか、住みたい人に人気のあるエリアで転売が利くなら投資は成り立つ(p187)
    ・売れない戸建ては「負け組不動産」と呼ばれる。郊外電車の駅から徒歩15分以上、駅までバスという住宅地に多い(p191)

    ・中国政府は、2015年10月から、爆買いを支えてきた、銀聯カードの引出上限額を、一日1万元から、1枚につき5万元に変更した。通達は9月29日である(p207)

    ・日本はどうみてもすでに財政破綻状態。企業ならば債務超過で倒産は間違いない。しかし国家なので、国民が毎年納める税金と、銀行に貯蓄された預貯金というフローのお金があるので、破綻しないで済んでいるだけ。破綻は先送りされている(p217)

    ・日銀当座預金に国債が移ることで、金利上昇リスクは、民間から日銀に移り、金利抑圧政策は成功し、財政破綻は先送りされた(p226)

    ・日銀がつけている0.1%をなくして金利ゼロにしたら、民間銀行はお金を引き出す。すると日銀券を増刷することになり、マネーストックは増加する、国債が貨幣化されることで、貨幣インフレが進む(p230)

    2016年2月7日作成

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著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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