- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309028620
感想・レビュー・書評
-
ヘンタイ! ヘンタイ! ヘンタイ!——選ばれた民として、新人類への進化という向こう側の世界に行かなければ。中2男子の性の目覚めがもたらす官能と陶酔。
86歳になる父の命が消えようとしている病室で、母と二人、57歳になった伸一は中学2年の頃を思い出していた。
クラスの変わり者の北村と、オカルトの世界へはまり、大山田絵里子にほのかな恋心を抱きつつ、女性化する事、魔女になるとことに憧れ、全裸で森を歩いてみたり、シンナーに溺れてみたり。
父の単身赴任先へ行き、浮気を知った夏休みの思い出。
自分の厨二病時代も、思い出すと顔から火がでて、変な汗が止まらなく封印したい黒歴史そのものだが、
伸一、拗らせ過ぎ!!!
しかも卒業できてない。
父が亡くなった夜に、自分の都合良く記憶の捏造をして泣く母に、いい歳したおっさんが
「父ちゃんは母ちゃんより私の方が好きやってんからね。思いあがらんといてくれる?」はドン引きしてしまった。
そして何も答えない母に、その沈黙は父が母より私の方を性愛の対象としていたという事実を母自身が認めたと思わざるを得ないとか...
奇妙過ぎてどこから突っ込めばいいのやら...。
ある意味、私にとっては嫌ミス作品だった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魔女というモチーフが斬新だが、基本的には厨二病的世界観と現実世界の葛藤を描いた作品なのだろう。主人公が中2(まさに!)時代の両親やクラスメートとの関係を中心として物語は進むが、特に両親との生活描写において、著者特有の、現実のマヌケさをこれでもかと強調する筆使いが楽しめる。
前後に挟まれる四十年後の挿話に胸が苦しくなる。 -
この母子は一体何を張り合ってるのん?
そういえば中学の頃、腕に卍のマークを彫りたいつってカッターで一生懸命腕切ってた同級生いたけど、まあ中学生だしみんな何かしら変な妄想してるよな。わたしも中学生の頃は妄想が楽しかったし大丈夫。中学生ならね。 -
クラスのイケてないグループに属する伸一くんは、妄想とリビドーを持て余している。その結果、様々な愚かなことに手を出す話。
行為の内容や愚かさの程度に違いはあるけれど、思春期の自分もやはり伸一くんであった。それゆえにこの物語が痛々しくも目を背けることができず、一日で一気に読んでしまった。
伸一くんは親もおかしいし、現実に引き戻してくれるような友人もいない(というかそういう人との関わりを是としていない。そこがなおイタい)ので、ストッパーがない。
やはり社会との関わりって大事。
思春期の少年の抱える妄念や性欲のスケールが、少年自身が制御できる範疇を越えている感じをかなり的確に描いているように感じた。それが本作の最大の魅力だと思う。
あと、シンナーの影響を表現している部分の、めまい状態で耳の奥がうわんうわん鳴っているときの聞こえ方と、脳が情報処理を全くできていない感じの描写が巧すぎ。作者は経験者に違いない。 -
やっぱり好き
-
久々の吉村萬一さん。
変わらぬ、目を逸らしたくなるような物語。
でも何処か、自分の胸のうちにも、主人公と相似形のものがあるように感じる部分もあって、それが頼りなく、不安な感じを紡ぎ出す。 -
読んでいてあまりにも疲弊する小説。
中2の少年の性への目覚め、オカルトへの傾倒、変身願望、友人への憧れと侮蔑、両親との関係。
ありきたりな青春小説かとおもいきや、その生々しすぎる描写と繊細さで吐き気がするようなヘンタイ的な物語に仕上がっている。
ありきたりなことが実はそうでもないのだっていうこと。物の捉え方。見ているもの。
小説であってお伽話のような色づけ。
ラストの怖さもさすがの面白さでした。 -
『ボラード病』で吉村萬壱に惚れて本書を読みましたが、んー、そこまで……。生々しい人間の生理現象描写に読んでるのが辛い。この後伸一は吹っ切れて向こう側へ行ったのか。ラストの数行はなんと言うか、やっぱり気持ちいい。
どの辺が『金閣寺』だったのか分からんので中身を忘れかけた『金閣寺』も読み返そうかな。 -
これは男性が読んだ方が面白いのではないか。
おそらく自分の若き日の恥ずかしい行いや秘密を思い出すに違いない。
性の目覚めと共に女性(魔女)になりたい、という欲望とか
、女日記を書く、森の中で裸になるとか、背徳感がすごい。
私は残念ながら女性なので中学生男子の気持ちが分からない。
だからこの小説は、その未知の生き物をこっそり覗き込んでいるようで本当にドキドキした。
自分の目の前でこの本を好きな男に読ませて、己の過去を思い出させて恥ずかしがるところを見てみたいと思った。
気味の悪い描写とかやはり上手いなーと思う。
北村晴男のことがもっと知りたかった。
あとは、主人公の父親がなんかめっちゃ好きやった。