- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309206783
感想・レビュー・書評
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シャルリー・エブドとパリのテロがあった年に日本で発刊され、「フランスでイスラム政党が政権を取る」という話なので、必然的にセンセーショナルな関心をひく(ガイブン界の関心には限界はあるが本屋で平積みになる程度には)期せずして、パリのテロの日に読み始めた。
過激派によるテロなど現実とシンクロする部分が予言的であるものの、イスラムがどうというタブーに挑む的な内容ではない。むしろ、西欧の、キリスト教やフェミニズや自由と平等の建前に基づいた価値観の弱体化が強調されているようだ。主人公は大学教授、知識人はだらしなく長いものに巻かれ、できてしまった社会に服従し、そこに知的な抵抗はない。過去にはナチスも受け入れた社会の「服従」を批判し(しかしイスラム政権下では犯罪が減るなど善政でもある)、イスラモファビアが蔓延する移民文化の中で西欧VSイスラムという図式の限界を指摘する。ウェルベックにしか書けない本だったろう。
しかし一番の興味は一夫多妻制が羨ましいからって…作家は確信犯だろうが、マッチョな露悪趣味には呆れるけれど。この本の中で、女性は後半台詞も与えられていない。男性の皆さん、一夫多妻ってそんなにいいもんですかねえ?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022年フランスにイスラーム政権が誕生。政治と距離を置いているインテリ大学教授の生活も変化し、ある決断を迫られる。宗教感が薄く移民も亡命も少ない日本では想像できないが、他民族国家では想像の域を超えた予言のようだ。刺激的な作家は健在。
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2022年、フランスにイスラム政権が誕生。ファシストかイスラム主義か。キリスト教国には苦渋の決断だが、人々は適応していく。否、イスラム主義の寛容さに翻弄されているのかもしれない。ユイスマンス研究者である大学教授フランソワの視点で、逃げ出すユダヤ人、動き出すアラブ国家が淡々と描かれる。特に政治に興味を持たない彼が、いつの間にかイスラム主義の柔軟性に絡めとられる様に妙なリアリティがある。『0嬢の物語』を例に「服従」が肯定されるくだりには、つい納得してしまいそうだ。さて、本名を伏せられた翻訳者はあの人だろうか。
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いろいろ考えさせられる。
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2022年のフランスではイスラム教の国になってしまう。
そんなとき生きる目的に意味をあんまり見いだせていない冴えない大学教授の男はどうするのかを描いた本。
結局この男はイスラム教に何かを見たらしく、ちょうどイスラム教に改宗すれば大学教授に復職することができるので改宗するが。
イスラム教の国に仮になった場合、かなり世界が変わってしまうし、価値観すら変わってしまう。
服従することが幸福には必要だと説くルディジェ教授の言うことはごもっともな気がする。
私たちも知らず知らず無意識のうちに服従しているからだ。 -
この本を読んでいるときにパリで多発テロが起きた。
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(2025/11/2読了)