国語の時間 (河出文庫 た 16-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309406046

感想・レビュー・書評

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  • びろうな話ですが。
    トイレで、少しずつ読み進めていた本です。

    著者の竹西さんは河出書房や筑摩書房で編集者をした後に文筆業に入り、小説や随筆で数々の賞を受賞。日本を代表する女性作家の一人。

    とはいっても、いわゆるベストセラーとは縁がない人。しっかりとした日本語の文章を書く(というか伝統的な日本文学を守っている)人ということで、おそらく玄人(って表現も変か?)好みの作家です。

    文章の端々に、日本語の規範に対する強い信念と、なんでもありの現代(といっても本書のもととなる週刊読売への連載は20年近く前ですが)の日本語への静かな怒りが感じられます。

    たとえば、自分も気づいていなかったけれど、「こだわる」という表現について。

    私の中ではいい意味ではほとんど用いられない言葉であったのに、この頃のこの言葉の活躍を見ていますと、「こだわり」が、いいことのように伝わってくる場合が少なくありません。
     大したことでもないのに、とりたててあげつらう。わずかな欠点を見つけて難癖をつける。悪く言う。小事に執着して大観できないときとか、見方に柔軟性を失っているような場合に使う言葉と思ってきたのですが、そうではなく、研究熱心とか、愛着の深さを表す言葉として使われているようで戸惑ってしまいます。
                                      (p171「臆病と果敢」)


    今現在の日本語の環境の中で、「こだわる」をマイナスイメージで使う人はどれだけいるだろう。
    おそらく、ほとんどいないのではないか。
    雑誌やテレビ、ネットの言葉遣いの中では「こだわりの宿」とか「こだわりのスープ」など、ほとんどが肯定的なニュアンスでしか使われていないと思うのだ。

    日本語ってすごいなあ。そう思う発見がたくさんの本だった。

    古典を読むことで、言葉の感性が磨かれるという話や、茶の間に汚れてもいい辞典を置いて、気になった言葉はどんどん辞典を引くという友人のエピソードなど、さっそく自分も取り入れている。

    ちょっと説経調な部分はあるけれど、ためになる1冊。

  • 言語の土台を整えることがいかに大切であるかを気付かされる作品

  • 1992〜1994年の連載。日常の、日本語での言葉遣いに関するエトセトラ。
    「自由と形式」などで触れられている国語の基礎や形式を尊重することの大切さや、「茶の間の辞典」「慶弔の言葉」にあるような名文ではなくとも書き手の思いや人となりが伝わってくる文章の魅力なんかは全くもって同意する(いずれも各項の主題ではないけれど)。後者は特に自戒として心に留めておきたい。
    流石にその考え方は古過ぎやしないかと思う箇所も多少あるにはあるが、日常の言葉遣いを意識するいいきっかけになったかなと思う。

  • 言葉に向かう姿勢を正してくれる一冊。
    言葉をもって思考することは、
    読む、書く、話すという行為の前提にあって、
    ここをおろそかにしてはいけないのだと、
    あらためて感じた。
    日常に織り込まれた国語の時間を、大事にしたい。

  • 真面目な本です。僕は違いましたが、これ読む人はきっと正しい言葉を適切に、自在に遣える人間になると思います

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著者プロフィール

昭和4年4月11日、広島県に生まれる。昭和27年早稲田大学第一文学部文学科(国文学専修)卒。小説家。評論家。日本芸術院会員。河出書房、筑摩書房勤務、昭和37年退社。38年「往還の記--日本の古典に想う」で田村俊子賞。56年「兵隊宿」で川端康成文学賞。平成6年日本芸術院賞。著書に『竹西寛子著作集』全5巻別冊1(平8 新潮社)『自選竹西寛子随想集』全3巻(平14〜15 岩波書店)『日本の文学論』(平7)『贈答のうた』(平14 いずれも講談社)など。

「2004年 『久保田淳座談集 心あひの風 いま、古典を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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