- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309470016
感想・レビュー・書評
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いまのJRが国鉄と言われていたころの、味わい深い鉄道の旅。
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もと中央公論誌の編集長という平日の顔を持ちながら、国鉄時代の2万キロを乗り切った宮脇俊三先生。鉄道好きの人種からすれば、教祖さまのような存在と言えるのでしょう。
完璧に時刻表を読みこなし(あるいは全部頭に入っていそうな)、乗り換えや乗り継ぎで失敗するようなことは断じてなく、乗ることを使命としているような、そんな鉄人を想像していたことは事実です。
金曜日ともなると、駅にまっしぐら。未乗の区間をつぶすべく寝台列車の乗客となり、まだ乗っていない区間を乗りきるためだけに現地へ向かう。
道中、たまには意外と普通な失敗をやらかしたり、地元の名物の誘惑にあらがえずに途中下車してしまい、ほんの少しだけ未乗区間を乗り残すというお茶目さも持ち合わせているおじさん。それがかの有名な宮脇先生の素顔だったのです。
なんかイメージ変わるな~。
中に出てくる路線の多くは、国鉄からJRへの分割民営化とともに廃線になってしまったものも多く、真似して乗りたい、と思っても、今はもうそれができないのが残念でなりません。宮脇先生の文章にも、「車内に乗客が自分以外に誰ひとりいない」とか、「雑草の茂る寂しい無人駅」などといった記述が散見され、いずれ廃線の運命をたどりそうなことは、乗りながらも先生は感じ取っていたようです。なくなる前に乗っておかなければ。それが2万キロ踏破の無言の原動力になっていたようにも感じます。
それにしても、宮脇先生はローカル線の中で実にいきいきしています。乗り継ぎトリックを考えついて「これだ。ふふっ」とひとりほくそえみながら列車に揺られている様子や、駅で切符を買うのにあれこれ空席を調べてもらい、しまいには「お客さん・・・いったいどこへ行きたいの」と駅員さんにあきれられたり、と、なんだか楽しそう。
度重なる遠征で、さすがに旅費がかさみ、ふところが寂しくなってきて、お酒をちょっとがまんしたりするところもほほえましいのです。
最後に残っていた路線を乗り切り、悲願だった完乗を達成したというのに、満足感よりも心にぽっかりと穴があき、「乗るべき線がないから、もう書くことがない」としょげるさまも、「よしよし」と声をかけてあげたくなりました。
しかし意外な形で物語は再開します。明治30年より悲願80年といわれた気仙沼線がめでたく開通したのです。新しい線ができたら、宮脇先生は乗らなければならない。1日たりとも100%を下回りたくないと、早速、開通の日に乗りに出かけます。きっと息を吹き返したように足取りは軽かったことでしょう・・・
沿線の住民による花笠踊りや小旗、風船、祝福の様子。開通の日の地元の人の喜ぶさまを読んで、ぎゅっと胸をつかまれました。ここの路線は今回の津波で多くを流されてしまったのです。開通の日の乗客となった宮脇先生も、もちろん住民の方も想像すらしなかったことでしょう。特に、なぜか志津川駅での祝福の様子が細かに書かれていることに、せつない気持ちになりました。
日本じゅうで、今はなくなってしまった寝台列車や特急・急行列車の数々や、車掌さんとのほのぼのしたやりとりを読んでいると、時代は変わってもやっぱり、「線路は続くよどこまでも」なんだなぁ・・・・と、あらためて、鉄道の旅を大切に楽しみたいなあと思うのでした。-
ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は...ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は限りなくゼロに近い・・・と思う)!2012/10/15
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なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
リアルタイムでお手にとられていたとは、...なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
リアルタイムでお手にとられていたとは、うらやましい限りです。
さあ、宮脇作品を鞄に詰めて、乗りましょう~!たのしいですよー♪2012/10/15
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旅本は面白い。
初版は昭和55年!国鉄全線を制覇。調べてはないが、廃線になったところも多いんだろうな。 -
面白い。仕事落ち着いたら日本中を鉄道で旅したくなる
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鉄道好きとしては面白い内容だった。
初版は1973年(昭和53年)なので、廃線になってしまった路線やまだ完成していない路線もあり、今読むとその比較が以外と楽しいのと、初版当時時刻表の愛読者の一人だったので、その当時を思い出し懐かしく感じた。 -
私も子供の頃は時刻表を「読んで」、空想の旅を組み立てては楽しんでいたことがあった。何人か話の合う友達もいたと思うが、大人になってそのような旅を実現できるようなお金を持ったとしても、子供の頃のような純粋な情熱を持ち続けられた人はほとんどいないだろう。国鉄全線に乗るためだけにこれだけの労力をかけるのは馬鹿馬鹿しいと思いながらも、心の奥底で子供の時の気持ちを思い出して本書を楽しむ人も少しはいるに違いない。私もその一人である。
乗り残しのローカル線の記述が多い。「こんな線あったんだ」と思い、Googleマップを開けると、もうその線はない。ネットで廃線跡や廃駅跡の情報を読み、ストリートビューで確認すると、寂れた場所に記念碑や建物がある。そんなことを繰り返しながら読み進めた。
乗換案内アプリで最短ルートを調べ、スマホの地図を使って写真付きで、その場所のことがいつでもどこでも分かる時代である。昭和のオタク趣味の記憶は急速に薄れていくだろう。 -
国鉄全線、ニ万八百キロ完全乗車記録。圧倒的情報量。もちろんスケジュールはビルゲイツのごとく、すべて分単位で記されている。
著者が最も好きなのは鉄道の旅そのものではなく、時刻表を読むことであるようで、緻密なスケジュールを立てたり、列車の遅延によるスケジュールの崩れを機転と工夫により華麗に立て直すところには筆に熱が篭っています。
自分には時刻表をすき好む気持ちがあまり分からないので一歩引いた目線で読んでいたのですが、著者が感じた興奮そのものは幾らか受け取ることができ、読んでいて楽しかったです。 -
過程がすごく丁寧。時刻表好きならなお面白そう。
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国鉄全線乗り尽した記録です。
とにかく凄い!としか言いようがない一冊です。
著者が乗ったころの国鉄は一日に数往復しかない
盲腸線が非常に多かった時代です。
その時代に全線、乗り尽すなんて信じられない。
凄い、どころか、尋常ではない、どころか、もはや異常です。
だからこそ鉄道好きや旅行好きには非常にお勧めします。
鉄道で旅行することが大好きな私には非常に面白い一冊でした。 -
パラダイス山元さんの飛行機本に鉄道マニアのバイブルと紹介されており、手に取った本。1978年の本なのに色褪せていない感じ。
鉄道には全然興味ないが、何故だかすごく楽しく読めた。1分刻みのいかにもマニアックなところはふーん、と思いながらも読んでしまう。車窓からの風景の描写や、駅の雰囲気など、想像していると楽しい。最後の完乗のところで、時刻表を読むのが楽しくなくなって、完乗などしようと思わなければよかった、というのは共感できて少し寂しかった。