行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033545

作品紹介・あらすじ

「経済人」という特別の人々をご存知だろうか?禁煙や禁酒やダイエットに失敗するなんてことはありえない。しょっちゅう電車の中に傘を忘れたり、ダブルブッキングをして友人を不愉快な気持ちにさせたり、当たるはずのない宝くじに大金を投じたりはしない。経済活動を行なっている人、つまりわれわれすべてがこのような人物であるという想定の下で、標準的経済学は構築されている。感情などに振り回されない、超合理的な経済人を扱う経済学は、どこか現実にそぐわない。感情、直感、記憶など、心のはたらきを重視し、私たちの現実により即した経済学を再構築しようとする新しい学問、「行動経済学」の基礎を、詳しく解説。

感想・レビュー・書評

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  • 行動経済学とは何かを知りたくて購入した本。お勉強モードで読み始めたが、それにしても初心者にはちょい難しかったような気がする。それでも行動経済学の背景にある歴史や、豊富な実験例がわかりやすく示されており、時間はかかったものの最後まで読み通すことができた。特に第6章フレーミング効果と選好の形成、サンクコスト効果あたりは、非常に興味深い。マーケティングの視点からも、また消費者側の目線で見ても参考になる点が満載だ。

  • 日本で行動経済学が流行り出す前の2006年の刊行。おそらくその走りになった書籍のひとつだと思われる。決して未学者にわかりやすい書籍ではなく、ある程度経済学をかじっていたほうが理解しやすいかもしれない。今となっては有名な数々の理論や実験について紹介している。

  • 理系の私でも何やら行動経済学をわかった気にさせられるような、取っつきやすく読みやすい文書でした。

    ある条件でのみ厳密であるモデルよりも、厳密には不正確だがある程度あてはまるモデルのほうが実用的、ということの例示として、停止しているアナログ時計は1日に2回は厳密な時刻を指し示すことができるが、1分進んでいる時計は一度も厳密な時刻を示すことができない。という表現があり、なるほどなと思いました。

  • ・「国富論」(アダムスミス):だれもが利得の機会を過大評価し、損失の機会を過小評価する。
    ・リスクや不確実性が人間の経済行動に影響を及ぼす。
    ・ヒューリスティックスに対比されるのがアルゴリズム。手順を踏めば厳密な解が得られる。
    「大数の法則」:標本が大きい方が母集団の性質をよく表している。
    ・確証バイアス:いったん自分の意見や態度を決めると、それを裏付ける情報ばかりを集めて、反対の情報を無視したりする。
    ・人間の情報処理のプロセスは直感的な部分と分析的部分の2つから形成される。
    ・保有効果:ものや状態(地位、権利なども)を所有していると、持っていない場合よりもそのものを高く評価する。
    ・フレーミング効果:人はまったく同じ内容のものを見ても、状況や理由によって違うように受け取る。
    ・サンクコスト:過去に払ってしまってもう取り戻すことのできない費用。小さい子供はサンクコストに惑わされることは少ないが、年齢が進むにつれてサンクコスト効果が認められる。「もったいない」は日本語特有で英語にはない。
    ・人にとって選択肢が多いことは幸福度を高めるどころか低下させてしまう。
    ・人はなぜ将来の利得を割り引くのか。現在の自己と将来の自己は別の人間であると捉える。その関係は自分と他社の関係と同様であるという。
    ・ピークエンド効果:個々の経験を総合して全体を評価するのではなく、その最も強い部分と最後の部分の印象がきわめて重要、かつ出来事の時間的長さは無関係。
    ・間接的互酬性:他者に対して全行を施すと、それを受けた当事者ではなくグループの他の人から善意が返ってくることがある。=情けは人のためならず。
    ・コミットメント手段としての愛情の働き:配偶者を決めることや結婚生活を維持するような長期にわたる事業を合理的計算による契約や約束によって行うことは難しい。しかし、愛情を感じる相手を配偶者とすれば、当事者に長期的利益をもたらすことになる。
    ・恐怖という感情:瞬時に「逃げる」という行動をとらせる優れた装置。
    ・協力行動を発生・維持するには感情が強い力を発揮する。
    ・最もよく使うヒューリスティックスは多くのひとがとっている行動を真似るという「大勢順応ヒューリスティクス」
    ・協力行動が社会のメンバーにとって重要であり、そこで協力行動をするものが称賛される。

  • 人の行動は限定合理的であるという考え方の実例が多くあり、行動経済学の基礎を学ぶには良かった。
    もっと負荷方式してみたい。

  • いろいろな実験を企画するの楽しそう。
    それにしても、とことんマイノリティを選んでしまった。

  • 経済学と心理学がこんなに身近なものだったとは!
    経済学は脳をブラックボックスとして扱う。個人のインセンティブ、選好、信念がインプットで、行動がアウトプットである。

    おもしろーい。

  • 心理学が看板を付け替えて、ノーベル賞を取れるようにしただけの学問かと思っていたが、心理学と経済学の協働で成り立つことがわかり、割と好感を持った。
    標準的な経済学の想定する人間のあさましさが積み上げられた知見により違うと分かり、そのあさましさには根拠が欠けていたことがわかった。それに基づく政策が失敗するのも当然の帰結と思えた。

  • ずぶの素人にはなかなかに読み応えのある本であった。
    行動経済学の入門書ともいうべきもので、多くの事例を紹介して、興味深い。
    人間は合理的に行動をしていても、そこに何らかの諸要素(それが心理的なものであれ、社会的なものであれ、環境的なものであれ)に意識的、無意識的に行動を決めているとすれば、それがある意味合理的か。
    最後の方では脳の働きと関連を持たせており、新しい分野なだけにさらなる研究が進んでいくのでしょう。

  • 黄金の扉を開ける賢者の海外投資術で参照

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著者プロフィール

1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程退学。明治大学短期大学教授を経て、2004年より明治大学情報コミュニケーション学部教授。専攻は行動経済学、ミクロ経済学。主な著書・訳書に、『行動経済学ーー経済は「感情」で動く』(光文社新書)、『慣習と秩序の経済学』(訳書、日本評論社)などがある。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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