現場力の教科書 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037031

作品紹介・あらすじ

『経営戦略の教科書』に続く、人気授業「組織のオペレーション」を元に書籍化。「オペレーション」という言葉は、機械などの「操作」「運転」、あるいは作戦の「実行」などと訳されるように意味するところは広く、業界によってもニュアンスは異なる。しかし、全てに共通しているのは「オペレーション」を担うのは「現場」だということ。どんなに優れた経営戦略を立てても「オペレーション」、すなわち戦略の実行を担う「現場」が弱ければ意味がない。戦略と実行は一体だという認識が不可欠だ。本書は計18回の講義で構成され、毎回、具体的な企業の「現場」を取り上げながら「現場力」の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 最近私の所属する会社でも現場主義や現場力と言った言葉をよく耳にする。当たり前の事だが、利益の大半は現場(全国の営業所や支店など)で作られているから、私の所属する本社組織などは現場を徹底的に支援せよ、足を引っ張るなとの事。確かにそれには何ら否定する要素もないし、その方向で考えている。一方で現場の裁量は低く、徹底的にルールや権限は統制されており、尚且つ本社からの通達やらで次々とあれやれこれやれの指示の連発。これで本当にスピーディに対応できるのかと不安に思う。会社は社員にビジョンを指し示し、会社の使命や社会における存在意義を持ち、そして戦略や当面の計画を立てていく。社員にそれを浸透させるための全社会議などもやってみたりする。誰が見ても崇高な理念と、夢のある計画になっているが、最終的にはそれを実現するのは現場のオペレーションである。いかに崇高な理念も実現しなくては何も意味を持たない。実際はその様な企業は沢山あるのではないだろうか。
    この実践力に着目した講義を書籍としてまとめたものが本書である。
    現場力とは何かに始まり、その必要性及びそれらを高めるための考え方について、実際に成功している企業を例に挙げ、体系的に判りやすく伝えている。経営の参考書でもよく取り上げられる花王やトヨタの事例だけでなく、特定の分野で無くてはならない存在となった中小企業やローカルのスーパーまで多くの好事例を取り上げている。いずれの現場も最前線で闘う社員のボトムアップの取り組みから始まっていく。それが一方的に単発で終わらない様にする為には、トップダウンでその様な取り組みを推奨し、適切に評価する仕組み作りが合わさらなければならない。現場オペレーションと経営戦略は相互補完の状態にすることが重要だ。
    また単に推奨するだけでは、中々実施に至らず、社員個々に自発的・自主的・自律的なマインドを醸成する取り組みも必要になる。そこに何か決まった定型的なやり方は無く、それぞれの会社にあったやり方を探す必要性も強く感じる。
    その様なマインドの醸成に役立つのは社訓やクレドなどだが、これも単に決めるだけにとどまらず、現場社員一人一人が意識するよう会社が取り組む事が重要だ。
    昨今、働き方の自由度や、働き手のライフスタイルに合った就業体制がある事が、採用に際しても非常に重要度を増してきた。在宅ワークなどは当たり前、フレキシブルな時間管理も必要、更に個々のキャリアプランに合わせた能力開発も会社が押し付けるのでは無く、自発的に取り組むような制度作りも必要になってきた。就労人口が益々減少し流動化も激しい。その様な社会環境の中で、いかに社員のライフプランやキャリアプランに合った働き方を提供できるかは人材獲得に向けた難題である。
    現場中心の自発的な取り組み、組織の壁に囚われない横の連携、加えて経営に反映させる縦の連携。縦横無尽に活躍できる機会を現場に与えていく事、そしてその様な自発的社員を増やしていくための制度作りを行なっていく必要性がある。
    本書を参考にその様な現場オペレーションと経営の融合にチャレンジしたい。

  • 私は「現場支援をする事務方」だけど、どの様に支援するか考える時に、現場を想像する力も必要だし、何なら支援するという行為だってどんどん変わらなきゃいけない。私だってある意味現場にいるのだと思って読み進めてみた所、よい刺激を受けた。業務に活かしたい。

  • オペレーションが差別化要因になっている会社は確かにあると思う。戦略の実行に必須な力として現場力というものの定義と、その発生源と活かしかたについて整理されている。自社他社を見る際の新しい尺度になるのではないか。

  •  とある課題図書として一冊読みました。
     以前から感じていることがある程度体系的にまとめられていたので,納得できる内容も多かったと思います。少し立場が変わったということもあり,今のタイミングでこの内容について読み直して,考え直すのもよかったと思っています。

  • 経営戦略だ、管理会計だ、という話をしていると、つい一番価値を生み出す「現場」の大切さを忘れてしまい、机上の空論になってしまいがちだ。戦略も大切だが、戦略も戦術も推進力は現場にあることを忘れてはいけないと肝に銘じさせてくれる。現場力というとボトムアップばかりが言われるが、それを引き出すことこそがトップマネジメントだということもわかる。ただ個人的に言うとこの本は、『五能線物語 「奇跡のローカル線」を生んだ最強の現場力』や『現場論』を読むためにオリエンテーションとして読んだので、先に進みたい。

  •  経営戦略との両輪である「現場力」の構築と向上について、数々の事例を踏まえて論じた本。ビジネススクールの講義が元になっているので、各章ごとにポイントがまとまっていて読みやすい。

  • 経営者側が必要な”現場視点”について、トヨタ自動車やヤマト運輸等の取組み事例が描かれており、すべての企業に当てはまる訳では無いですが、とても参考になる書籍だと思います。

  • 具体的な事例も多く、体系的に整理されて述べているので理解はしやすい。
    ただ、現場力を生み出す風土づくりや人材育成を含めて考えると、実際には中小企業では難しい。
    即実践を考えている方には教科書的で物足りないと感じるだろう。

  • 「現場力の教科書」遠藤功
    現場型企業論。特になし。

    日本の企業の原動力は、現場力から生まれるものだ。ビジョンや戦略などのトップダウン経営ではなく、かといって現場任せの放任経営でもなく、強い現場をリノベートしていきましょう、という一冊。
    著者の遠藤功氏は最近名前を聞くことが多いように思います。
    うまくいった企業のケーススタディも重要だけれど、現場力の育成がうまくいかない理由、いま正に現場が停滞してしまっている理由を明らかにすることの方がより重要である気がします。
    現場力は大事。それはとてもよく分かります。
    でも、うまくいっていない大部分の企業が知りたいことは、「どうやったら現場力を手に入れることができるか」。
    QCサークルやカイゼン活動やTPM活動などは単なるツールで、それを有効に使えば効果があることは分かっていても、じゃあこの20年で疲弊した現場にどうやって再び植え付けたらいいのか。
    いまこそ再び中堅世代による現場力の育て方を考える必要があるのではないかと感じます。(3)

  • 経営戦略の教科書Part2
    早稲田ビジネススクール講義名「組織のオペレーション」を纏めたものです。
    自己否定、現状否定のマインドを持つ方、やたらお題目だけがいっぱいある会社にお勤めされている方、一生懸命仕事をしているのに業績に結びつかないという悩みを抱えている方などにお薦めです。

    以下ネタバレです。
    「はじめに」のなかで、『「現場力」という組織能力を回復させないことには、日本企業の再浮上はありえません。どうすれば「現場力」に磨きをかけ、もう一度強い「オペレーション」を構築することができるのか?この講義で学んでもらいたいのは、まさに、その一点にあります。』と語っています。

    感銘を受けた主なポイントを明記します。
    ⑴経営の三つ要素は「ビジョン(why)」、「競争戦略(what)」、「オペレーション(how)」
    ⑵オペレーショナル・エクセレンスが目指すべきゴールは二つ。「圧倒的な業務効率化によるコスト優位性の創出」と「新たな顧客価値の創造」。
    ⑶現場力という考え方は資源ベースアプローチという概念に立脚したもの。資源は「有形資産」「無形資産」「組織ケイパビリティ」。競争戦略とオペレーションの整合性、一貫性を担保することはポジショニングとケイパビリティの一貫性を担保するということを意味します。
    ⑷現場力を磨く目的は、「自律的問題解決能力」によって、競争相手にはない独自の価値を全員で生み出すことです。
    ⑸サービス業においては、戦略-サービスポリシー-サービスレベル-オペレーションという縦の一貫性が大変重要です。同様の考え方に「サービストライアングル」というコンセプトがあります。(サービス戦略、人、システム)
    ⑹現場を上手にあおり、その取り組みに関心を示し、時に一緒に汗をかく。現場力の厳選であるボトムアップの動きは、トップダウンの働きかけによってしか生まれないのです。
    ⑺現場で実践される「らしさ」を体現する連続的な「行動習慣」が、それぞれの会社の風土や文化を作りあげます。よい風土を持つ企業では、「らしさ」が共有され、実践されていて、それが独自の現場力を生み出しているのです。
    ⑻「場」でPDCAサイクルを回す。
    「らしさ」に裏付けられた行動習慣を身に付け、「人のプラットフォーム」をつくりあげるためには、「場」が必要です。
    ⑼褒める仕組みで現場力を高める。
    (10)「オペレーショナル・エクセレンス」を誇る企業には、ひとつの共通点があります。それは「自己否定」「現状否定」という思想が根付いていることです。
    (11)現場力という目に見えない力を湧き立て、推進するのはあくまでも「個の情熱」です。
    (12)実際に現場で問題解決に取り組む際には、「見える化」を軸とした「問題解決のPDCA」が、効果的です。
    (13)現場力を高めるための見える化。顧客、知恵、経営、状況、問題の五つ。
    (14)差別化につながるコア・コンピタンスを生み出すために不可欠な、基本的であるが、普遍的な組織要件こそが現場力です。

    上記の内容が主に感銘を受けた箇所です。また、それぞれの内容については具体的企業が紹介されており理解が深まりました。良書です。

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著者プロフィール

遠藤 功(エンドウ イサオ)
株式会社シナ・コーポレーション代表取締役
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て、現職。2006年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。2020年6月末にローランド・ベルガー会長を退任。同年7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動している。多くの企業で社外取締役、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。
株式会社良品計画社外取締役。SOMPOホールディングス株式会社社外取締役。株式会社ネクステージ社外取締役。株式会社ドリーム・アーツ社外取締役。株式会社マザーハウス社外取締役。
15万部を超えるロングセラーである『現場力を鍛える』『見える化』(いずれも東洋経済新報社)をはじめ、『現場論』『生きている会社 死んでいる会社』(いずれも東洋経済新報社)『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)『ガリガリ君の秘密』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー書籍多数。

「2022年 『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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