- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532261405
作品紹介・あらすじ
大量のゴミメールに、時間ばかり取られるパワポ資料。現場を忘れた技術者に顧客と会わない営業マン-生産性を向上させるはずのITに、みんなが振り回され、疲弊している不条理。深く、静かに進行する「IT中毒」の実態を明らかにし、組織と現場の力を取り戻す方法を解説する。
感想・レビュー・書評
-
2010年に『ネット・バカ』という本が一部で話題になりました。ネットが我々の脳をどう蝕み、どう変えていくのか、その影響について書かれた本です。
本書はそれのビジネス版とも言うべき本。『ネット・バカ』と比較しても、厚さも文章も遙かに読みやすいので、まずはこちらをお読みになるのをオススメします。
「ネットをしてるとバカになります」というのをいつかどこかで聞いたんですが、ネットが僕らを蝕むこととしては大きく二つの点が挙げられます。
一つは、自分で考えなくなることです。ネットがあると、何か問題があったときもすぐ検索してしまいます。自分の頭で考える前に、”答え”を見るという楽な方へ走ってしまいます。最近では2ちゃんのまとめサイトなど、ニュースとそれに対する反応までまとまっていて、はじめから答えが書き込んである計算ドリルを使っているようなもんです。
知らず知らずのうちに僕らは自分で考えることを億劫がるようになり、気づかないうちに「思考体力」が恐ろしく減退しているだけでなく、間違えることを恐れるようになるという心理的な問題も発生します。
もう一つは、「情報肥満」から「情報中毒」になるということです。パソコンやスマートフォンをいじってるとあっという間に時間が経ちませんか? 特にSNSをやってる人は、何か書き込むと返事が気になってずっとブラウザを開いたり閉じたりしてて、気づいたら1時間や2時間はすぐ経過していた、なんてこともありませんか?
「情報肥満」というのは、明らかに情報過多な現代の、特にネット社会において、消化できる以上の情報を抱え込み、接し続けている状態を言います。そしてそれが常態化すると「情報中毒」になり、知らぬ間に自分の大切な時間を湯水のように浪費しています。
ビジネスの場では、ITがもたらす弊害がこれでもかというくらい指摘されています。ITってコミュニケーション・ツールでもあるはずなのに、本質的な部分において肝心のコミュニケーションが全然機能しなくなるというのは笑い話のようにも思われますが、かつて「ネットが社屋だ」と謳っていた組織でのコミュニケーションがことごとく機能不全に陥ったことを思い返すと、個人的には笑えません(その代わり、激しく合点しました(笑))。
ネット中毒を断ち切るには、やはり手書きだったり現場・現物だったりと、旧来のアナログなものに接するのが一番のようです。本書でもそのような指摘がなされています。
僕自身、編集・整理の利便性から、一時期メモのまとめなどを全部パソコンでやっていました。が、手書きに変えてからの方が頭に残るようになりました。「天空の城ラピュタ」で「人は大地を離れては生きていけない」って言ってましたが、人は自分の身体を切り離しては生きていけないんです(だから、『攻殻機動隊』も、実は脳以外全部ごっそり入れ替えちゃった少佐は、だんだん人格が変わると思うんです。が、これは余談)。
何となーく時間がない、毎日仕事が無駄に忙しい、そう言えば最近あまり本を読んでいないような気がする…などと感じた方は、是非一読してみて下さい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
仕事の効率を劇的に改善してくれるはずのITが、昨今では業績低迷・職場のコミュニケーション崩壊の元凶となりつつあります。本書では、IT導入がどのように日本の職場を蝕んできたかをまず説明し、その上であえてITを絶つ事によって、かっての職場に存在した「良質なアナログ業務」を取り戻す事を推奨しています。
-
作者の一人、山本孝昭氏は、ドリーム・アーツ代表取締役で、1988広島修道大学を卒業している。
ITの職場だけでなく、一般的メールに追われ、ネットに追われ、その処理だけで数時間を過ごしてしまう。お詫びの一言もメールで済ませてしまう。電話や直接訪問するより、パソコンとにらめっこの時間の方が長い。
どうしてそうなってしまうのか。人との直接対話ができない人種。
そこで作者は、IT断食、つまりIT(メールやネット)を使わない日や時間を作り、人と話をし、外に出る。
前半の職場での事例はとても面白く、結構現実にある話かもしれない。
(図書館) -
ITによるデメリットについて述べてある。
例えば、情報の肥大化により行動が弱体化するだとか、コピペばかりで自分で考えるというプロセスが抜けるといったものなど。
例えば、メールのCCにとりあえずみんな入れとけというものが、見なくていい人にまで判断の時間を要することになり不要な時間を作ってしまう。
また、世代間によるIT中毒の副作用やその対処法を述べている。
対処法については現状を理解し、ワークスタイルの新しいルールを作ることを推奨している。 -
◎ポイント
①情報の氾濫
②良質なアナログ時間の削減
③本質的な効率と創造力の欠如
◎具体例
①
・ICFとBLT
・メールは送り手偏重の手段
・価値の低い情報を拡大再生産
・ストレスや災難から遠ざかりたいという防衛本能からくる責任回避のシステム
②
・プロの魂、職人技をすり減らす
→現場の判断より本社の数値が重要視
・2:6:2→2:8 中間層がローパフォーマーへ
③
・コピペばかりで自分の考えがない
・膨大なデータ分析が生み出す当たり前すぎる結論
◎対策
①メールの分析
②パソコンを利用している時間を調べる
③会議の調整の時間を調べる
④PDCAを粘り強く回していく
⑤経営トップから明確なメッセージ
⑥見える化する
⑦三現主義(現場・現物・現実)に関わる時間がどれぐらいあるか
⑧一番大事なやるべきことから天引きする
⑨強制的に道具を排除
→部署で共有のパソコンに制限
→ノーPCデー 電子メールデー
11 CCにルールを設ける
12 資料に上限をもうける
13 出張を増やす IT予算のムダを省く
14現場の状況把握やアイデア出し、提案への場作りがミドルの役割
15 ミドルに求められる点は「対話」
◎ヤマトの現場力
・震災時の会社のルールと現場の判断
・全員経営→お客様視点をもち常に自分が出来ることは何か判断し行動すること
・サービスは先、利益は後→世の為、人の為の経営
◎ダイキン工業のワイガヤ
・情報共有の仕組み
→ワイガヤを支える仕組みに シンプルに入力の手間を省いた
→24時間以内に目的、概要、所感
・年間15回以上行う合宿
→情報共有の場からアイデア出しの議論をは -
パソコンは電卓のちょっと上等なもの
-
大変参考になりました。
-
IT企業の社長がなぜIT断食を勧めるのか。冒頭のメールや会議資料づくり、報告書作成に振り回される社員たちの例が、リアルすぎて笑えない。せっかくのIT投資も上手に活用できなければかえって事業を阻害する。とても勉強になります。