奇想、天を動かす―長編推理小説 (光文社文庫 し 5-20)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334716622

感想・レビュー・書評

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  • 考えさせられる後味ある作品でした

  • 読みやすさ ★★★★☆
    驚愕度 ★★★☆☆
    読後清涼感 ★★★★★
    脳内映像度 ★★★★☆
    没入度 ★★★★★

  • 再読。
    本格ミステリと社会派の融合を味わう。

    消費税のために起こったとされる殺人事件に隠された、ある男の人生を探る社会派的側面から、消えるピエロ、動く死体といった、遥か昔に起こった列車での一連の不可思議事を解き明かす本格ミステリ的側面までを、見事に織り交ぜた長編。

    島田荘司ならではの不可解さを帯びた出来事を、吉敷刑事が社会派的テンポで解き明かしていく姿は心地よいBPMで読みやすい。

    ただ、解決編のテンポがいわゆる"名探偵によるワンパン"ではない上、社会派の部分でも同情を誘う度合いが時間的障壁等の関係から薄くなるため、読みやすい分強烈なインパクトはなく、一読で満足する印象。

  • 壮大なトリック

    島田先生の意味不明な現象が徐々に明かされていくの本当に好き

  • 相変わらずの島田節というか、幻想パートの筆力と比べて、物理トリックが物理的に無理すぎて微笑ましくすら思えてくる。
    メイントリックは、走っている列車のトイレに設置した人間の頭部・腕部に紐をつけておいて、それを引いて回収することで、短時間の間に消失したように見せかけるというものだが、引いている主体は車体の上にいる。滑車を3つほど仕掛けないと無理ではないか。
    島田が本当に書きたかったのは、犯人の「サーカスや刑務所での悲惨体験」かもしれないが、どう考えてもサーカスや刑務所が悪いので、その恨みを「自分を捨てた女」にぶつけたこともどこか釈然としない。

  • ダイナミックなトリック。乱歩っぽい風味のところも好み。

  • 自殺したピエロは密室から姿を消し、首無し遺体は突如として動き出す。そして天に向かって飛び跳ね脱線する列車…
    奇天烈な事件の数々に解決の糸口すら見出せない。どうしたらこんな難解な謎が解けるのだろうか。物語の主人公はもちろん、読者ですら同じ思いを抱いてしまう本書。少しずつその謎が解き明かされ、全貌が明らかになる展開に、ミステリー特有のワクワク感を楽しむことができました。

    本書はそんなミステリーでありながら、冤罪や戦中日本が起こした暴挙などに目を向ける社会的な側面もあります。解説を読むにむしろこの社会的な側面こそ重視されたようですが、ミステリーと社会性が絶妙にマッチした作品でした。

  • なるほど。島田荘司らしい、ドラマチックで派手なストーリーだった。タイトルも含めて。
    吉敷シリーズの傑作をつまみ読みした中で、本作品が一番好き。

    浮浪者が12円の消費税を払いたくなくて女店主を発作的に刺した、という一見下らない事件の、隠された背景に迫るストーリー。いわゆるホワイダニットになるのかな。
    真相が明かされたところで、浮浪者が女店主を刺した、という事件の表層は変わらないんだけど、昭和の闇の犠牲になった哀しく壮絶な背景は、読み応えあった。
    死体が消えただの轢断死体が歩いただの白い巨人が云々だの、昭和三十二年の北海道札沼線に起こった奇天烈としか言いようのない事件は、これさすがに合理的な説明無理だろ、と思った。
    (車内トイレの便器の穴は人の頭だけなら通るってことでいいのか)
    桜井佳子はクソ女だけど、呂泰明が殺されたことは知らずじまいだったんだろうなぁ。

    平成という年号が出てきて、昔の小説だと思っていた吉敷シリーズが一気に現代に飛んできたような錯覚に見舞われた。って言ったって平成元年はもう三十年以上前だった。
    携帯電話ないし。
    吉敷は確かに有能な刑事だけど、それより牛越の優秀さが光った。久しぶりって言い合ってたけど自分が読んだ吉敷シリーズに牛越全部出てきたから、自分的にはすっかりレギュラー。

    ミステリの多くは事件の捜査が進むと第二の殺人とか起きて連続事件に発展するのに、吉敷シリーズは事件は事件として最初に完結してるところと、捜査で浮かび上がった断片的な事実をもとに吉敷が力技で推理しちゃう強引さが、却って新鮮。
    足を使った地道な捜査は、民俗学のフィールドワークに通じる。
    でも、吉敷は正義感からというより自分が納得できないからという自己中心的な理由で動いてる気がして、そこのところはちょっと苦手。

    吉敷は相変わらず生活感のないイケメン設定だけど、今回は外見の描写がほとんどなかった。吉敷、歳取ったね…

  • 壮大でトリッキーな本格ミステリと、重く心に沈む社会派が融合した渾身の一作。

  • 前半は読みにくかったけど、途中からこれどう決着つけんの!?って気になって気になって。
    なんかよくわからんけどとにかくすごい、って感じ。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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