奇想、天を動かす―長編推理小説 (光文社文庫 し 5-20)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334716622

感想・レビュー・書評

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  • 警視庁捜査一課吉敷竹史ものの傑作。有名なトリックでドラマや漫画でもパクられているが話の作り方がオリジナルだけに素晴らしい。島田荘司は時に社会派ミステリを書きたがりますが、読者にはどうでも良いことで、どの方向に進んでも奇想があれば面白さは保証される。

  • これシリーズものだったのね。
    でも単体でも楽しめる作品なので
    あまり気にしなくても大丈夫。

    すごく突き刺さる作品でした。
    事件の怪奇さもそうだけれども、
    その殺人の裏には不条理も不条理な歴史が
    隠されていたわけで。

    そんなことしないと、と思う人たち。
    この登場人物の真相を
    よく見てごらんなさい。
    嫌悪を示す人もいるでしょ。
    所詮そういうことなの。

    でもね、便田のようなクソッタレとか
    主任のようなうんこはどうにもならんよ。
    木そのものを見ようとしないやつね。
    こいつらがいる限り人は争うばかり。

    決して解決しても
    満足感は得られない作品。
    ただ、たった一人の刑事が
    その男の悲しき心の内を
    見透かしてくれた…

  • 島田荘司はすごい。冤罪、強制連行という社会的な問題を取り上げながら、物語をうまく奥深くさせている。それでいてどんどん読ませる。描写が巧みだから、それぞれのシーンをありありと想像できる。結末はやるせないけど、壮大な物語を大いに楽しめたし、島田荘司の文章力に感嘆した。

  • 本格と社会派の融合、まさに奇想が天を動かす名作。およそ不可能に思える死体消失や白い巨人の謎。そして消費税導入に際した衝動的殺人と思われた事件の背後にある深く長い苦痛と執念の物語。あまりに奇怪な謎が、社会的テーマを取り込みながら一挙に解かれていく様が見事な作品だった。「本格」部分にあたる謎解きはそう難しいパズルではないが、そこに社会的テーマや時代、風土の「ドラマ」が織り込まれることで非常に重厚感のある物語になっている。作者の個人的想いが投影され過ぎたきらいがあるが、それが登場人物を立体的にしている。

  • 2度目の読了。

    私は最初に読んだ時は吉敷シリーズのみならず
    島田氏作品の中でベストだという思いだった。

    2度目だから、当時ほどの感動はなかったものの
    やはりいい作品だなという思い。

    社会派ミステリーと本格ミステリーの融合
    という捉え方になるかもだが、
    どちらかというと「弱き人」への思いが
    生んだミステリーという思いがした。

    市井に暮らす虐げられた人の悲哀を
    本格ミステリーとして昇華しきったところに
    この作品が生まれたのかなと。

    いろんな人に読んでほしい作品。

  • 密室から消えるピエロの死体、脱線事故を引き起こす白い巨人、動くバラバラ死体…。不可能としか思えない難攻不落のピースを、理詰めで解決する様は圧巻です。
    そして、その事件の裏にある社会的背景へのやるせなさが強く読者に訴えかけます。本格ミステリーと社会派ミステリーが見事に融合した傑作で、数ある著者の作品群の中でも間違いなく5本の指に入るクオリティーだと思います。

  • 89年の作品。十数年振りに再読。面白かった。
    元々島田作品は御手洗シリーズよりもこの
    吉敷シリーズの方が好きだったし、今作は
    色んな意味でやはり傑作。そもそもタイトルから
    素晴らしい。

    ホームレス老人が導入されたばかりの消費税の12円
    (当時は3%)を請求された事で、乾物屋の女性主人を
    刺殺...という事件から端を発し、吉敷が探し当てた
    事件の背後に潜んでいた大きさと真相の仰天さは
    ピカ一の...まさに奇想で奇作。

    走行中の列車で起きた、謎のピエロ男の自殺、
    そしてその遺体消失、列車飛び込み自殺、そして
    その遺体が動き出す。さらに、「白い巨人」による
    列車転覆事故...ミステリ的には充分なネタと
    意図してゴリゴリの社会派としての問題を
    融合させていながら、危ういバランスで
    両者を成立させた力技に拍手。
    賛否両論あったようですが、自分は支持派です。
    人がある想いを胸に秘め、自分自身がその
    想いに誠実だった結果がここにある。
    だからこそ今作が完成したのですよ?きっと。

  • 想像していたよりも重くどっしりとした作品だった。
    最初はトリックに期待して読んでいたが、徐々に刑事に感情移入したり捜査の過程で出会う昭和を生きてきた人達の思いのようなものに心を奪われた。

    トリックの部分に関して言えばそんな事とっさに思いつくか、なぜそこまでの事を実行したのか、という腑に落ちない点はあるが、少しずつ事実が判明していく様子はとても楽しめた。

  • 面白い面白いといわれてるだけあって面白かった。
    島田にしてはまだまだ王道だし。
    トリックも良かった。
    ちょっと最後のほうは無理矢理言いたい事詰め込みました!感がして冷めちゃうけど……(読む人が読むとそうでもないんだろうけど)
    なんか脈絡ないというか。

    ただまあ、やっぱり私は御手洗シリーズ特有のぶっ飛び加減が好きなので、吉敷シリーズは今のところこれだけですねー。

  • 吉敷竹史モノ(通子とは関係ない)の最高傑作と聞いて読んでみました。消費税が元で老人が店主を殺害。と思われたが、吉敷は納得できず老人の過去を洗ううちに、過去の大がかりな犯罪に行き会う。これも「占星術殺人事件」と同じでマンガ「金田一少年の事件簿」がトリックを拝借。先に「金田一少年」を読んでいたので、「あ、これあのトリックだ!」と気付いてしまって十分堪能できませんでした。吉敷はなんか正義感が強いヒーローというより、底の浅い信念を振りかざして自分だけが正しいと思ってるような印象でどうしても好きになれない。もうこれ以上読まなくていいや、と思いました。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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