奇想、天を動かす―長編推理小説 (光文社文庫 し 5-20)

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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334716622

感想・レビュー・書評

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  • 電車の中なのに泣いてしまった一冊。

  • ちゃんとワクワクしながら最後まで楽しめたので★4つ。

    浅草で、老人が店の女主人を刺殺した。一見、消費税分の12円を催促されたことに腹を立てた老人が思い余って殺してしまったように見えるが、この老人と女主人との過去を吉敷刑事を追及するという話。

    舞台は北海道。謎は5つ。
    ・札沼線の1両目が突然上に持ち上がり脱線事故を起こす
    ・ピエロが札沼線のトイレで自殺するが30秒後に死体が消える
    ・札沼線に飛び込んだ人間の死体が歩き出して最後には消えてしまう
    ・同時刻、函館本線で暴力団組員が銃殺されるが犯人が挙がっていない
    ・脱線時赤い目をした白い巨人が現れた

    小説では上記5つとは違う謎を提示しているが、わたしはこの小説の解くなぞは上記5つであると思う。きちんと最後には現実的(?)なオチがつくのだが、最後の白い巨人だけはどうも...???という感じ。

    え、そういうオチでいいの? ずっと謎だったのに??と思ったけれど、兎にも角にも、そこそこ複雑でそこそこ丁寧・緻密で、読書というものを楽しめた満足の一冊。

    戦前戦後における日本人の朝鮮への仕打ちに対する慚愧や、急成長を遂げる日本社会の中で犠牲となった冤罪の被害者達。そういう側面もあったので社会派小説とも表現されているようだ。

    でも、もう島田荘司はいいかなぁ。とも思った。やっぱり懐かしい感じが目立ってしまう。

  • 社会派ミステリー。
    解説で述べられている島田荘司さんの作品への姿勢が良かった。

  • 社会派ミステリ。

    吉敷シリーズは初めて読んだ。

    巨大な犯罪の構図,トリック...とにかくすごい。

  • 素晴らしいとしか形容しようがない!事件があまりにも奇妙で不可解、謎だらけ。それが徐々に真相に近づいていく様にミステリー小説の醍醐味を味わえる。犯人の素性、生い立ちに絡む社会的メッセージも話を更に興味深くしている。島田荘司の作品でもっと評判が高いと思われる「異邦の騎士」「斜め屋敷…」「占星術…」よりもこちらの方が断然面白かった。

  • 久しぶりに本格ミステリーを読みきったって感じですね!
    本格ミステリーなのですが、冤罪などの社会ミステリー要素もあって、なんだか松本清張の本を読んだようです。
    消費税12円のために、なぜ殺人をしなければなかなかったのか?という謎から、かなりの壮大な事件の背景が隠されていて、その内容がかなり深くて、どっぷり島田ワールドにはまりました。

    • kurizoh7さん
      trade-windさんの洞察力には感服です!私もなぜ呂泰永が桜井佳子に問いただすことなく、いきなり殺人に走ったのか?というのが分からないん...
      trade-windさんの洞察力には感服です!私もなぜ呂泰永が桜井佳子に問いただすことなく、いきなり殺人に走ったのか?というのが分からないんですよね!キーワードは弟の殺人に使用されたドスから想像したか?弟が絶命する前に桜田佳子に裏切られたことをほのめかしたか?といったあたりでしょうかね?短絡的な考えで済みません。
      2013/02/01
    • trade-windさん
      kurizoh7さん、長い話になってしまったのに、お付き合いいただきありがとうございました。面倒くさいヤツですみません。これで終わりにします...
      kurizoh7さん、長い話になってしまったのに、お付き合いいただきありがとうございました。面倒くさいヤツですみません。これで終わりにしますね♪

      kurizoh7さんのお考えはぜんぜん短絡的じゃないですよ。結局、この作品の問題点はそういったことを作者がきちんと書いていないことだと思うんです。
      書いていないからこそ、殺人を選んだ呂泰永の動機に疑問が生じてしまうんです。
      それに、犯人の動機が非常に重要な事件だと吉敷刑事は確信しているにもかかわらず、「呂泰永は桜田佳子の裏切りをどうやって知ったのか?」を調べないのもかなりおかしいですよ。そうなると、吉敷刑事が上司に反抗してしまったのも、かなり思慮が浅い行動だったと言わざるをえません。調べてもわからないですが。だから、呂泰永本人から聞き出さなくちゃダメですよね。
      最後に、女は裏切ったといっても、弟の呂泰明が殺されることになるなんて夢にも思ってもいなかったはずですよね。ただ、兄弟を利用してサーカス団から夜逃げしたかっただけですよね。脱走に成功したら、弟の呂泰明をフルつもりだったのは確かですが。源田組のチンピラの話によると、事件は突発事故に近いような状況でもありました。それらのことを鑑みて、さらに聞き込みで得られた呂泰永の人柄も考慮に入れると、「殺す」というのはどうも……

      島田荘司作品はどれも大好きです。でも、時々こんな感じの「あれっ??」があるのも確かです。何冊も読んできた今は、そんなことも含めて大のお気に入りになっているんですが。
      2013/02/02
    • kurizoh7さん
      trade-windさん、このやり取りで核心の部分が解明されないままで終わっていたのだということが分かり、改めて考える機会ができたので、とて...
      trade-windさん、このやり取りで核心の部分が解明されないままで終わっていたのだということが分かり、改めて考える機会ができたので、とても有意義でした!
      これから他の島田作品を読んでいこうと思ってますので、また鋭い指摘をお願いしますね!
      2013/02/02
  • 中学生くらいの頃読んで、文章とはこれほどの力を持っているのか、と感銘を受けた作品。文章力の真髄を見ました。世界で一番好きな本です。これを超える本には未だ出会っていません。

  • 「奇想、天を動かす」
    浅草で浮浪者風の老人が、消費税12円を請求されたことに腹を立て、店の主婦をナイフで刺殺した。だが老人は氏名すら名乗らず完全黙秘を続けている。この裏には何かがある。


    伊坂幸太郎氏が大好きだという作家・島田荘司。恥ずかしながら、名前は聞いた可能性はあるだろうけど、代表作もどんな作風なのかも全くピンとこない、それが私でしたw。しかし、伊坂氏が貪り食うように読んだ島田荘司の小説は一体どんなものだろう?と思い、「奇想、天を動かす」を手にとってみた次第です。そして、読んでみると、まぁ面白い。


    消費税に腹を立て店の主婦を殺した老人は、小柄な浮浪者風で、電車でハーモニカを黙々と吹き、誰に何を言われようとも何も発せずに、にやっと笑う。この老人は、明らかにボケている。多くの人間がこの老人が主婦を殺害する場に出くわしたことから、警察はこの老人の罪をさっさと確定させようとする。


    しかし、警察の尋問に何も答えず黙秘を続ける老人に捜査一課の吉敷竹史が、違和感を感じ取る。そして、東京、静岡、北海道を場を変えながら、この老人の過去、そして動機を洗い始める。そして、彼の背後には、消費税問題どころではない、過去数十年に及ぶ巨大な犯罪の構図が隠れていた。


    そんなお話です。この流れは、今で言う本格派ミステリー(「新」が頭に付くのか?)の王道。というか、新本格派推理の先駆けにあたるのが、島田氏ということなので、これこそ王道の最初の王道。しかし、この「奇想、天を動かす」の凄いところは、新本格派推理だけではなく、そこに社会派要素を取り入れていることです。


    奇想が生み出した過去の様々な出来事が老人の完全黙秘にどう関係しているのかを、吉敷が一歩一歩かなり苦戦しながら紐解いていきますが、彼が対面するのは、それだけではない。彼が本当に対面しなければいけないものは、白い巨人「日本政府」だった。


    松本清張の小説のような、社会派と新本格派が綺麗に融合した小説、それが「奇想、天を動かす」。全く、凄いな。ちなみに、私が一番印象深いのは、吉敷竹史が老人に対して、「あなたは凄い、尊敬する」というところです。


    警察の人間としての無力さを感じ、人間的欠落を抱えている人間(吉敷の上司や老人を狂わせた警官など)が威張りくさり、人間として尊敬されるべき老人のような者が排他される現実に、心を怒らせ、悲しんだ吉敷が放つこの言葉は、とても重い。


    傑作w

  • このトリックは秀悦!
    刑事の最後の言葉に泣かされました。

  • 発端は、消費税を支払うことを要求された浮浪者のボケ老人が、怒って店主を刺したことである。その後、刑事がこの事件を調べるにつれて、その浮浪者はボケてなく、単なる衝動的な犯行ではないこと、その動機が何十年も前の奇怪な殺人事件にあることなどが明るみになっていく。面白かった。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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