故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫 Aロ 5-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751791

感想・レビュー・書評

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  • 上海旅行の予習にと読んだ。「阿Q正伝」以外は未読だったが、その漱石や芥川からの影響の大きさに驚いた。自然、動物への目線や登場人物の苦悩は漱石のそれを思わせた。個人的には「藤野先生」がベスト。

  • 表紙がすてき

  • 故郷/阿Q正伝/藤野先生/狂人日記

    教科書でお馴染みの魯迅。故郷と藤野先生は別の訳で読んだことがあったが、改めてきちんと読んでみると、また違った印象。前はこの物語に潜む悲しさというものを、解説されても分からなかったけれど、今は違う。

  • 魅力的な語り口。

  • 中学(高校かも?)の国語の授業で登場した魯迅の「故郷」。
    まさかこうしてここでめぐり合うなんて・・・。

    新訳とあって、こうも変化するとは思わなかった。イイ意味で。
    読んだことのない小説を読む如く、みずみずしさが残る。

    本書はその「故郷」を含んだ魯迅の短篇集。
    有名ところの阿Q正伝、狂人日記なども収録されており、当時の中国の背景、日本との関係も踏まえて、小説を通して垣間見ることができる。

    革命だのなんのと時代が揺れうごめく中に、筆者が感じた痛烈な批判的な要素も含んでおり、救いがないような作品の中にも、今後の「良い未来」として変えていかなければいけないといった思いも託された作品が多い気がした。

    作品の中でも、僕が学生時代の時に授業で取り上げられた「「藤野先生」が思い出深い。
    筆者が日本に留学していた時の自伝的な小説であり、先生と留学生との交流を描いている。

  • 内田百閒の随筆のような印象を受けた

    どうしようもない人、出来事を淡々と描写していく。いつでも、どこでも、こんな人達はいるんだろうなーって思わされる
    日本の事も書かれていて、微妙な距離感を感じた

    魯迅は人中心で描くが、内田百閒は人も出来事も描く

  • なんか国語の教科書を読んでいるような気分だった。
    その当時の中国の背景が分かればもっと理解が深まったのかも。

  • 阿Q正伝と狂人日記のみ読了。

    阿Qは本当にどうしようもない奴。当時の中国の実態を知ることができた。

    魯迅は阿Qに中国を映し出したとされている。阿Qはからかわれてもまったくやり返すこともなく、「結局俺は息子に殴られたようなもの、今の世の中、間違っとるよ……」と自分で満足してしまう。阿Qは言動が自己中心的で他人を思いやる心が欠けている。周りの空気に影響されやすいが空気は読めない。革命党に入ろうとするが何も考えていない。素直すぎて簡単にだまされてしまう。相手の考えていることなどお構いなしで自分のことしか考えず行動する。

    阿Q正伝は、列強諸国にほしいままにされているにも関わらず、個々の利権にこだわるあまり、改革が意味のないものになっている中国を批判したものであることがよくわかった。現代の日本政府の体質と阿Qの共通点も見つけることができた。阿Q正伝に漂うどこか物寂しい雰囲気は、震災から復興に向かっている日本での政府や東電の腐敗を嘆く民衆の寂しさに通ずるところがある。阿Qを反面教師にして日本を見つめなおすためにも、今、阿Q正伝を学ぶ意義は十分にあるだろう。

  • 孔乙己や阿Q、そういった人物は真剣に世界との関わっているけれども、その関わり方がズレている。そのズレが産み出す悲喜劇。
    孔乙己や阿Qは、決してそのズレに気付こうとしない。この「ズレに気付かない」ことが恐ろしい。

  • 表題作、『故郷』について。

    疲弊する中国の田舎と変わり果ててしまった自分にとっての英雄が、魯迅自身の体験として語られている。

    時が経つと、自分自身に様々なものが付け加わる。望もうと望むまいと。それは社会的地位だったり、名声だったりする。一見するとそれらは素晴らしいものであるが、逆にそのようなののせいで、幼少時代に分け隔てなく接することのできた親友と疎遠になってしまうことがあるのかも知れない。大学生の自分にとっては、そういう経験をするにはまだ早いのだろうが。

    魯迅の幼少時代の親友、潤土は魯迅にとって憧れの人間であった。インドア派な魯迅とは対照的に、潤土は外で遊ぶことを好んでいたため、魯迅は潤土から自然界にまつわる様々なことを教えてもらった。両親の地位こそ違えど、潤土は魯迅にとって、自分が知らない知識を授けてくれる、英雄のような存在であった。

    しかし大人になり、魯迅は都会へと出ることになる。魯迅は都会で文人として、また思想家として名を成す。一方、潤土は田舎にとどまり、つつましい暮らしを続ける。

    長い年月が過ぎた後、魯迅は帰郷する。そこで再開した潤土に、かつての輝きはなかった。疲弊しきった地方で暮らす潤土はみすぼらしく、卑屈であった。魯迅に対する話し方も、まるで主人に対するそれであり、よそよそしさが感じられる。

    ここで魯迅は、二人の間に決定的な溝ができてしまったことを感じる。それは意図したことではないし、誰が悪いというわけでもない。身分の違いと住んでいる場所の違いから来る、不可抗力ではあるが悲しい溝である。

    結局、魯迅は潤土にいくばくかの家財道具を分け与えた後、故郷を去る。そこに至って魯迅は、自分が実は潤土を軽蔑していのではないかと考え、自己嫌悪に陥る。

    魯迅の深い悲しみの念が、抑えた文章から伝わってくる。自分がどんなに相手を親友だと思っていても、そのままの関係を続けることは、立場が、身分が、時の経過が、それを許さない。それは仕方のないことなのだろう。どんな形であれ、現代の我々にとってもきっと訪れることだ。

    今のうちに読んでおいて欲しい。まだ遠くても、「そういう」時が来たときのために、「そういう」悲しみを知っておくことは必要だと思う。

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著者プロフィール

本名、周樹人。1881年、浙江省紹興生まれ。官僚の家柄であったが、21歳のとき日本へ留学したのち、革新思想に目覚め、清朝による異民族支配を一貫して批判。27歳で帰国し、教職の傍ら、鋭い現実認識と強い民衆愛に基づいた文筆活動を展開。1936年、上海で病死。被圧迫民族の生んだ思想・文学の最高峰としてあまねく評価を得ている。著書に、『狂人日記』『阿Q正伝』『故郷』など多数。

「2018年 『阿Q正伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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