罪と罰 (3) (光文社古典新訳文庫 Aト 1-9)

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  • / ISBN・EAN: 9784334751845

感想・レビュー・書評

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  • ようやく読了。長かったけど最後の方は展開が早く一気に読んだ。面白かった。ラスコーリニコフの心情描写の細かさはまさに芸術的。ポルフィーリとのにらみ合い、腹の探り合いが味があって面白い。
    ラスコーリニコフの狂信的な信念からの犯罪、自白という泥沼状態からソフィアとの愛によって浄化される様は圧巻。ラズミーヒンとドゥーニャの兄に対する愛もまた暖かい。
    それにしても世の中を変えてきた革命者が多くの死者を生み出しても罰せられず歴史に名を残してきたのに、凡人は罪を犯したら必ず罰せられるという理不尽な世界の有り様を問題提議している。罪とは一体なんなのか?愛する人を悲しませる行為をずっと心の底から涌き出てくる後悔という形で抱えてきたラスコーリニコフの描写が一つの答えなのかもしれない。

  • 1巻と2巻は2週間くらいかけて何とか読み終えたけど、この3巻は朝から晩までかけて1日で読み終えてしまった。
    今さっき読み終え、まだ虚無感が残っている。今まで読んだ本の中でトップクラスに心にズシンと来る1冊だった。
    色んな知識人がこの作品をべた褒めしてるから、そのバイアスがかかってるとは思うけど。

    登場人物が全員好きだった。
    ルージンも勿論悪役で性格も悪いんだろうけど、動機はどうであれ、主人公と揉めなければいい人で終わりそう。現実世界でいい人だと思われてる人でも、ルージンみたいな人沢山いるんだろうな。心では相手を見下してる人。

    スヴィドリガイロフもいいキャラしてた。突然現れた謎の人物。心の魂胆を見抜かれ主人公と対立するけど、最終的にはドゥーニャに拒絶され自殺。小さい子を助けたりしてる描写から、ルージンみたいな心からの悪人では無いんだろうね。
    本当に妻を毒殺したのかどうか、彼の自殺に至るまで心理プロセスなど、まだまだ読み取れてない部分も沢山あるので、時間と気力があればまた考察してみたい。多分しないと思うけど。

    結局ナポレオン主義は間違ってたのかな?それとも間違ってる間違ってないとかの次元の問題じゃないのかな?
    エピローグの疫病の話から読み取れるように、みんなが皆ラスコーリニコフみたいな考えになったら世界は崩壊する。
    選ばれた人間というものが神様によって明確に教えられていれば、このシステムは正しく働く。
    でも功利主義的な考えが常に正しいとは限らないし難しいね。

    ラスコーリニコフが警察署で自首するシーンが自分の中でピークだったから、エピローグは個人的に蛇足だった気がする。自首するシーンで心臓バクバクだったのに、心が安らかになっちゃった。
    まあ主人公の再生のの気持ちが見れたのは嬉しいし、あった方が作品として綺麗に終わるのは分かるけど。

    他にとカテリーナさんの発狂シーンや、ラスコーリニコフの「協同組合」の看板のシーン等々お気に入りのシーンが沢山ある。
    付箋を貼っておいたのでそこだけでもまた読み直したい。

  • 再読
    エピローグでのソーニャの存在が際立っている
    エンディングもとても良くて、訳の良さなのか全体を通じて小難しい文学という感じではなく、物語にしっかり入り込めた
    自分としては、罪と罰は、この光文社版が一番好き

  • エピローグの最後の段落を何度も読み返してしまった。
    世界的名作。読み応えがとてつもなかった。
    余韻がすごい

    「読書ガイド」・「訳者あとがき」も良かった

  • 第3巻。ラスコーリニコフは神を信じたのではなく、ソーニャを信じたのだ。その一点だけを胸に生き、人生への希望は持っていなかった。だから、ただ生きた。

  • いやあ良かった。余韻が残る。書物は異界への入り口だと内田樹先生が言っていたけれど、本当にその通りだった。150年前のロシアへあっという間に連れて行かれる。ときにはもどって来られずに、ホームのベンチにしばらく座り込むこともあった。どうしてだろう、殺人犯の主人公に感情移入することができる。後半、かなり大きな存在となるスヴィドリガイロフ。ドゥーニャと2人になったシーンは、ちょうど並行して「痴漢外来」を読んでいたこともあり、それぞれの心理的状況を深く感じ取ることができた。そして、ピストル自殺。次第に近づいていく感じはしていたが、それでも最後まで、いや本当にアメリカに向かうのではと思ったり、最終的にはそっちが死ぬのかあ、というのが正直な感想。主人公ラスコーリニコフは結局、死を選ばなかった。エピローグ、入院する場面ではもう一波乱あるのかと思ったが、持ち直してくれた。ソーニャとの人生を受け入れ、明るく、前向きに終われたのではないか。清々しい気分である。ところで、「カラマーゾフの兄弟」を10年ほど前に読んで、次は・・・と思っていたのがいまになってしまった。また、10年後? 今度は「悪霊」か、「白痴」か・・・

  • あぁ 終ってしまった…
    42.195㎞のフルマラソンを走り終わったあとは
    きっと こんな感じを持つのでしょうね
    (残念ながら、私はその経験を持ちません)

    人が生きていくこと
    人が罪を犯してしまうこと
    人が人を裁こうとすること
    人がもう一度 生き延びてみようとすること
    人が人を支えていくこと

    何か独特の 読み終えた後の余韻が
    続きます

  • 最後まで読んだところで、しまったー!と思った。
    これは改心完了して終わる話ではなくて、改心の入口に立つまでの話だったのかー!!
    そう思って読めば、間のイライラも軽減された気がする…。
    まあ、多分それでもラスコーリニコフはビンタしたいと思うけど…。
    ラズミーヒンは好きだし、スヴィドリガイロフは彼についてだけ一作にまとめて欲しい面白さだった。
    他の登場人物も、それぞれのエピソードは面白く、正直、ラスコーリニコフがいないところが楽しみだった。

  • 大変に、重く興味深い案件について、一方で峻厳にハードボイルドな一方で。
    その範囲内では、実はすこぶるロマンチックな小説だったなあ、という感想。

    「チャップリンの殺人狂時代」という映画があって、最高傑作じゃないかというくらいに上物です。
    初老のチャップリンは、おなじみの「放浪紳士チャーリー」ではなく、実におしゃれな紳士。
    そして、初老の女性たちを手玉にとっては金目当てに殺していきます。淡々と無感情に。(お金がどうしても必要な事情があるんですが)
    裁判でチャップリンが。
    「戦場で100万人を殺したら英雄だ。日常で1人や2人を殺したら犯罪者だ」
    つまり、チャップリン版の「罪と罰」なんです。

    ことほどさように、「殺人」という究極な出来事をネタに、「罪とは?罰とは?」という味わいの人間ドラマは、玉石混交多数あります。
    恐らく、そういったことの原初が「罪と罰」なのではないでしょうか。
    (ま、実は聖書とかが先行している訳ですが、近代的にそれを表現したのは、「罪と罰」が嚆矢では。)

    (松本清張さんを筆頭に、「社会派ミステリー」みたいなものは古今東西、その味わいがあります。
    最近だとテレビドラマでも「それでも生きていく」とか「ナオミとカナコ」などもありましたね)

    と言う訳で、言ってみれば極上のミステリ、「罪と罰」。最終第三巻。

    第3巻は、本当に読ませどころ、名場面が目白押し。
    ほとんどがラスコリ君、一部、スメルジャコフに密着した、ドキドキの最終巻。
    ほんとうに、息遣いが聞こえてきそうな緊迫感は、「人が文字を紙に書くだけで、それも、150年前のロシア人が書いているのに、これだけ面白いんだなあ」と感服。
    本当に、ミステリーなんですよね。極上のミステリーっていうのは、当然ながら人間ドラマであり、社会を映している、という言葉を改めてかみしめました。

    まあただ、けっこうロマンチックなんですよね。
    そのあたりが、カフカさんとかとは一線を画するか。
    その分、ドストさんの持ち味は、なんていうか、鉄槌として、重量級ですね。
    フットワークは重いかもだけど、一発でもまともにくらうと、もうKO寸前までいっちゃうような、重量パンチ。

    それから翻訳の亀山さんですが、バカ売れしている分だけ、翻訳業界?からは誤訳の指摘などあるそうですね。
    ただ、「とにかく読み易くはしている」という評価はあるそうです。
    だとすれば、僕としては「読み易くしているのであれば、最大ミッションクリアなんだし、上出来なのでは?」と思ってしまいます。
    読みぬけば、そりゃオモシロイに決まってるんです。面白いんだから。
    ただ、外国語だし昔の話しだし、読みぬくのが苦痛になることが多い。そこを助けれくれれば、いちばんだと思います。

    さて、今年は、「カラマーゾフの兄弟」まで一気に駆け抜けるかどうか。
    楽しみです。



    以下、物語段取りの備忘録。

    ###############
    ラスコリ君=青春の殺人者。インテリの元大学生。金貸しの老婆と、その妹を殺害した。
    ソーニャ=ラスコリ君の運命のソウルメイト。貧乏な家族の為に売春婦。
    ラスコリ妹=美人で聡明で貧乏で知的な女性。
    金持ち嫌味君=ラスコリ妹に言い寄ったが、ふられた。
    暑苦しい正義感君=ラスコリ君の大親友。ラスコリ妹を愛している。
    ポル刑事=ラスコリ君を追い詰める刑事。物的証拠はないが、状況証拠と尋問で迫る、なかなか深いことを言う。
    スメルジャコフ=金持ちで、かつてラスコリ妹に迫った。妻を含め複数の殺人の疑惑がかかる、謎めいた男。

    まあこの辺の登場人物で話は追えます。

    序盤まず。
    ラスコリ妹に、けんもほろろにふられた「金持ち嫌味君」。
    プライド高いのでどうにも憤懣やるかたなく、復讐に及びます。
    たまたま、ソーニャの父の葬儀食事会があり、その場で、巧みにしかけて、ソーニャが金を盗んだかのように言いがかりを付けます。
    この場面が、すごいなあ。
    最終的に、「金持ち嫌味君」の陰謀は暴かれ、却って大恥をかかされることになります。
    そこまでの、ソーニャにかかるストレス。悲劇性。
    そこからどんでんになっての、スカッと溜飲の下がる痛快さ。
    実にハラハラとドキドキとスカッとが、素晴らしい!夢中で読めました。

    一方で、ラスコリ君は。
    ソーニャに「俺が老婆を殺した」と告白。
    それをなんとなんと、スメルジャコフが立ち聞きしてました!

    さあ、今度はスメルジャコフが、それをネタにラスコリ君に迫ります。
    ただ、ここんところは、いまいち目的はよくわかりませんが。
    ここのところのスメルジャコフのいやらしさ、ラスコリ君へのプレッシャー、これもなかなか読みごたえがすごい。
    そして、スメルジャコフは、「お兄ちゃんを助けたければ」と、ラスコリ妹に迫るんですね。
    これは目的がはっきりしていまして、カラダと、そして愛情をよこせ、ということですね。
    このスメルジャコフとラスコリ妹の場面。これまた名場面。
    迫る男、脅す男。弱る女、悩む女。
    とうとう、女が折れます。抱かれるか...だが、そこでやっぱり拒絶!
    ここのところ、スメルジャコフの何とも魅力的な悪漢ぶり。悪とはなんと魅力的な物でしょう。
    悪いんだけど、なんだか心の半分で応援してしまうような...。
    そして、スメルジャコフの魅力がすごいんですが、この悪漢、ラスコリ妹に拒絶されて、「絶望」しちゃうんですね。
    この後、雨のペテルブルクを彷徨って、自殺する。
    このスメルジャコフのラスト・ダンスの道行きが、たまらない味わいですね。

    さあ、ラスコリ君は、ソーニャと妹に見守られるように、警察に自首します。
    この自首シーンも絶品...
    自首しに来た局面で、「スメルジャコフが死んだ」と知ってしまうラスコリ君。
    「え?じゃあ自首しなくても、あいつが密告するってことはもうない?」と動揺するラスコリ君。
    思わず、自首せずに警察署から出て来ちゃうラスコリ君...。

    ここから、やっぱり自首~シベリア送り。でも、最終的に納得は行ってないラスコリ君。
    つまり、本当に悪いことをしたと思えないラスコリ君。
    それが最終的にシベリアの地で、唐突にソーニャの膝に泣き崩れるラスコリ君...。
    この最期の大きな見せ場は、ちょいと読み手によって好みが分かれるところかもしれませんが。

    1巻、2巻と読みぬいてきたら、もう本当に3巻は止まりませんね。怒涛に読み切りました。そして、読み終える直前には、「ああ、読み終わっちゃうんだな。ちょっと哀しいな」と思えたっていうことは、とっても素敵な読書だったなあ、と思います。
    さすが、ドストさん。

  • 自分は凡人の権利を踏みにじることが許される天才側の人間だと思い込むことは罪ですか。
    英雄気取って流した血に、自分は只の凡人でしかないと気付いて絶望し葛藤し苦悩するのは罰ですか。
    そんな現実に、精々傷ついて頭を冷やせばいい。
    ラスコーリニコフには、彼をするソーニャがいて、彼を心配する家族がいる。
    そんな平凡な幸せがすぐ傍にあるのに‥。
    人を殺めた罪が消えることはないけれど、然るべき罰を受けることは無駄じゃない。
    私にはまだ難しくて理解しきれていない気がするから、いつかまた必ず再読します。

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