向田理髪店

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910891

感想・レビュー・書評

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  • 「田舎は狭い」と言われる理由がよく分かった。
    町中の人がお互いを監視し合っているようで、都会育ちの私には息苦しい。
    でも連帯感は強いから困った時は助け合ったり、
    お祭りなんかは盛り上がるんだろうな。

    冬場は雪に閉ざされる北海道の田舎の小さな町を舞台に、
    日常の小さな事件に騒ぐ人々の様子が面白かった。
    スナックの話は、日本中の田舎で起こっていそう。
    いくつになっても女性の尻を追いかけるおじさんは、滑稽で可愛い。

  • 北海道の過疎化した町を舞台に、田舎の閉塞感や老老介護などをテーマにしながら、奥田英朗らしくカラッとホロっとする読後感。若者が町興しに本気になりそれを冷めたシニアが見つめながら、どこかここじゃないところで活躍してほしいと願ったりする。細部にリアリティがあって、そこが著者らしさ。短編オムニバスでなく、登場人物が変わらない中でエピソードが展開する構成もよかった。初電子書籍読破!

  • 苫沢町にある床屋、向田理髪店を中心に、田舎の出来事を扱った6つの連作短編。

    北海道中央部に位置する苫沢町は、かつて炭鉱で栄えたが、今はすっかり寂れて過疎が進む、典型的な田舎町。高齢化が進み、後継ぎが見つからず、嫁のきてがなく、噂が直ぐに広まり…。窮屈で偏狭なところもある濃い人付き合いの中に、醸し出される暖かい人間関係がいい。

  • 良くも悪くも田舎の特徴を全面に押し出した作品。
    地方暮らしの私には痛々しく感じる部分も多い。
    ただ、この作品ではコミュニティの人々の長所も短所も、魅力的なところも恥ずかしい過去も、本人がコンプレックスに感じる部分も、全てひっくるめて受け入れて一緒に生きていこうとするところが良かった。これは理想であって、現実的ではないかも知れないが。
    主人公の息子が、最初は都落ちのような感じで帰郷したのかと思いきや、次第に精神的成長を見せて主人公を感心させるところも良かった。

  • 私の住む街も苫沢ほどではありませんが、寂れた街です。田舎特有の濃い人間関係に大阪東京での生活の長い私は、戸惑い鬱陶しいと感じています。でも、この先も住み続けたら変わるのかもしれません。

  • 夕張を連想させる、炭鉱町。
    冬は雪に埋もれる。

    そこで理髪店をいとなむ向田の視線で描かれる連作短編集。
    地方都市の寂しさや問題点を書いてるんだけれども、生き生きとしてどこかユーモラスなのが奥田さんですね。

    中国からきた元気いっぱいの花嫁さんが素敵

  • 過疎化の進む北海道の町で、理髪店を営む店主の周辺の出来事を、短編形式でつなげた1冊。

    あえて架空の地名にはしているが、かつては炭鉱で栄えたものの、財政破綻して…とくれば、舞台は夕張。
    息子があとを継ぐことを宣言するが、先行きの見えない町に縛り付けることには否定的な主人公は、悲観的で石橋を叩いて渡るタイプ。トラブルが起これば何かと頼りにされるものの、どちらかと言えば控えめで、決して濃いキャラではない。そのため、じつは深刻な問題を数多く抱えている物語だが、穏やかなトーンに包み込まれている。そこが魅力でもあり、ややインパクトに欠ける部分でもあるのだが。
    町のおじさんたちが集う話なので、作者お得意のオヤジギャグ的な笑いを期待したのだが、そこはほとんどなくて残念。

    余談だが、たまたま少し前に荻原浩の『海の見える理髪店』を読んだばかり。理髪店がタイトルに付くのは珍しいのに、同時期に、しかも似たタイプの作者の本が出たことに驚いた。

  • ※※※もし時間があれば読んでみると良い本でしょう^_^

    たしか同奥田英朗の『家族』という名前の作品だったか、舞台設定は全く異なっているのだろうけれど、わたしにはその作品の続編のような気がづうっとしていました。

    まあ家族と地域を日常的に起きる出来事中心にまとめ上げた物語達です。それだけのことなのに結構面白いです。流石の奥田英朗です。

    正直、なんでもない日常をなんとなく書いてなんでこんな面白さがでるのだろうなぁ、と考えてしまう。

  • 北海道の札幌近郊にある財政破綻した街、苫沢町。
    夕張市をモデルにしていると思われる。
    そこで昔から理髪店を営む二代目店主。
    大半の若者は町を出て行き、街は高齢化していく。
    店主の人柄からか、田舎ならではの陰湿な感じはこれっぽっちも見当たず。
    町に残ったり出戻りしたりしてこれから街を盛り上げていこうとする若い子達の未来が明るいものになりそうな予感を残す終わりでした。

  • 過疎化が進む田舎町で、大事件が起こるわけでも、大恋愛があるわけでもない、普通のおじさんが主役のありふれた日常の話なんだけど、なぜかすごく面白かった。
    奥田英朗さんの小説は作者と登場人物の間に適度な距離感があるところがすごくいい。登場人物を使って自分の主義主張をするようなところがなくて説教くさくない。そのおかげで、登場人物が本当に自分の周りにいる人みたいに思えて感情移入がしやすいんだと思う。
    ちょうど映画化されたばかりみたいだから見に行きたいと思った。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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