- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334910891
感想・レビュー・書評
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2019/1/29
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2017年1月16日(月)知恵蔵書店桃谷店で購入し、同日読み始め、翌17日(火)に読み終える。奥田英朗の作品を読むのは久しぶり。『町長選挙』以来ではないかと思う。
北海道の苫沢町という架空の町を舞台にした6つの作品が収録されている。かつて炭鉱の町として栄えたものの、炭鉱が閉鎖されたあともハコモノ行政を繰り返し財政破綻した実在の夕張町が苫沢町のモデルになっていると思われる。ただ、それよりも、なぜか私はたばこのポイ捨てに関する記述が問題視された村上春樹の中頓別町(発表当時は実在の町名だったけど、住民たちからの抗議を受けて、単行本では郡上十二滝町という架空の町名に改められたとか)が強くイメージされたのだが、5作目の「赤い雪」というのが、そのときの騒動をそのまま思わされるようなものだった。興味のある人は「赤い雪」を読んでみるといいかもしれない。 -
北海道の過疎化が進む街が舞台。
日常的で現実的な問題を描いています。
街での出来事や人々の交流を奥田さんらしい温かい視線で描いていて温かい気持ちになります。 -
過疎の町の人情群像。
ほっこりさせられました。
財政破綻した北国の町で老人たちが日々のくらしを営む。それぞれ町を出たり、戻って来たりした子供達がいたりして、寂れた理髪店を継ぎたいと言い出した息子、近所のオジイサンが倒れたり、息子世代のおばさんがバー開店したり、映画のロケ撮影が行われたり、中国から嫁をもらったり、東京で詐欺事件を起こした知り合いの息子が逃亡中だったりのイベントが起きて右往左往する。
高齢化の諸問題に対処できずに、でも出ていくことはもっとできずに暮らしている。
みんなが知り合いなので、皆がそれぞれの事情や問題を抱えているが筒抜けであり、支えながらやっていってる。
そこには、精神的な安定というかバランスが取れた環境で、幸せ感が流れているように感じます。 -
北海道の財政破綻した町・苫沢町で生きる町人の群像劇。
・向田理髪店
・祭りのあと
・中国からの花嫁
・小さなスナック
・赤い雪
・逃亡者
過疎化、高齢化、財政破綻と風前の灯火の苫沢町で理髪店を営む向田康彦。
そんな康彦の息子・和昌が会社を辞めて、理髪店を継ぐために家に戻ってくるという。
将来性のない田舎町に戻ってくることを素直に喜べない父と、町を活性化したい息子との葛藤。
他、中国からの嫁や、訳ありで戻ってきたスナックのママ、映画招致など、ムラ社会の良し悪しもありつつ、町人の生活を描く。
もう少し先の結末まで知りたかったという印象が残りますが、それは個々にということなのでしょう。
最後、苫沢町のつながりに感動。 -
理髪店を継いだ中年、向田と田舎町の話し。田舎出身者はあるあると感じる事が多い。
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経歴や作風から荻原浩氏と混同することが多いのに(イニシアルまで一緒だ)、荻原氏が「海の見える理髪店」を発表した一か月後に奥田氏は本作を発表。意識してるのか。「海の~」は短編だけどこっちはシリーズもの。過疎地の人間関係に、読んでいるだけで気が重くなる。こういうテーマはいくらでも暗い話が書けるだろうから、救いのある最終話はとてもいい。
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内容(「BOOK」データベースより)
北海道。寂れてしまった炭鉱町。通りにひと気はないけれど、中ではみんな、侃々諤々。心配性の理髪店主人が暮らす北の町は、案外にぎやか。身に沁みて、心がほぐれる物語。
日本という国そのものが過疎化していくのは明白で、そんな衝撃的な内容の本も沢山出ていますが、この本は財政破たんした北海道の町を舞台に、住まう人々の悲喜交々を書かれています。
小さな町で暮らす閉塞感や安堵感が箱庭的に書かれていて、悲愴感無く個人個人を描いているので、この本読むと逆に小さな町で暮らすのも悪くないなと思ってしまったりします。
これは奥田英二さんのユーモアあふれる文章と、魅力のある、とてもとても普通の人々を生み出したことによる力だと思います。
続編有りそうですね、出たら読みます。 -
昔々、炭鉱で人もお金も潤っていた北海道の町、苫沢町が閉炭により一気に過疎化が進みます。そんな町に2軒しかない理髪店のひとつ向田理髪店、主人の康彦が日常におきるさまざまな事件や出来事を通して感じる、過疎化の町の在り方を考えさせてくれる作品です。
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小説宝石に掲載された連載短編だったみたい。
?向田理髪店
?祭りのあと
?中国からの花嫁
?小さなスナック
?赤い雪
?逃亡者
人々の優しさがじんわり!味わい深い