恋する狐

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929640

感想・レビュー・書評

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  • 夜が今よりももう少し暗く、分からないことに恐れを抱いていた頃には、人々の周りには多くのもののけ達が居たのかもしれません。

    時代は近世江戸の頃、蕪村をとりまく人々の生活の中に見え隠れするもののけ達。けっしておどろおどろしいものではなく、小さないたずらがかわいくもあり、時にしんみりと切ない。

    蕪村の俳句の世界が短い小噺となり、古典落語の人情話を聞いているようでとても不思議な世界観。前作「踊る猫」の続編ですが、是非「踊る猫」も読んでみたい。

  • 一度だけ本当の恋がありまして
        南天の実が知っております

    冒頭、山崎方代の歌集『こおろぎ』から引用されていた、上記の歌にぐぐっと掴まれてしまいました。

    本書は与謝蕪村とこの世のものではないモノたちとの短い物語を収めた短篇集。
    現代に比べて、この世とこの世でない世界の距離が近く、境界もあいまいであったのだろう…と思わせる描き方がすてきです。
    時間の流れがゆるやかな時代の空気が感じられました。

    9つの短篇のうち、特に好きだったのは美しき妖刀を描いた「鈴虫」と、表題作「恋する狐」です。
    狐に騙されても「わしは運がよかったのかもしれへんな」とご機嫌でいる蕪村がすてき。
    冒頭の南天の歌とも関わる物語であることも、惹きつけられた理由です。

    前作『踊る猫』(こちらも私好みのタイトル!)もあるとのことなので、そちらも読んでみたいです。

  • 『踊る猫』の続編。

    与謝蕪村を狂言回しにした“奇譚”九話が収録された、短編集です。
    前作と比べて、若干怪異というより人情話の要素が強めになっている印象です。
    とにかく蕪村さんの人柄がまろやかで温かく、第二話「いたずら青嵐」では優しい先生のように、第七話「鵺の居る場所」ではセラピストのように、人の心をまぁるくしていく蕪村さん。私も蕪村さんに色々話を聞いて頂きたくなりました。
    どの話も心にすぅっと染み入る温かな読後感なのですが、個人的に好きなのは第三話「虫鬼灯」、第六話「箱の中」ですね。特に「箱の中」の“驚きの真相”に“そうきたか!”と思わずうなりたくなりました。
    前作『踊る猫』では円山応挙が登場しましたが、本書では第八話「ほろ酔い又平」で伊藤若冲が出てきました。
    このように同時代の絵師達がちょいちょい出てくるのも楽しいですね。

  • 与謝蕪村が人ならざるもの達とすれ違う、少し不思議な短編集。「蛍舟」「いたずら青嵐」「虫鬼灯」「燕のすみか」「鈴虫」「箱の中」「鵺の居る場所」「ほろ酔い又平」「恋する狐」を収録。

    語り口、描かれる情景、人々の姿、いずれも穏やかでやさしい感触。私の好みからすると少しやさしすぎて頼りなかったかもしれない。庶民生活や季節感、話のネタはわりと楽しめたのだけど、どうもお話のために語らせすぎるというのか、台詞まわしのわざとらしさやチープな幻想表現に目が滑ってしまうことがしばしば。ちょっと色々お手軽すぎたと思う。
    蕪村の絵には見る者が想像する楽しみがあるとしつつ、この作品はその楽しみを読者から奪っているところがあるのでは。浅いのと、自ら語りすぎるのとで。
    文章にちょくちょく隙が多いのも気になった。まだ校正の余地があるんじゃないかな。

    シリーズ2作目と知らずいきなり手を出してしまったので少し据わりが悪い。気が向いたらいちおう『踊る猫』にも手を出してみるかも。

  • 表紙がとってもかわいいので、以前から気になっていた。
    なんだかよくわからないものたちがわらわらと。
    しゃばけっぽい感じなのかな、と思ったのだけれど、
    本編に彼らがでてくるわけではない。
    けど、気配はする、そしてちらりと姿をみせたりもする、
    とゆー感じ。
    これは、好き。めっちゃ好き。
    蕪村さんってあの蕪村さん??
    おお、若冲さんってあの、若冲さん??
    っと、有名な人がちょいっとでてくるのがいい。
    とゆーか、多分これは蕪村さんの句がテーマになっているのでしょう。
    とはいうものの、蕪村さんがメイン、という感じでもなく、句の向こうに見えるそれぞれの人たちのそれぞれの物語が、優しくて切なくて、あったかくて。
    どうかすると、ドロリとする展開にもなり得る状況もあったりはするのだけれど、そのへんはうまくかわして軽やかに語られる感じが、好き。
    ああ、そこが俳句っぽいのかな。

    燕のはなしのおたかの母親のキャラクターが、いい。
    絹さんじゃないけど、ほれるわあ。(笑)

    表題のは蓮がよかった。
    うーん、そんな化かしにならあってみたいもの。

    シリーズ化希望。

  • 与謝蕪村の周りで起こる不思議な出来事の短編集。
    妖刀や小鬼と言った物の怪も登場しますが怖くは分く、むしろ穏やかな物語ばかりでした。
    のんびりとした時が流れる本でした。
    燕の子安貝の話と小鬼の話が良かったです。

  • デビュー作を入れた一冊目より話作りが上手くなってる。粒ぞろい。良か良か。だが、若冲が出てくる話だけは有名人を絡ませたかっただけなのか、それだけで満足してしまったのか、「若冲が蕪村をよいしょしてる」だけの話でしかなく、絡ませ方も無理やりな感じだし残るのは「それで?」な印象のみ。この話だけ極端に堕ちてるだけに残念。比較したかったのかなあ…ならもっと書きようあるだろに…。蕪村褒めてるだけだし。

  • 『踊る猫』に続く、与謝蕪村と物の怪たちの妖異奇譚二作目。
    相変わらず、表紙が可愛すぎる。

    前作に比べ、更に読み易くなった気がするし、文量からも子どもでも充分この不思議な世界に入っていけるだろうな、と思う。
    ちょっと大きくなった子どもと、ゆっくり堪能して欲しい。

    一番のお気に入りは、「鈴虫」という妖刀の話だ。美しい男と、美しい刀が成すラストがなかなか絵になって素敵。

    それから、お盆の迎え火を題材にした「虫鬼灯」もじんわりくる。
    あの世とこの世の狭間は、いつも日常のほんのすぐそこに口を開けている気がして、そういう何気なさを描くのが上手い。

    今作では与謝蕪村の美術に対する考え方や、若冲も出て来て、個人的に満足。

  • なんとなく手に取ってみたら、読みやすくてストレスなく最後まで行ってしまった。少し不思議な世界が描かれていて、読んでいるあいだ現実と切り離された気分になる。頭の中で景色が浮かぶ文体で好みだった。

  • 読んでいて子どもの頃のように世界を見ているような、とても心がほぐれているようは気持ちがした。
    とても好きな本だ。

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