内澤旬子の 島へんろの記

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334952068

感想・レビュー・書評

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  • 小豆島に移住した著者の、小豆島八十八ヶ所札所での、
    お遍路体験と、島での生活を綴る、エッセイ。
    I 四海線を北へ II 北廻り福田線 III 南廻り福田線
    IV 草壁から、西へ V 駆け込み結願
    ・おわりに
    小豆島八十八ヶ所 札所一覧、「内澤へんろ」先達ごあいさつ

    「カヨと私」の読了後、著作紹介の中で発見!
    過去数回小豆島を旅したときに気になっていた、
    小豆島八十八ヶ所札所を踏破しているんですか~?と、
    読み始めたのですが・・・むぅ重い。
    初っ端からの難行苦行。迷走に高低差、厳しい道の状態。
    しかも私生活での厳しい精神状態に、原稿書きや
    ヤギの世話までこなしている中での島へんろ歩きで、
    所々で吐露している心情がなんとも、ずっしり。
    大丈夫か?と思ってしまうのですが、徐々に変化が。
    自分中心の目線から、島への目線が増えてきます。
    小豆島の自然や地形、地域の特性、言葉について、
    遍路を支える人々の存在など。島に移住したからこそ、
    島中を歩いて足で感じてきたからこその、変化。
    これらは島外の者ではなかなか体験できないこと。
    何よりも、諦めずに歩いて結願したのは凄い。
    心は迷走してても、バイタリティー溢れる行動は逞しいなぁ。

  • 内澤旬子 空礫絵日記
    https://kemonomici.exblog.jp/

    内澤旬子の島へんろの記 内澤旬子 | ノンフィクション、学芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334952068

  • 『そして私はといえば。恥を語るのは気が引けるのだが、ここを語らないと前に進めないのでしばらくご辛抱いただきたい』―『1 悟りの世界よ、こんにちは』

    例えば、星野博美の「島へ免許を取りに行く」と似ていると言えばよいだろうか。それとも故ナンシー関の文章の毒と似たようなものを感じる(但しそれを全て否定しながら表現している)と言ったらいいのだろうか。

    内澤旬子と言えば「世界屠畜紀行」だろうと思うけれど、出版物としては「センセイの書斎」の方が先で、両方とも松田哲夫が「王様のブランチ」で紹介していたような記憶がある。どちらも「来た!見た!(勝った!)」精神とでも言い表したらよいような立ち位置で、見たことを簡潔に伝えようとする本。ルポルタージュと呼ぶべきものかも(ご本人がルポライターと自身を認識しているようなので)知れないけれど、その言葉には「報道」というニュアンスが沁みついているように感じる一方、内澤旬子の文章はそんな風に大上段に構えたところは微塵もない。

    と言いつつ、その二冊は本屋で立ち読みした程度のままなのは、そこにある何かを上手く面白いと感じることが出来なかったのと、そこに直接は書かれてはいない何か薄暗いものを感じたから。乳癌を患った後に書かれた「身体のいいなり」は内田樹の身体論や養老孟司の説く唯脳論とも近い感じがしてすんなりと読めたのだけれど。今回「内澤旬子の島へんろの記」を読んでみて、何となくその時手を伸ばしかねた理由が判明したような気分となる。

    「ストーカーとの七〇〇日戦争」に限らず、内澤旬子は私生活を題材に文章を書いている印象が強い。プライバシーを切り売りしている戦略を取っているつもりではないだろうけれど、そこに引き込まれていく人も少なからずいるだろう。けれど、と立ち止まって考えてしまうのは、例えばナンシー関が世間にアピールするつもりもなく耳目を集めてしまったのは彼女独自の視線であり思考であったのだから(それに付して、もちろん消しゴム版画という独自のジャンルを切り開いたことは大いに注目を集めるところだったにせよ)、これもまた自分自身を切り売りしているという点では変わらない訳で、ひょっとしたら内澤旬子の「ノリ」もプライバシーの開示ではなくて自身の思考の開示という伏された動機に基づくものなんじゃないのかな、ということ。ナンシー関の「毒舌」というやつは、近頃流行る人を傷付けないよう力を加減して(その為切れ味が悪く余計に痛い)他人の共感を得る(=ウケル)為の(テレビ画面の中の)ポジションを確保するための「毒舌」とは違って、言った自分の立場とか何やかやを(意識せずに)賭してしまっているようなところがあった。内澤旬子もまたそういう人なんじゃないかと思ったりする。

    それがとても分かりにくいのは、この本で吐露されているように、強烈な自己否定を第二の自分が全面肯定しているという構図で書き表すからだ。自身の負を開き直って肯定する(それによって負の意識は解放される)のではなく、自身の負を否定しつつ拘泥する(古い少女漫画に出てきそうな「なんて可哀そうな私!」的自己憐憫を思わせる)のがこの著者の特徴であるように思えるのだ。その薄暗い自室に籠っている主人公から発する気のようなものが、この本にも間違いなくある。

    しかし、二年弱に亘る一人歩き遍路を通して小豆島からのルポルタージュを続ける報告者はじわじわと変化していく。その結果は著者が書き記すように決して解脱とか悟りというような大袈裟な境地ではない。喉につかえていた小さな魚の骨が気付かぬうちに取れていたという位のこと。あるいはそれは時間の経過による作用かも知れないが、細切れとは言え遍路道を歩き続けたことによる身体浄化作用かも知れない。そう思うと、著者の辿る道行(みちゆき)を然したる強い思い入れのないような筆致で綴ったこの文章を辿ることは、文章の意味を問うのではなく「辿ること」そのことに意味を見い出すべきことであるのかも知れない、などと少し大袈裟に考えて見たくもなる。

  • ひたすら小豆島の霊場を巡る本なので、土地勘がないと、やや冗漫で退屈かも。
    それにしても、小豆島、奥深いな。
    オリーブオイルなんて新参者だということがよくわかった。
    霊場、本格的です。

  • 前著「着せる女」がとっても楽しかったせいか、これも明るい遍路道中もの(タマキングの「だいたい四国八十八カ所」みたいな)だろうと思って読み始めたのだが…。うーん、ちょっとヘビーな読後感だ。考えてみれば、これが書かれたのはストーカーとの戦いのすぐ後であるし、だいたい女性が一人でお遍路をしようというのは、あんまり幸せいっぱいという状況ではないことが多かろう。私の思いこみが浅はかだったわけだけど。

    早朝に起きてヤギの世話をし、軽トラでその日の最初のお寺まで行き、しょっちゅう道に迷いながらいくつかの札所を拝み、夕方には帰宅する。そうやって(イメージよりはずいぶん大きい)小豆島を1年以上かけて歩き遍路した日々のあれこれが綴られている。

    多くの札所は観光的にはほとんど知られていないところだが、「岩窟寺院」など非常に興味深い。歩き遍路する人は少なく、遍路道が荒れていたり、案内標識が不備だったりするが、その分四国八十八カ所のようなメジャーな遍路にはない味わいがあるとも言える。

    と、いうような感想より何より、内澤さんの吐露する心情がかなり重くて、しばしばため息が出た。信仰を持っているわけではない、むしろスピリチュアル方面とは距離を置いてきた、オウム真理教事件に大きな衝撃を受けたものの、その後それについて深く考えてきたわけではない、しかし中年にさしかかり、大病をしたり、ひどく理不尽な目に遭ったり、同病の若い友人が亡くなったりと、思いもかけぬ出来事が相次ぐなか、思い切って遍路旅をしようと思う。内澤さんは極度の方向音痴だそうで、歩きながら迷いに迷うのだけど、それは自身の内心の彷徨のように見えてくる。

    結願してすっきりしました!というような、安易な話にならないのはまあ当然。「ストーカーとの七〇〇日戦争」で、「希死念慮がある」と書かれていてドキッとしたが、本書でも同じ文言が出てくる。これ以上ないほどに自立した女性である著者には、余計なお世話だと怒られるだろうが、どうぞ死なないでほしいと心から思います。

  • https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334952068
    小豆島八十八ケ所。わたしもいずれはちゃんと歩きたい。

  • 2021/10/16

  • 四国ではなく小豆島でのお遍路ということですが、やっぱりまわるのはたいへんそう。私には一人で島をまわる勇気はないなあ。島に移住し、ヤギを飼い、猟をして、ますますたくましくなられたようです。

  • なんだろう、近くに感じた。素直に思ったことを書く。この人の才だろう。知人が小豆島の遍路を2回まわった。四国も2度目の逆うちがコロナで中座したなんかもやもやした感じを、この本で癒やしたか。

  •  小豆島の島へんろを体験したエッセイというか旅の記録。

     なかなか先に進まず、著者の心のうつろうさまが、ねっとりとじっくりと描かれている。それを読んでいると、一緒に迷っているようなさまよっているような、そんな気持ちになる。
     しかし、これをどうやって書いているんだろう。雑誌連載? 気持ちをレコーダーに吹き込んでいる? 油断すると美辞麗句の使い勝手のいい紀行文になりそうなところを、おのれの感じたことに主を置いて描いてくれたので面白かった。

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著者プロフィール

ルポライター・イラストレーター

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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