第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334961886

感想・レビュー・書評

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  • はじめての人と出合ったり、本物なのか贋作なのかわからない美術品とでくわしたり、そういったとき人は、無意識のうちに瞬時に正しい判断を下せるものなのだ、というのが、本書の大きなテーマです。逆に、情報過多になるくらいの情報をふまえて判断していくほうがよっぽど間違えるものだ、ということも明らかにしていました。様々な事例や研究から論立てしていく構成になっています。

    誰しも第一印象が正しかったケースを経験していると思います。同様に、第一印象で間違ってしまった経験もあるでしょう。それは偶然の産物ではない、と著者は論じていくわけです。最初の2秒での判断を、本書では「輪切り」と呼びます。その瞬間の輪切りから情報を取り出して、人の無意識は一瞬のうちにただしい判断をするのだと。でも、そこには個人差があります。経験や知識、訓練といったものが積み重なっていてこそ、輪切りによる判断はうまくいくようです。また、輪切りから引き出されるさまざまな情報のうち、どれがその場合においてもっとも重要なポイントなのかも判断するカギになる。たとえば、輪切りから10の情報を手に入れたとして、判断に使うのはそのうちでも重要な3つだとかになるわけです。そういった判断、選択、決定の精度が経験や知識、訓練によって上がっていくもので、そうやって精度の上がった「第一感」はより正しく瞬時に判断を下すものだし、「第一感」を信頼できるようにもなっていきます。

    また、アメリカでは警察による誤認発砲などで命を落としてしまう黒人のひとたちが多数いるのですが、そういう場合になぜ「第一感」が作動しないか、というところも本書の後半部で明らかにしています。そこには、自閉症の人とおなじように、人の心が読めなくなる心理が働くためだという理由がある。人の心が読めなくなるのは、興奮しすぎている状態がそうだといいます。また、同様に、心拍数が175を超えるなど過剰に血流がよすぎるようになると、これも興奮状態であって、人であってもモノとして捉えるような集中の仕方(これも自閉症的なのです)になってしまう。つまり、落ち着いていないと第一感を捉えられないのです。瞬時に判断する第一感といえど、自らが落ちつくための時間が必要であるのでした。あまりに短い時間での判断を強いられても、第一感以前の最低限の直観的反応しかできなくなるそうです。たとえば、とりあえず怪しい人物へと銃を構えるというような。

    本書で特におもしろかったのは、表情からピタリとその人の感情や嘘をついているかなどを当ててしまう教授の話です。目は口ほどにモノを言う、といいますが、顔全体は目よりもモノを言っているみたいです。表情筋の動きや、できた皺から、その人が寛容な人物なのか凶暴な人物なのかさえ判断できるとのことです。そんな人の顔から、僕たちは日常的に第一印象で無意識に判断していて、好感をもったり嫌悪感を抱いたりします。まあ、判断する側の価値観も関係するわけですから、そのあたりも鑑みる必要がありそうだと、僕は考えましたが、人の顔にはそれだけありありとその人の人間性が表出されているのだなあと知ると、ちょっと怖さも感じました。

    それと、この表情から人となりなどを当ててしまう教授が学生の頃に競馬の予想屋をやってかなり儲けたそうで、その予想の切り口がどうやら競走馬の心理を考えるものなのでした。あるレースである牝馬に負けた牡馬が、別のレースでその牝馬と一緒になり、となりのゲートに入ったならその牡馬は決して勝てない、だとか理論があるそうで。もうちょっと詳しく知りたくなりましたが、数行程度でその記述は終わっていて、惜しかったです……。

    というところですが、読み応えのある良書でした。翻訳もよみやすいです。2006年発刊ですが、内容はまだまだ古くなっていません。言語化することで第一感が鈍ってしまう、という章もありそこもなかなか肯けるのですが、言語化でアジャストしていくことが良いのだ、とする現在の認知科学の方法論と照らして読んでみると、自分なりの咀嚼ができるのではないかなと思います。


  • 本書のタイトルと、サブタイトルの「最初の2秒がなんとなく正しい」が表しているとおり、第一印象を科学的に分析した内容。

    面白い内容ではあるけど、読み終わってしばらくしたらあまり印象に残っていない。


    なんとなく、というのを判断の根拠にした時、基本的にあまり良い印象はないよね。
    「なんとなくじゃなくて、はっきりと根拠を!」
    と言われそう。
    特にビジネスの世界では。

    ただその「なんとなく」も、ちゃんと自分の人生で得てきた経験を無意識的にではあるが、バックボーン(作中では輪切りの能力と称してます)にしており、意外と馬鹿にできませんよ、っていう事を色々な事例を交えて紹介してくれている。


    ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の件は面白い。
    確かに、と頷かされます。

    しばらくして再読かな。

  • 人はちょっとの情報で本質に近いことを把握する能力がある。それが第一印象であり、理由は分からないが、感じるものがあるということ。そして、それが正解であることも多い。
    ただ、消費者調査となると、第一印象だけでは評価できないのに第一印象だけで評価しようとしたり、斬新で違和感を感じていることを拒否反応と捉えたりと、エラーが起こり得る。もっとも、違和感が最初だけの場合もあれば、それがずっと続く場合もある。
    第一印象の重要性と、その理解の仕方の難しさが述べられており、ニューコークの事例などは興味深い。私自身、このタイトルに魅かれて、第一印象で買ってしまったのだが、この第一印象は正しかった。

  • 影響力の武器の続編。
    ナポレオンの言葉はよくわかります。

  • 直感は意外と正しいし、かつ養えるものという話。時間をかけたり、言語化することで正しかったものを間違えてしまうというのは面白い。また、時間がないと「自閉症」になり、情報を処理できずに誤った直感が働くというのは悲しい現実だと思う。話の趣旨は面白いが、文体は若干あきる。

  • 人間の無意識さの性質、判断においておこりうる事象の理解を進められる1冊。

    「Adaptive unconscious/適応力無意識の力」
    ・人は無意識のうちに素晴らしい判断を下す能力を持っている。
    綿密に時間のかかる理性的な分析と同じ位に、瞬間のひらめきには大きな意味がある。このことを認めてこそ、私たちは自分自身を、そしてそのそして自分の行動よりよく理解できる。
    ・審美的な判断よりも科学的な議論のほうがずっと客観的だと信じてきたが、そうではなかった。
    ・しかし無意識の判断の全てが正しいと言う保証は無い。体内コンピューターがいつでも正しい判断を下すと限らないのだ。時として、直感的なひらめき「第1感」を曇らせる何かが存在する。早く目玉商品が欲しいとか、初恋の相手だとかと言う類の事情である。そうだとすれば、第1感を信じて良い場合と信じてはいけない場合を区別する事は可能なのか。どんな時に体感は曇るのか、どんな時に体内コンピュータは来るのか曇るのかを理解することが重要。
    ・また、第1感は養うことができ、自由に操れる。

    第一章:輪切りの力
    ちょっとの情報で本質をつかむ
    ・人間の関係性に関しては、4つの感情に注目すれば良い。防衛、はぐらかし、批判、軽蔑である。その中でも軽蔑の感情が最も重要である。

    第二章:無意識の扉の奥
    理由はわからないでも感じる。
    ・瞬時の判断や瞬間的の日は閉じた扉の奥で起きる。どうも何が判断の根拠になったのか説明しようとしても正確にはできない。

    第3章:見た目の罠
    第一印象は経験と環境から生まれる。つまり第一印象を構成する経験を変えれば、第一印象を生む輪切りの方法を変えられるのだ。瞬間的なひらめき「第1感」のパワーを認め、結果はさておき第一印象が日々の生活に及ぼす影響力を認めるからには、そうしたパワーを管理し操作するために積極的にに行動する必要がある。

    第4章:瞬間の判断力
    論理的思考が洞察力を損なう
    ①正しく判断するには熟考と直感的な思考のバランスが必要だ。
    ②優れた判断には情報の節約が欠かせない。正しく判断下すには情報の編集が必要。選択肢が多すぎると、無意識の情報能力を超えて、麻痺してしまう。瞬間の判断を瞬時に下せるのは、情報が少ないからだ。瞬間の情報を邪魔したくなければ、情報を減らすことだ。
    第5章:プロの勘と大衆の反応

    「感覚転移」
    消費者がスーパーやデパートで製品を買うとき、製品のパッケージに対して抱いた感覚や印象を、知らず知らず製品そのものに転移ことである。
    要するに無意識のレベルでほとんどの人がパッケージと製品を区別しないと考えた。消費者にとって製品のパッケージと中身は一体なのだ。
    マーガリンの例として、白ではなく黄色にし、当時高品質の印であったアルミ箔で包んだ。消費者に良いと言われて訳ではないが、間接的に尋ね、本当の動機を理解した。
    コカコーラ、ペプシのケースでも同じことが言える。試飲調査の結果を重視しすぎただけではなく、ブランド名を伏せて飲み比べさせる「ブラインドテスト」の調査方法そのものが的外れだった。従来のコークがブラインドテストで負けたことなど気にするべきではなかったし、ペプシがブラインドテストで勝ちながら市場で勝ってなかったことにも驚くには当たらない。なぜなら実際にはコークの名を伏せて飲むことなどないからだ。コークを飲むときはブランド、イメージ、缶、見間違えようのない赤いロゴといった無意識の連想全て、コークの味の感覚に転移させるからである。
    コカコーラの失敗は、ペプシにシェアを奪われた原因が全て製品にあると考えた点にある。効果やペプシの売れ行きは、ブランドイメージに左右されやすい。彼らはそこ見落として、製品そのものを変える事しか考えなかった。一方、ペプシは若者に狙いを定め、マイケルジャクソンのイメージキャラクターに使って、イメージアップを図った。もちろんシーンでは甘い製品が好まれるわけだが、消費者は試飲によって購入する製品を決めたりしない。コカコーラの問題は白衣を着た研究者たちの力が強すぎたところにある。

    ・革新的製品は市場調査になじまない
    良くない製品となじみがないだけの製品の違いを捉えられない場合が多い。消費者がまだ見慣れないため当の理由で言語化できないことが多い。
    第一印象を再現できるプロ、訓練されていて言語化できるプロと、言語化するように訓練されていない消費者たちの違いは理解しておくべき。

    第6章:心を読む力
    以下の場合のように正しい判断ができなくなる状況を理解し、無意識を訓練するのが重要である。
    興奮すると相手の心が読めなくなる。
    人は時間がないと先入観に引きづられる。感覚という現実の証拠に頼るのをやめて、融通の効かないシステム、ステレオタイプに頼る。
    「仕切り越しのオーディション」女性だとわかっていたら採用されなかった、情報をシャットアウトした最初の二秒がやはり重要なのだ。

  • 「最初の2秒」の「なんとなく」という感覚がいかに物事の本質を捉えているか、を実験を通して証明しる。この「なんとなく」の感覚を第1感とし、人は無意識の中で現象を輪切りにして物事を見ていると結論づけている。
    面白かったのは、この第1感は超能力でもなんでもなく、その人が繰り返し習得してきた感覚によって得られるものだということ。本文中に登場してきた美術評論家やテニスコーチも、言葉にはできないが「なんとなく」わかるとあるので、あらゆる専門家が専門性において第1感が働くのだと思う。
    ただし、人種や性別、相手の容貌によってそれが歪んで働くこともわかった。ディアロ事件が紹介されているが、同様の事件は現在アメリカで絶えず起こっているのではないかと思われる。差別をしているつもりなどなくとも無意識の行動にでるのは、なかなか恐ろしいことだと感じた。

  • 原書タイトルは「Blink」…瞬き、転じて一瞬、さらに見て見ぬ振りをするの意である。普通なら第六感と呼ぶべきところを、このタイトルにしたのは、なかなかの策士である。題名にとどまらず、かなり濃い内容。これを、一気読み。もっと知りたいと思わせる箇所が多々あった。
    導入から面白い。
    カードを引く実験。赤はハイリスクハイリターン、青はその逆。被験者は50枚ほどめくったところで赤は危ないと言う仮説に至る。さらに30枚ほどめくることで、その仮説を検証することができる。しかし、被験者の手にストレス測定器(汗の量を測る)を取り付けると、最初の10枚の時点で既に明るカードにストレス反応を示し始めた。なんとなくルールがわかったと意識する(40枚目)はるか以前から、実は危険を回避する行動を取り始めていたこととなる。
    このように手持ちの情報を遍く用いることなく一気に結論にいたる脳の動きを「適応性無意識」と呼ぶ。
    (トンとツーだけの)モールス信号にも「筆跡」が出てしまい、その通信士が所属する舞台の所在地や通信頻度による戦況分析ができてしまう。
    夫婦の会話15分を1分ごとに「輪切り」にすることで90%の確率で15年後を「予言」できる。

    終盤、表情を作ることで、それに類した感情が喚起されるという。著者は、竹中直人氏の「笑いながら怒る人」のネタは知らないと思うが、あれなどは、どう解釈すれば良いのか? まあ、本論とはあまり関係のない話なのだが…。

    最後の警察官のエピソードは、冒頭の台詞に戻って「お気の毒」と言うしかないが、15年前のアメリカの現実なのだろう。

    「#第1感」(光文社、M.グラッドウェル著)
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  • 面白い

    それぞれのエピソードが面白いし興味深い

    丁寧に読めば気づくこともありそうだが、読後感は意外と残らず

    結局経験がものを言うのか?

  • 見た瞬間に感じた“かすかなひらめき”の正しいや間違いを説明することに本書では分かりやすく書いてくれた。 特に時間的に制限されて心拍数が最高値に近ければ近いほど、人の判断力は著しく落ちていく点は興味深い。

     本書から、自分が知識.経験がある分野でのひらめきはなんとなく正しいけど、それ以外の分野のひらめきは怪しいかも?と疑って、そこは時間をかけて解決していくことで、より良い結果となるのではと感じてます。

著者プロフィール

1963年イギリス生まれ。
カナダ・トロント大学トリニティカレッジ卒。
『ワシントン・ポスト』紙のビジネス、サイエンス担当記者を経て、現在は雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターとして活躍中。邦訳には『天才!』『ニューヨーカー傑作選』ほかがある。

ある製品やメッセージが突然、爆発的に売れたり広まったりする仕組みを膨大な調査とユニークなフレームワークによって解き明かした最初の著書『ティッピング・ポイント』(邦題『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』)、人間は、長時間考えてたどり着いた結論よりも、最初の直感やひらめきによって、物事の本質を見抜くという仮説を検証した2冊めの著書『ブリンク』(邦題『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』)は、いずれも世界で200万部を超える大ベストセラーになっている。

「2014年 『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マルコム・グラッドウェルの作品

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