ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って

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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334976903

作品紹介・あらすじ

駅前のトイレで寝泊まりする女子高生、車上生活を強いられる保育園児、朝食を求めて保健室に行列する小学生…大人たちからハンディを背負わされた子どもに今、何が起きているのか。

感想・レビュー・書評

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  • 確か最も新しい調査では、日本の子どもの16人に1人が貧困という結果だったはず。ざっくり見れば、ひとクラスに2人は貧困にあるという計算になる。このルポがまとめられた当時より、わずか数年でさらに悪化しているというこの事態に愕然とする。

    ルポで取材された子どもたちのあまりの健気さに泣けてきた。
    もう個人の努力でなんとかなるレベルではない。社会を挙げてこの事態を何とかしないと。

  • 日本の子どもの貧困が社会問題として取り上げられている現在、新聞の書評で知ったこの本で貧困家庭に生きる子どもたちの現状の一面を垣間見ることができた。
    私自身母子家庭に育ち貧困の中で生きてきた経験からしても今の子どもたちの現状はさらに過酷で困難なものに思われる。頼れる大人がいない子どもたちのライフラインを守り前向きに未来のことを考えられる環境を整えてあげるのは社会の役目ではないだろうかと考えさせられた。

  • 日本が生き残るためにすべきことは教育の保障なんですね。それが将来、何倍もの経済効果になる。子どもたちの現実は自分で考えていたよりもっともっと大変なんだということがわかりました。

  • 個人の活躍だけでは支える側にも限界があるのではないか...と、読みながら思いました。

    自分が保育園の側の立場だったら、その時点では養育能力が危機的な親から、罵声をあびてまで、その子どもを守る行動をとれるか...正直とても恐ろしい...と思いました。

    様々な制度が申請主義で、仕組みや書類がわかりずらいし利用しずらいことが、まず改善されたらいいなと思います。

    読んでいて、大人になるまでの教育の大切さを、しみじみ痛感しました。

    基本的な学力や判断力のほか、今のこの国で生きていくための基本となる金銭や経済的な感覚を育むこと、生活経営の基本的な事柄や、福祉の利用の仕方、子どもを産み育てることに伴う決断と、長期間にわたる責任...

    それに家族や親類、友達などと健全な人間関係のネットワークを築く能力...

    ふと、現代の若い子たちが、結婚しない、子どもを持たない選択をする一端を、垣間見た気がしました。

    ある意味、産み出さないことによって、負の連鎖を未然に防いでいる側面があるのではないか...とも。

    また、発達障害や、生命・誕生学、金銭教育の分野を、草の根で啓蒙している方たちのことも思いました。

    子どもを国の宝として育む...

    日々、子育てしている身には、色々と思うところがあったのですが、

    この本を読んで、まずは、せめて義務教育までの期間は、保護者の貧困が連鎖せずに、子どもが同じスタートラインで教育の恩恵を受けられるような世の中であってほしい...と、心から思いました。

  • 生活保護、就学援助。
    満足に生活できないのは「親のせい」?
    おなかがすいたから、保健室にある給食の残りのパンを貰う子供。
    視力低下を指摘されても、眼科を受診することも、メガネを購入することもできない家計。
    学校に通いたくても、病気の母親の代わりに家事をせざるをえない子ども。
    住むところがなくなって、車で移動しながら寝る親子。

    本当にこんなことってあるの?
    と、思わず目をそむけたくなるエピソードばかり。

    だけれど、実際にそれが(特に大阪では)子どもたちに起こっていて、
    学校は「家庭のことだから踏み込めない」と
    手をこまねいているだけではいけなくて。
    しかし具体的にどんな手を差し伸べるのがいいのか。

    子どもは悪くない。
    でも、貧困家庭である親が悪いのかといえば、そうではない。
    では、社会が悪いのだ、というには無責任すぎる。

    日本の貧困格差はじわじわと広がっているけれど、
    誰が解決するのかと言えば、
    当事者でもあり、社会でもあり、学校も、だと
    私は感じました。

  • 小学校の章に出てくる保健室の先生がスゴイ!子どもが出すSOSを素早く察知し、大事にならぬ前に手を打つ。ほとんどボランティアで。貧困の子どもを救える受け皿が欲しい。施設でなく家族ごと救える手立てを。

  • 「学生が授業中に携帯使うのはダメでしょ」と何の疑問もなく思ってたけど、携帯が彼らや場合によってはその家族の生活を支える大切な命綱になっているケースもある。
    就学を支援する制度は奨学金をはじめとしていくつもあるのだから、それで教育を受ける機会は最低限保証されているのではと思ってたけど、それが教育ではなく生活を支えるだけで精一杯になっているケースも多々ある。
    想像以上に貧困の根は深いことを思いしりました。
    特に、バイトなど稼ぐ手段もなく何にしても保護者に身を委ねないといけない中学生以下の子たちのルポが、読んでいてとても辛く感じました。
    でも、どの年代のルポにも熱心に問題に取り組まれている先生方が紹介されていることに、少なからず希望を感じられました。
    それにしても、救ってくれるはずの公的な制度にある矛盾・歪みはどうにかならないのかなと思います。
    自治体など「柔軟な運用を」と言われる一方、そうしたらしたで「属人的な対応は差別を生む」とか言われてしまうのでしょうけど…もどかしいですね。

  • ルポルタージュの類はレポートの参考資料に使えないという縛りがあるけれど、どうしても読みたくて読んでしまった。
    一部収録されている対談、出てくる学者さん達に胡散臭いところがまったくない。
    貧困をどうするかということを考えたときに、今の政府がしていることやこれからやろうとしていることはあまりにも逆をいっていたり不徹底だったりするので、政府御用達の貧困学者の数がそもそも少ないのかもしれない。

    やれ早期教育だ、やれ英才教育だというふうに子育てをするつもりがなくても、普通に子どもがいるだけでかかるお金が高すぎると感じた。
    子どもを個々の家庭任せにしてもなんとかなったのは、オジサンの頭からいまだ抜けない経済成長著しいあの時代、親戚や近所の相互扶助が機能していた(もう大昔の話になった)あの時代、だけだ。
    どうしてこの期に及んで、なんでも身内で解決できるとおじさん達は考えるのか?
    子どもは社会全体で面倒をみるべきだ。

    また、小さな子どものいる親が負う社会的な不利や差別にも腹が立ってしょうがない。とくに男性、シングルファザーの事例に、それがよくあらわれている。
    「家に誰かケア担当の人間がいる」ことを前提とした労働のありかた、社会保障のありかたにはうんざりする。

  • 子供を育てることにはお金がかかることが、なぜわからないのだろう。そんなに貧困なのになんで子供を産むんだろう、ってずっと思っていたけれど、
    貧困の連鎖のなかにいるからこそ、連鎖の中の選択しかできないのかもしれない、と、ここ最近の児童虐待関連の本を読んで、思った。

  • 「親の貧困が子どもを想像以上に蝕んでいる」という現実を高校生、中学生、小学生、保育園児と子どもの年齢ごとに分けて紹介したルポ。

    こうやって子どもの年齢ごとに分けて紹介してくれるとそれぞれ抱えている問題の違い(高校生はバイトが出来るので仕事と学校との両立との苦しさが、保育園児だと自分ではほぼ何も出来ないから親の貧困がダイレクトに健康格差に現れるとか)が明確になって、とても良い構成だった。

    副題に「教育現場のSOS」とあるようにこういう子供達をなんとか支えようと頑張ってるのは現場の先生達。ただでさえ仕事が忙しいであろう中で、「こんなことまで(生徒の通学の送り迎え、片付けられない母親がめちゃくちゃにした家の片付け等)してたら、先生達の方が倒れますよ!?」という気持ちでいっぱいになりました。

  • 悲惨な貧困にさらされる子供たちが次々出てきますので、ショッキングです。
    事実としてこのような貧困状態がこの日本にもあるということはじゅうぶん、理解していたつもりでしたが、あらためて知らされてショックでした。
    それぞれの章末に専門家のインタビューがついていますが、その中で、「最初に無条件で給付しておいて、所得が高い人からは多めに税金を取るほうがベター。申請しないと生活保護などの給付を与えるという仕組みそのものが、貧困に対して烙印を押すことにつながっている(大意)」という指摘はうなづきました。
    この本では、解決策の提案は具体的にはありません。生活保護の現物給付化などの議論も出ていますが、これからどうすべきなのか、考えていますが、なかなか良い案は浮かびません。
    対症療法的な貧困対策で、よいのでしょうか。

  • 同じゼミの友人が、子どもと貧困について卒論を書こうとしていたので、ぜひ、おすすめしたいと思って選びました。

    請求記号:369.4/R86

  •  共同通信配信で2009~10年に新聞連載されたルポに加筆し、識者へのインタビューをプラスしてまとめたもの。著者2人は共同のベテラン記者だ。

     全4章立てで、各章が高校編、中学校編、小学校編、保育編となっている。
     貧困問題をめぐる多様なケースが取り上げられている。たとえば小学校編では、母子家庭、父子家庭、両親が揃ってはいるが雇用不安定で貧困に陥ったケースが、それぞれ登場するという具合。

     この手のルポを読むと、「苦しんでいる親と子どもが多いのはわかったけど、じゃあどうすればいいの?」と、モヤモヤした読後感を味わうことが少なくない。
     しかし本書の場合、章の最後に置かれた貧困問題のエキスパートへのインタビューで、問題への対策・処方箋が(ある程度)語られている。
     インタビューイとして登場するのは、東大教授の本田由紀、福島大教授の大宮勇雄、それに当ブログでも著作を取り上げた阿部彩、生田武志の計4人。
     
     また、ルポの中には苦しむ子どもを救おうと懸命に努力する教育者(定時制高校の担任教諭、保健室勤務の養護教諭、保育園の園長など)たちの姿が活写されていて、読んでいて救われる思いがする。

     教育現場で広がる「子どもの貧困」の問題を考えるうえで、有益な良書である。

     本書の中で複数の登場人物が、「日本における子どもの貧困問題は見えにくい」という趣旨の発言をしている。
     たしかに、途上国のようにストリート・チルドレンがいるわけではないし、貧困家庭の親や子どももケータイをもっていることが多いし、ユニクロ等のファストファッションが普及しているから、貧しくてもそこそこオシャレな服装ができる。見た目からは貧困の苦しみがわかりにくいのだ。
     そのじつ、日本の「子どもの貧困」は、リーマンショック以後急速に深刻化しているのである。

  • ルポ、って現状報告ってこと?
    現状は、伝わってくるけど、
    よりマイナスなこと、に、内容が多く割かれている印象。
    それが現状だって言われればそれまでだけど、うーん。
    建設的な意見がもっとあって良いのでは・・・。

  • 2012年の本。子どもの7人に1人が…とあるが今は6人に1人と言われているな…と冒頭から何ともいえない気持ちになる。
    維持するどころか貧困が進んでいることを感じた。
    「健康格差」

  • 最後まで読めずに図書館に返却。

  • 国の宝である、子供達に貧困による教育格差、健康格差などが起きている。個人主義、資本主義、経済主義、合理主義の副作用が子供たちに影響している現状を知らなかったし、見ようとしていなかった。
    自治体、行政、近所、学校、その他色んなコミュニティーで子供達を育てていくことが必要
    個人情報の保護だとかプライバシーとか過剰に言いすぎてきた所も貧困の家庭を助ける手遅れになっているのかも

  • すいめい先生の本と同じ構成で、一人一人のケースが紹介されています。幼稚園児から高校生まで。「漂流老人~」と同じですが、読み進めていくうちに、制度などがいくらそろっていても、それではすくいきれない様々な問題を重複して抱えている人がいるんだなって実感します。いかにして貧困を早い時点で食い止めることができるか。恵まれた環境の中でずっと生きてきた学生にぜひ読んでほしいです。

  • 生活保護ももちろん極めて厳しい状態であるが、生活保護を申請できずに際の状態でぎりぎりの生活している家庭は今後もっと増えていくだろうし、その層がもっとも大きな課題を抱えるのではないだろうか。ある定時制高校のカタリ場で、先生が言っていることがよく分かる1冊であった。

  • 学校からの帰りの電車の中で読みました。
    胸が苦しくなる内容です。
    でも、目をそらせない現実です。

  • 格差が固定するのは意欲からか くえた仕事が食えなくなってこれから格差の再生産をどう止めるか

  • 子供たちの貧困というものは、普通に生活している大人には隠されているのかもしれない。本書は、新聞に連載された貧困に苦しむ子供たちとその親たち、そして彼らを手助けしようと努力する教育、行政等の担当者達の姿を伝えるルポルタージュを元に、各ケース毎に専門家の意見、解決へのヒントが挿入されている。元が新聞連載のためか、とても読みやすく、子供たちの貧困問題について目を向けさせてくれる。ただ、本書に取り上げられている子供たち、そして親を含む廻りの人々は、支援制度などを活用し、貧困から抜け出そうと努力しているが、実際には必ずしも子供たちの廻りの人々が、そのように行動する人達ばかりではないことは、想像に難くない。子供は、社会が育てるものということを真剣に考えなければいけない時代なのだろう、今は。自民党の憲法改正案のように、国の責任を家族や共助に押し付けようとする政策は、考え違いも甚だしいと思う。あら、また、脱線(^^;;

  • 子どもの貧困について考えさせられました。

  • 非常に重たい気分になる本。「貧困」状態にある子どもたち、高校生、中学生、小学生、そして保育園。。。それぞれの現場で、それぞれの事情で、苦しみながら、もがきながら。親も、子どもも。
    どんなに国が貧しくなっても、子どもだけは守られ、大事にされるべきだと思うけれど、しかし、子どもたちの声は小さい。そして一歩間違えば自分だって、という気持ちもある。やりきれないなぁ。

  • 保育園に支払う月数千円の雑費が支払えず、何度目かの納付願いの手紙を子どもに持たせると、「先生、持ってきた」と差し出しされた手のひらには三枚の百円玉。

    「ママ、小学生になったらアルバイトしていいかな。僕も仕事をしてママを助けたいんだよ」という保育園生の息子。

    本書は、共同通信の記者による連載単行本化。斜陽産業といわれるマスメディア。必要性を再認識させられる一冊。
    (2012.10.1)

  • 普段目にすることのない、貧困のルポ。老人ケアに比べ、子どもケアが薄いってことには同感。

  • 「子どもの無縁社会」に比べて、感情に訴えるようなつくりではないけれど、高校、中学、小学校、それ以下と、それぞれの取材を通じた子どもの貧困の状況は、やはりとても重苦しいものです。
    教育現場での貧困の発見も対処もとても難しく、また体系的な方法もない。一市民は、この問題にどう向きあえばいいのか、さっぱり答えが見えません。我が家がこうならないという確信も、さっぱり持てません。
    周辺を考えてみると、教育現場や行政のせいだけではなくて、地域崩壊が発見を遅らせ、また手を差し伸べないベースになっている、のでは。地域がなくなったことが、いろんなことの問題だと思う。

  • 高校無償化という言葉と実際に施行されている内容の齟齬、子どもの貧困・格差について高校生・中学生・小学生・保育と分けて、実例と広域政策に関わる人へのインタビューを通したルポルタージュとして、出来るだけ客観性を失わないように書かれていると思う。

    今まで個人的には、公立と私立では、もともと教育サービスが違うのだから授業料に差があるのだと漠然と認識していた。それに対して近年の高校無償化は、一律に一定金額を給付するという形のために、公私格差を問題視する人が出てきているようにまた漠然と見ていた。
    しかし、この「高校無償化」という言葉を付けて施行されている実際施行されている政策は「子供向けのBasic income」と変わらない。それをただ「高校無償化」といって公私に不公平が生じている主張しているように見えるのが、少し空々しく感じるほど、より真剣に「勉学」を求め、就労しながら定時制に通い、悩み、苦しみ、それでも進む学生とそれを支えようとする人々の存在ことが帯にあるように≪鉛の重さ≫として感じざるを得ない。

    それと同時に如何に恵まれてきて、未だに恵まれている現状に、何か返していかなければならないのだろうことだけが心に沁みる。

    義務教育とは? 公立と私立の違いとは? 子どもが身に付けるべき学力とは?そして、この社会に横たわる年齢差別とは?

    近年、「無縁社会」など高齢化社会での孤独の問題や非正規雇用の賃金格差、リーマンショックによる労働市場の減退とともに本書のような問題がより顕在化してきていると受け取れる。どうにかしなければならない。

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著者プロフィール

Hosaka Wataru ほさか・わたる
1954年生まれ。
1979年、共同通信社入社。社会部、編集委員室編集員などを経て、
現在はフリージャーナリスト。
主として家族や子どもをテーマに取材を続けている。
著書に、
『虐待  沈黙を破った母親たち』
(岩波書店、1999年)、
『厚生省AIDSファイル』
(岩波書店、1997年)、
『迷宮の少女たち』
(共同通信社、2006年)、
『ひびわれた仮面  東京・文京区幼女殺害事件』
(共同通信社、2002年)、
共著に、
『子どもの貧困連鎖  新潮文庫』
(池谷孝司との共著、新潮社、2015年)、
『ルポ 子どもの貧困連鎖  教育現場のSOSを追って』
(池谷孝司との共著、光文社、2012年)、
『かげろうの家  女子高生監禁殺人事件』
(横川和夫との共著、共同通信社、1990年)、
『ぼくたちやってない  東京・綾瀬母子強盗殺人事件』
(横川和夫との共著、共同通信、1992年)などがある。

「2020年 『ひきこもりのライフストーリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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