虚数 (文学の冒険シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336035936

感想・レビュー・書評

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  • 架空の書物の序文集。ものすごくエキサイティング。特に「GOLEM XIV」は圧巻。進化と言語に纏わる講義はまさに読みたかったテーマでした。これほどスケールの大きな話でありながら単なる法螺やファンタジーとは言わせない圧倒的知識と洞察力。レムの巨大さを改めて実感しました。

  • アイロニカルに「夢」を語る方法

    レムの「架空の書籍の書評」という方法は(ローティ的な意味で)「アイロニスト」的な表現手法だと思います。「公共的な科学言論」ではなく「私的なファンタジー」として科学に関する思想を書くことによって、争いを避けられるというわけです。

    おちゃらけ、というか、ユーモアを含んだ表現も、その意味では本書に必要不可欠な要素だと言えます。ふざけた表現でも、内容を理解して共感してくれる人にはちゃんと伝わるし、そうでない人にとっては「真面目に批判する気が起きない」ので争いにならないというわけです。つまり、前者にとっては「ユーモラスな表層の裏に、骨太な思想が隠れている」ように読めますし、後者にとっては「とるにたらない妄想」として読まれるわけです。

  • 『完全な真空』と対になる本作は、『架空の書物』の『序文』……という設定の短編集。
    『書評集』であった『完全な真空』とは異なり、褒めているんだか貶しているんだか判然としないシニカルさは薄いが、書かれることのない本編(?)を読んでみたくなるのは同じ。つい、勿体ないと感じてしまう……。
    本作で一番読みたいのは『ヴェストランド・エクステロペディア』。これしかないでしょう。百科事典が大好きな人間には垂涎もの。ああ、何故これが架空の書物なのか……。

    本作では『完全な真空』のメタフィクション的な部分がかなり増幅されている……という読後感。また、巻頭の『日本語版への序文』も、それに乗っかるような形になっている。こういう『遊び』の部分も含めて面白かった。

  • 人智を超えたコンピュータGOLEMによる人類への講義が目からウロコだった。人類外からの視点で人類を見るとこうなるのかとただ感心。

  • 5つ星に近い傑作。奇想天外なテキストたち。圧巻はコンピューターGOLEMの講義。全ては理解できないが、荒唐無稽で説得力ある精緻な文章には感嘆する。

  • わあ。夜中に読み始めたら眠れないくらい脳を刺激。しかも架空の書物を取り上げているので、そちら方面好きにはたまらない。ヴェストランド・エクステロペディアの話とかどんどん膨らみそうで楽しい。

  • いやあ、奇書なんでしょうね。半分以上の跋文と奇妙な文体。SFなのか言語論書なのか哲学書なのか。「虎よ、虎よ!」に似ている感じだが、やはりレムなんでしょうね。

  • 「各項目の内容をジェスチャーで伝える」、エクステロペディア(未来に書かれるであろう内容を先取りした百科事典)ユニヴァジェスチャーモデルってwww 可笑しい。
    でも本書の白眉は、やはりコンピュータのGOLEMによる講義の章でしょうか。
    <知性>とは動物たちのあいだに空いた空虚な穴なのだとか。「誤謬の誤謬として種は生まれた」とか。…分からないこともないような気がしなくもないような。

  • 1204夜

  • [ 内容 ]
    人体を透視することで人類を考察する「死の学問」の研究書『ネクロビア』バクテリアに英語を教えようとして、その予知能力を発見したアマチュア細菌学者が綴る「バクテリア未来学」の研究書『エルンティク』人間の手によらない文学作品「ビット文学」の研究書『ビット文学の歴史』未来を予測するコンピュータを使って執筆されている、「もっとも新しい」百科事典『ヴェストランド・エクステロペディア』の販売用パンフレット。
    人智を越えたコンピュータGOLEM 14による人類への講義を収めた『GOLEM 14』様々なジャンルにまたがるこれら5冊の「実在しない書物」の序文とギリシャ哲学から最新の宇宙物理学や遺伝子理論まで、人類の知のすべてを横断する『GOLEM 14』の2つの講義録を所収。
    架空の書評集『完全な真空』に続き、20世紀文学を代表する作家のひとりであるレムが、想像力の臨界を軽々と飛び越えて自在に描く「架空の書物」第2弾!
    知的仕掛けと諧謔に満ちた奇妙キテレツな作品集。

    [ 目次 ]
    『ネクロビア』
    『エルンティク』
    『ビット文学の歴史』
    『ヴェストランド・エクステロペディア』
    『GOLEM 14』

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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