選ばれた女 1

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336047557

作品紹介・あらすじ

1930年代なかばのスイス・ジュネーヴ。国際連盟事務次長の要職にあるギリシア・ケファリニア島生まれのユダヤ人ソラルと、大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女アリアーヌ。抜群の政治センスと類稀なる美貌とでその地位を築いたソラルは、社交界の貴婦人たちを虜にする現代のドン・ファンであり、ブラジルのレセプションで見初めたアリアーヌにも危険な恋を仕掛ける。「一つ賭をしませんか。もし三時間以内にあなたが恋に落ちなかったら、あなたのご主人を部長に任命しましょう」。ホロコーストの暗雲忍び寄るヨーロッパで、死の予感を秘めながら繰り広げられる反時代的な恋愛劇。人間の愛と欲を赤裸々に描いたその物語を縦糸に、アリアーヌの夫アドリアン・ドゥームが国際連盟で過ごす怠惰な一日、アドリアンの養母アントワネットのスノビスム、ドゥーム家の人々がソラルを招待するディナーの準備、国際連盟情報部長が開くカクテル・パーティー、女中マリエットのモノローグ、ソラルの故郷からきた5人の親類の狂騒など、魅力的なエピソードが織り込まれ、二人の恋は運命の深みへとはまっていく…。アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞の恋愛大河小説。

感想・レビュー・書評

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  • 描写が細かく、重厚。ヒロインがあまり魅力的にうつらなかった。
    男性の性的魅力について、女性についての考察が面白い。

  • 1930年代のジュネーヴ。ギリシャ生まれのユダヤ人で若くして国連事務次長を務める美貌のソラル。大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女にして、出世と見栄しか頭にない小心者の外交官ドゥーヴの妻アリアーヌ。社交界のドンファンたるソラルはアリアーヌを見染めて危険な恋を仕掛ける。「賭けをしませんか。もし3時間以内に貴女が恋に落ちなかったら貴女のご主人を部長に任命しましょう」こんなセリフ、ぜってー言えねえー!ソラルは女を堕とす11の法則を独り言のように語り出す。語り終えたときにはもうアリアーヌはソラルのもの。ホロコーストが忍び寄る暗澹たるヨーロッパで繰り広げる反時代的な恋愛劇…二人は愛の真実を知り肉欲へとハマっていく。いやらしい。欲求の描写が細かくてエロい。
    この現代フランス文学の傑作は、プルースト的瑣末主義とセリーヌばりの溢れ出す独白表現、サンドラール的露骨な自然主義を併せ持つ異常な恋愛大河小説なのだ。人間の虚栄心や嫉妬、高揚感など思考を辿って非現実なほどに無駄なセリフを全て語らせる。そしてアリアーヌが恋に堕ちると彼女の恋心、不安、浮かれた気分などの全ての感情が語られる。ここの描写は見事なもので主人公にシンクロして怒濤の恋愛をし疲れ果ててしまうのだ。

  • 読むのにやたらと時間がかかった。面白いんだけど、なかなか前進しないという、ちょっと珍しい本。
    全体的に、豪奢かつグロテスク。美しいのに醜い。

    恋愛の始まりなのに、既に終わりを意識している。恋愛の終わり、というより人生の終わりを。「どんなに美しくても、最後はみんな土の下で朽ちた死体になるんだ」という想いが、通奏低音のように鳴り続けている。

    下巻に進もう。

  • 恐ろしく濃厚な愛の軌跡。

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著者プロフィール

1895年、コルフ島に生まれる。5歳で両親と共にマルセイユに移住。ジュネーヴ大学法学部で学ぶ。1919年、スイス国籍取得(それまではオスマン=トルコ国籍)。フロイト等が編集委員に連なる雑誌「ラ・ルヴュー・ジュイヴ」の編集に携わり、1925年1月第1号を発行、シオニズムの大義の鼓吹者となる。小説「ソラル」(1930)、「釘食い男」(1938)で名声を博する。1939年、ユダヤ機関の政治局顧問となり、パリで政治に外交に手腕を発揮するが、大戦勃発と共にロンドンに逃れ、ユダヤ機関の代表として各国の亡命政府とナチスから逃れてきたユダヤ人との協力関係樹立に重要な役割を果たす。

「2020年 『おお、あなた方人間、兄弟たちよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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