廃用身

著者 :
  • 幻冬舎
3.79
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本棚登録 : 386
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344003408

感想・レビュー・書評

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  • 作者の名前って本名なんかなー。「やーい、メリノー種!」とか「羊毛!」とかっていじめられそう。いい名前と思うけど。母がこれはSFミステリやろって言ってたけど、ミステリの範疇なんかなー。それがミステリ。

  • 小説借りたつもりだったのに、ノンフィクション!?!?とまんまと騙された口です。前半だけでも充分衝撃的だったのに、後半は(どこまで行くんだ〜!)と内心叫びながら読んでいました。一番印象的なフレーズは何度か繰り返されていた「介護資源は有限である」です。仕事でいつも「リソースが××」なんて言ってますが、30年後40年後のことを考えると子どもを産むことについて少し考えてしまいますね。

  • 小説を、あたかも実在の手記であるかのように書く手法。それ自体は別に構わない。ただ、ここまでやってしまうとやり過ぎではないだろうか。
    前半部分、かなり話がうまく進みすぎではあるが、とりあえず読むのは読めた。しかし後半は興味が持続せず、流し読みで終わらせてしまった。

  • 「廃用身」とは脳梗塞などの麻痺で回復の見込みがない手足のこと。

    パプアニューギニアでマラリアの研究をしていた漆原糾は帰国後、老人デイケアに勤務し、老人介護の現場でさまざまなお年寄りに接していた。
    そこで思いついたのが廃用身の「Aケア」。つまりAmputation(切断)すること。
    思い通りに動かない、肝心なときには邪魔をする麻痺した手足。切ってしまえば重量が減るから床ずれも治り、血流が必要なところだけに行渡り活発に動けるようになる。
    そして介護する人間も楽になる。
    お年寄りのQOL(生活の質)を高めるため、「治療(キュア)」ではなく「介護(ケア)」の一環として考案された「Aケア」。
    デイケアの老人たちには好意的に受け入れられた「Aケア」だが、外部から見た場合、手足のない老人の集うデイケアは異様な光景だった。
    やがて始まった、マスコミによる攻撃。
    漆原は「Aケア」についての誤解を解くため、手記を出版することにするが・・・。

    といった内容なのですが、読後思わず笑ってしまいました。さすが幻冬舎、よくやるわ。
    これはね~、ほんとに騙されましたよ。もう笑うしかないくらい。なんとなく鳥飼否宇さんと同じ匂いがしました。
    ひとに紹介したくなる本ですね。ぜひ読んでいただきたいです。

  • なんか読み終わったあと、すっごい脱力感。体の一部が動かない人にとって、その部分を切断して生活することが身軽なのかどうか。介護する人の負担が軽くなるのかどうか。よかれと思って提案したことから、医師自らが精神を病んでいく。難しい問題なんだろうな、と思う。人としての尊厳もあるから、体の一部がないことがたとえ機能していなくても平気なのかどうか。考えさせられる1冊。ラストの一文が頭に残っている。

  • (図書館)
    高齢社会の現実を直視して

    フイックションであるが、現実にある固有名詞と
    架空の固有名詞が使われており微妙に
    現実に身の回りで起こっていることのように思われ
    (特にこの小説の舞台である神戸を私が良く知っているためもあり)
    設定がショッキングであり、
    社会に対しての提起でもあるかのような表現でもあるため
    ノンフィクションのような様相を醸し出し
    引き込まれていった
    小説というものというカテゴリーに入れられるかどうか
    主人公の医師の遺稿という形の内容が前半で
    その主人公に本の出版を依頼した出版社の社員と
    その医師とのやり取りや
    医師を取材しての経過、医師を取り巻く人々の様子の取材が
    後半半分という形である
    そのような形を取っているこの本、途中まで読み進めていくうちに
    この話がきっちりとした形で最後を収めてくれるのかどうか
    それが心配になったが
    その心配をよそにみごとな結末で締めくくっているところが
    とてもすばらしい

    著者に代わってストーリーを語る二人を登場させ
    一見するとふざけた悪趣味なアングラ小説か
    何かになってしまいそうな設定を
    特に小説っぽい体裁にしたりせず
    出版社の人が遺稿と医師の取材の報告の本という形で
    奥付けまでつけてまじめな形で載せている

    このような形の小説に
    著者のみごとなアイデアと知性を感じる

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語である。医師・漆原糾は、神戸で老人医療にあたっていた。心身ともに不自由な生活を送る老人たちと日々、接する彼は、“より良い介護とは何か”をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。漆原が医学的な効果を信じて老人患者に勧めるそれは、動かなくなった廃用身を切断(Amputation)するものだった。患者たちの同意を得て、つぎつぎに実践する漆原。が、やがてそれをマスコミがかぎつけ、当然、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道する。はたして漆原は悪魔なのか?それとも医療と老人と介護者に福音をもたらす奇跡の使者なのか?人間の誠実と残酷、理性と醜悪、情熱と逸脱を、迫真のリアリティで描き切った超問題作。

    これってどこまでありなんだろうと、思うのでした。
    自分が切られたら、それは嫌かも。

  • 05.2.5

  • 私はまんまと騙されました。
    後でノンフィクションではなく、フィクションだったのねと気づきました。
    体の動かなくなった部分を切り落としてしまうという突拍子もないことをさらりと書いているのに読むうちにどんどん引き込まれ、実際あったことのように錯覚してしまいました。
    すごいです。医師の最後は出来すぎて鳥肌ものです。

  • 老人医療の崩壊は始まっている。
    年金は始まったときから破綻している。
    医療保険もこのままでは(あるいは多少の政策的カンフルがあったとしても)ゆっくり破綻することがすでに見えている。
    税金はあがり、ガソリンも消費財の価格も上がる。
    そして老人は増え、若い世代は減る。

    この本で扱っているテーマは、とても根が深い。
    社会への怒り、システムへの怒り、自己への怒り、
    いろんな怒りを醸成し、爆発させるエネルギーがある。
    つまりは、それは問題提起。

    このままで、いいのでしょうか。
    という訴えと嘆き。

    そういうものを内包する本だけど、
    最後まで読んで、「ああ、そうか。」と。
    そう、これは問題提起の本では決してない。
    そんな意図はないのだと、感じた。

    これは娯楽。
    うつつの地獄、うつつ人の業、読者の絶望を、
    開放してあげる最後の最後のカタルシス。
    構造もコンセプトも、ミステリー小説や悪趣味な娯楽小説とまったく同じ、ニッチなエンターテイメント。

    「ああ、よかった。」って安心した自分に、
    3時間後にちょっとガッカリした。

    読者の感情を徹底的に操るジェットコースター小説。
    傑作なのは間違いない。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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