- Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344003408
感想・レビュー・書評
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作者の名前って本名なんかなー。「やーい、メリノー種!」とか「羊毛!」とかっていじめられそう。いい名前と思うけど。母がこれはSFミステリやろって言ってたけど、ミステリの範疇なんかなー。それがミステリ。
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「廃用身」とは脳梗塞などの麻痺で回復の見込みがない手足のこと。
パプアニューギニアでマラリアの研究をしていた漆原糾は帰国後、老人デイケアに勤務し、老人介護の現場でさまざまなお年寄りに接していた。
そこで思いついたのが廃用身の「Aケア」。つまりAmputation(切断)すること。
思い通りに動かない、肝心なときには邪魔をする麻痺した手足。切ってしまえば重量が減るから床ずれも治り、血流が必要なところだけに行渡り活発に動けるようになる。
そして介護する人間も楽になる。
お年寄りのQOL(生活の質)を高めるため、「治療(キュア)」ではなく「介護(ケア)」の一環として考案された「Aケア」。
デイケアの老人たちには好意的に受け入れられた「Aケア」だが、外部から見た場合、手足のない老人の集うデイケアは異様な光景だった。
やがて始まった、マスコミによる攻撃。
漆原は「Aケア」についての誤解を解くため、手記を出版することにするが・・・。
といった内容なのですが、読後思わず笑ってしまいました。さすが幻冬舎、よくやるわ。
これはね~、ほんとに騙されましたよ。もう笑うしかないくらい。なんとなく鳥飼否宇さんと同じ匂いがしました。
ひとに紹介したくなる本ですね。ぜひ読んでいただきたいです。 -
なんか読み終わったあと、すっごい脱力感。体の一部が動かない人にとって、その部分を切断して生活することが身軽なのかどうか。介護する人の負担が軽くなるのかどうか。よかれと思って提案したことから、医師自らが精神を病んでいく。難しい問題なんだろうな、と思う。人としての尊厳もあるから、体の一部がないことがたとえ機能していなくても平気なのかどうか。考えさせられる1冊。ラストの一文が頭に残っている。
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05.2.5
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私はまんまと騙されました。
後でノンフィクションではなく、フィクションだったのねと気づきました。
体の動かなくなった部分を切り落としてしまうという突拍子もないことをさらりと書いているのに読むうちにどんどん引き込まれ、実際あったことのように錯覚してしまいました。
すごいです。医師の最後は出来すぎて鳥肌ものです。 -
老人医療の崩壊は始まっている。
年金は始まったときから破綻している。
医療保険もこのままでは(あるいは多少の政策的カンフルがあったとしても)ゆっくり破綻することがすでに見えている。
税金はあがり、ガソリンも消費財の価格も上がる。
そして老人は増え、若い世代は減る。
この本で扱っているテーマは、とても根が深い。
社会への怒り、システムへの怒り、自己への怒り、
いろんな怒りを醸成し、爆発させるエネルギーがある。
つまりは、それは問題提起。
このままで、いいのでしょうか。
という訴えと嘆き。
そういうものを内包する本だけど、
最後まで読んで、「ああ、そうか。」と。
そう、これは問題提起の本では決してない。
そんな意図はないのだと、感じた。
これは娯楽。
うつつの地獄、うつつ人の業、読者の絶望を、
開放してあげる最後の最後のカタルシス。
構造もコンセプトも、ミステリー小説や悪趣味な娯楽小説とまったく同じ、ニッチなエンターテイメント。
「ああ、よかった。」って安心した自分に、
3時間後にちょっとガッカリした。
読者の感情を徹底的に操るジェットコースター小説。
傑作なのは間違いない。