- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344021051
感想・レビュー・書評
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朝井リョウ『もういちど生まれる』読了。オムニバス小説で、とてもテンポ良く読めた‼︎1日で読んでしまった。連作短編だったので、主人公が変わるのだけれど、全体としての世界観は変わらなくて、劇を見ているようだった。私には朝井リョウさんの作品は感情移入型というよりは、観劇型の小説。
朝井リョウさんの小説読む度に、何処かで悔しいという感情に心が騒めく自分がいる。努力や汗を全く見せない朝井リョウさんの、素晴らしい才能に嫉妬している自分がいる。
朝井さんの小説の登場人物は、ある種勝ち組の人間ばかりで萎える。ああ、憎らしいのに、また朝井リョウが読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それぞれつながりのある、5人の物語のオムニバス。『桐島、部活やめるってよ』の大学生版と考えるとわかりやすい。それぞれの話には、最後にどんでん返しというか、サプライズのあるものも多く、また、各エピソードの話のつながり方も秀逸で、個人的には『桐島』より面白く読めた。大学生(若者)特有の、「何者」かになりたいと思うのに、「何者」にもなれない(ように感じる)もどかしさがよく表現されていると思う。
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19歳って、私にはまだ遠いことのように感じますが、この本読んでたら今からいろいろ考え始めといた方がいいのかもって、少し焦りを感じたりもしました。(笑)また19歳になったら読み返してみたいです。
みんながいろいろな気持ちを抱えて生きてるって言う当たり前のことをすごく感じられる本だったと思います。 -
20歳の彼らが抱える現在の悩み、将来への不安を描いている。タイトル、帯から不安を力に変えてリスタートする物語だろうと察していたのだが、読後に切なくなる話が大半だった。
僕と同じ平成元年生まれの若い著者の文体は読みやすく、学生の僕が普段学校で見たり、聞いたりしてる学生の姿が文章を通して容易に想像できた。しかし、食べやすいが噛みごたえがないスイーツのような「甘い」文章だとも感じた。登場人物の心理描写が浅いと思うし、それゆえに「最初の一歩」のインパクトが弱いという印象を受けた。もっと深く掘ってそこから這い上がってくる様を読みたかったというのが本音である。
直木賞候補作ということで多少の期待をもっていたが、少し残念だった。でも、この一作で著者に失望したということではないし、他の作品のレビューにも書いてると思うが、一作読んだだけでその著者の評価を確定してしまうのはもったいないことだと思うのだ。現に僕は『星やどりの声』を次回は読みたいと思ってる。探せばいるのかもしれないけれど、同い年の作家さんを知ったのは朝井リョウさんが初めてだから、応援したい気持ちがちょっとある。このちょっとが「とてもある」になるか「全くない」になるかは過去の作品、そして彼の今後の作品次第だ。 -
20歳前の大学生、浪人、専門学校生を描いた短編連作。
高校生よりはちょっと世界が広く、初めての経験もまだ期待感があって、ゆったりしているような~
でも、社会に出る日は近づいていて、自分の限界に直面しつつある…
青春群像というには軽めだけど~優しくて、重すぎない所が、なかなか感じはいいです。
「ひーちゃんは線香花火」
R大学に入学して13ヶ月。
何も成長しない一ヶ月が積み重なっただけのような気がしている汐梨。
ひーちゃんこと、ひかると、風人の3人で、今日も麻雀。誰が見てもクラスで一番美人のひーちゃんだが、最初の一言でクラスの女子を敵に回した。風人は小型犬系の男子。
ややはみ出し気味の3人が仲良くなったのだ。
汐梨には尾崎という彼氏も出来たので、もうこの3人だけでいっぱいいっぱい。
ある日、寝ている間に誰かにキスをされ…?
「燃えるスカートのあの子」
翔多はバイト先の休憩室でハルを見つけ、今日も椿ちゃんの話をせがむ。
大学で一緒の椿という可愛い女の子に夢中なのだ。椿には彼氏がいるのだが。
黒髪に青いメッシュを入れたかっこいいハルは、専門学校に通うストリートダンサー。椿とは高校の時に仲が良かったという。
同じ講義を取っている友達の礼生は、もしゃもしゃの頭に虹色の眼鏡。いくつも映画サークルに入っている。
椿が、礼生が撮る学生映画に出ることになったと知る翔多。
なんと、椿が礼生を好きになったかも…?
「僕は魔法が使えない」
美大に通う渡辺新は、ナツ先輩に憧れている。
先輩の絵は美術展で高い評価を受け、一号館のスペースに張り出されている。光が交錯するクラブで踊るダンサーの絵。
新の父は交通事故で亡くなり、1年後に母が鷹野さんを家に連れてくるようになった。
新はナツ先輩に人物画がいいと言われ、たまたま下北沢駅で見かけた結実子という女の子にモデルを頼むが…
「もういちど生まれる」
柏木梢は二浪中。
予備校の堀田先生に恋している。
梢をこっさんと呼ぶ風人は、幼稚園から高校まで一緒だった~双子の区別が出来る数少ない人間。今は大学で、ひーちゃんに片思いしているという。
梢の双子の姉の椿は、要領よく推薦で大学に入った。
読者モデルをしている華やかな椿。
どこをとっても少しずつ地味な外見の梢は、姉が大嫌いだった。
濃いメークをすれば、ほとんど同じにも見えるのだが。
二十歳の誕生日、華やかに祝われた椿の携帯に掛かってきた連絡を見て、思わず…
「破りたかったもののすべて」
ハルこと遥は、ダンスが出来てカッコイイと以前から友達や後輩に評価されてきた。
同級生のとても可愛い女の子・椿は、高校で最初は人気があった。読者モデルとして祭り上げられた頃から友達がだんだんいなくなり、タイプの違うハルに近づいてきたのだ。
可愛いだけの椿や、部屋にこもって絵を描いているだけの兄のナツは、努力が足りないと思っていたハル。
だが、自由に踊るロックダンスをしてきたハルは、基礎訓練が出来ていなかったことを痛感している。
今は後列の端で踊るのが定位置で、大きなステージに上がるダンサーになるのは難しいのだ…
ハルをカッコイイと思ってくれている翔多には、それらしくふるまおうとするが。
ある日、兄のナツに、絵を見て欲しいと言われたハルは…
こういうのって、あるよねえ…
と何だかちょっと気恥ずかしくなりつつ。
当人はこの時辛いだろうなと思いつつも、どこかさわやかで初々しい。
2011年12月発行。
4作目になるのかな? -
むーん、困ったなあ。ご近所の子のように身びいきしている(何故だ?)朝井リョウ君の新作。黒ーいことを言おうとすると色々ある。なのにどういうわけか魅力的。まったく感想が書きにくい。
「桐島」のような設定で、どこかでつながっている幾人かにそれぞれスポットが当てられた短篇から構成されている。今度は大学生に当たる年齢なんだが、基本的に「桐島」の高校生と一緒だ。幼い。自分の周囲のせまーい世界の中で「自分の立ち位置」ばっかり気にしている。
まあ、それが若者には切実なんだから、胸にしみる人も多いだろう。でもさ、人生で大事なのはそんなことじゃないよ、とオバサンは思う。大体登場人物がみんな、人並み以上の容姿の持ち主だっていうのはどうよ。勝手に悩んどきなさい、なぞと言いたくなる。確かにある種の若者の心情をすくい取ってはいるけれど、「あーそう」という感じだ。「中学校の教室的価値観」なんて早いとこ捨てなさいな。
と、くさしてはみたものの、最初に述べたように妙に惹きつけられるので困っちゃう。真剣だからかなあ。「悩んでるアタシ」に酔ってるっていう感じではないところに、爽やかさを感じるのか?結局「若さ」ってまぶしいなあと思ったりして。なんとも評価に苦しむ一冊。ああ、次作も読みそう。-
おっしゃること、いちいち腑に落ちます。(*^_^*) あまりの幼さに文句タラタラなんだけど、じゃあ読むの止めるか、って言われるともうちょっと...おっしゃること、いちいち腑に落ちます。(*^_^*) あまりの幼さに文句タラタラなんだけど、じゃあ読むの止めるか、って言われるともうちょっとだけフォローしたい、と思ってしまう…。
そうですね、朝井くんの真面目に小説に取り組んでいる姿勢、が好きなんだと思います。
こんなに頑張って書いているのだから、そのうち大化けする可能性あり??でしょうか。2012/01/27 -
まったくね、アラばっかり目につくのに何故贔屓したくなるんでしょ。
何だかわが息子をみているときと似ているような。ああ、若いってバカだなあ、...まったくね、アラばっかり目につくのに何故贔屓したくなるんでしょ。
何だかわが息子をみているときと似ているような。ああ、若いってバカだなあ、でも若いっていいなあと、よく思うのです。(うちのぼんくら息子と一緒にしてゴメンね、朝井君)
じゅんさんのおっしゃる通り、斜に構えてないところがいいんでしょうね。これからどう変わっていくんでしょうか。2012/01/28
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共感できる若さがもうない。
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最初の話が終わって短編小説?かと思ったら次々と登場人物たちが繋がっていくのがおもしろかった。最初は青春って感じだったけど、10代の周りを気にする不安定な気持ちが良い感じでした
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あの子のようになりたい、あの子と私が入れ替わることが出来たら...上手く生きられない弱い自分を言い訳に、正反対のあの子と自分を比べて私は下を向いていた。あなたにしかない素晴らしいところがあるんだよ、そんな風に誰かに言って貰えて初めて気付くなんて、私は大切なことを見失っていた。ちゃんとありのままの私を見てくれている人がいたのに。上手く笑えなくても、不器用でも、私だって飛ぶことが出来るんだ。今日泣いていても、明日にはまたもう一度生まれた私が笑っている。
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5編の短編だが、それぞれの登場人物が相関している。それぞれ面白い物語にはなっているが、記憶には残りそうもなく読み捨て小説のようだ。内容はまだ社会に参加していないモラトリアムの中に存在する学生またはそれに準ずる若者の心理描写の物語である。この間ピアニストの中村紘子が亡くなったが、その夫である庄司薫もこういった学生の話を書いていたなあと懐かしんでしまった物語であった。