ハードボイルド,ハードラック (幻冬舎文庫 よ 2-6)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344401594

感想・レビュー・書評

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  • 心に、じんわり感が不足していて、何かを補給せねばと思い、急いで本棚から取り出し、「ハードラック」の方だけを読む。
    悲しみと優しさが詰まっていて、自然と涙が出てきて、心が潤ってくる。

  • 奈良美智さんのジャケットに惹かれて!

    奈良美智の書く女の子、私に似てるって言われたよ

    ボブ×童顔だからだと思うけどそれ以来勝手に

    親近感を抱いてます♪

  • ひたすらに夜の雰囲気が漂う作品。ホラーみたいな気運が立ち込めていて、じとっとした暗さがある。
    ちょっとこわかった。

  • ちょっと久しぶりのばなな。彼女の作品はタイトルも物語世界も、どこかふわふわして不思議ですが、これはいつになく、固いタイトルだと思いました。

    「ハードボイルド」と「ハードラック」という2編が収録されています。
    どちらも主人公は女性で、失われた、もしくは失われつつある、かつて愛情対象にあった女性への思いが中心になっています。

    「ハードボイルド」は、元恋人を失ったことで、死が大きく彼女に迫りくる不安感が、いろいろな形で表れてきます。無理心中をした幽霊が出てきたり、不幸の塊のような黒い石が出てきたり、少し背筋がぞっとする話でした。
    奈良美智のイラストが挿入されており、不気味さが増幅されています。
    実はこの人の絵、怖くて苦手な私。表紙を見るだけでも腰が引けてしまいました。

    「ハードラック」は、まず言葉の意味を知らなかったのですが、テニスで、パートナーや相手の惜しいミスや敗戦に対してかける言葉だそうです。
    「ドンマイ」みたいなものでしょうか。

    こちらは死にゆく姉を前にした妹の思いが綴られています。
    見守ることしかできない、無力さをかみしめる家族の側から姉と向き合う主人公。
    姉の婚約者の兄(ばななはこういう、若干ややこしい相関関係が好きですね)との交流で、心が癒され支えられ、姉の死を受け入れていく過程が描かれています。

    どちらも短編で、喪失と再生について書かれています。
    ただ、ばなな作品は、あまりにも「死」が多すぎて、正直(またか)と思いました。
    殺人事件でもないのに、人が死んでばっかりです。
    実際、生きていく上では、そこまで頻繁に若い人が死ぬことはないと思いますが、ばなな作品を読んでいると、なんだかしょっちゅう死による別れに直面します。

    死は、確かに最大の喪失となり、残された人はかなり特異な心理状況下に置かれるため、作品のモチーフにしやすいのかもしれませんが、喪失による絶望を描く時には、もっといろいろな別の形でアプローチしてほしいと思います。

    それにしても、寿退社による仕事引き継ぎの忙しさで脳溢血で植物人間となるなんて、あまりにも哀れな話ですね。ばななの手にかかって、生々しさは抜け、作品にはただ漠然とした悲しみが漂っていますが、これでは残された人々は心をどう支えればいいのか、確かにわからなくなってしまうでしょう。

    喪失感に襲われて苦しみながらも、再生という光へ向かっていこうとする、弱い人間の魂が描かれています。

  • 普通を楽しみに変える才能     

    淡く、薄い印象がある。
    死体も刑事も、不在証明も無ければ、性愛情景も殆ど無い。奇矯な人物も、欠落した記憶などなど、人の世にある刺激的なことは殆ど無い、か目立たない。

    際だつのは、普通の見過ごしがちな機微に気づき、書き留めておくこと、頭の中にだかノートにだかはしらないが、日常的な出来事の中に潜む感動を、平易な文章で語りかけること。吉本ばななは、非常にそれが上手。

    日常を物語の中に描写することにかけて、何の脈略も無く二人の作家を思いついた。片岡義男は細部に拘り、川上弘美は情感豊かといった印象がある。向田邦子はTV向きに大袈裟にする傾向がある。吉本ばななは、極普通に扱う、いともたやすく、そして平易なため見過ごしてしまっても何の問題もないかのように、本屋にある。映画で単館モノと呼ぶ作品軍があるが、そういった佇まいだ。

    この小説の感想というより、吉本ばなな論的になってしまった。
    佳作です。もう少し社会的な事柄を交える方が好みだが、十分楽しめる。

    2010/06/21読了、文京図書館から借用。

  • 短編、ものすごい短編だけど、心にしみた。

    「人は、自分が相手に飽きたから、もしくは自分の意志で、
    あるいは相手の意志で別れたのだと思いこむものだ。
    でも、それは違う。
    季節が変わるように、時期が終わるのだ。
    ただそれだけだ。それは人間の意志ではどうすることも
    できない。だから逆に言うと、それが来るその日まで、
    楽しく過ごすことも可能だ。」

    『ハードボイルド』はオカルト系。
    『ハードラック』はライフ、恋愛系。

    なんだかすごく切なくなる話だった。

  • キュンとしたり、切なくなったり。うつろい易い乙女心の表現に共感。
    言葉の紡ぎ方が美しく、また素敵な挿絵にも目を奪われます。
    恋する乙女におすすめの一冊。

  • 最初に読んだ時は、
    「ハードラック」のほうが好きだったのですが、
    今読み直したら、
    「ハードボイルド」のほうが面白かったです。

    「ハードボイルド」は、
    かつて同棲していた同性の女性の命日に、
    たまたま泊まったホテルでおかしなことに
    遭遇してしまった主人公のお話。

    死者に出会うなんて本当に恐い。
    でも、本当に恐いのは生きた人間のほう。
    でもでも、最後に世界を救ってくれるのも生きた人間。

  • 奈良美智の挿絵がよくにあう。やさしいざんこく。

  • 誰かの死を緩やかに受け止める事は難しいと思う。自分ならこんな風にはいかないだろうなぁ。境くんとの距離がとても好きな感じな距離でドキドキした。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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