銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫 た 43-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415324

感想・レビュー・書評

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  • 銀二貫。
    今のお金でどれほどの価値があるのだろう・・・。

    雪が辺りを真っ白に染めた睦月。
    大坂の寒天問屋・井川屋の主である和助は、仇討ちにより父親を失った十歳の鶴之輔を助けるため、その相手に天満宮再建のために寄進するつもりの銀二貫を差し出す。
    武士の子であった鶴之輔は松吉と名を改められて、井川屋に丁稚として奉公するのだった。
    武士のしきたりとはまるで異なる商人の世界。
    穏やかで情の深い主や、厳しい番頭、丁稚仲間に囲まれて一つひとつ仕事を覚えていく。
    また、寒天を納める先の料理人やその娘の真帆によって、仕事に対する誠実で真摯な姿勢をあらためて知ることに・・・。

    市井の人が困難に見舞われながらも、決してあきらめず騒ぎ立てもせずにその事実を粛々と受け止めて、最後には自分の目指した境地に到達することができるというのは、髙田郁さんの得意とするところ。
    1巻で完結するので「みおつくしシリーズ」と比べると人情味あふれる場面も割合あっさり(←髙田さん基準)かなとは思う。
    それでも、読みだしたら止まらないのいつもの通り。
    寒天を極める苦労や、自分が目指す商品開発にまつわるあれこれ。真帆との愛情。
    そして、極めつけは仇討ちのその後。
    1冊の中に盛りだくさんで、ドラマになるのも合点がいく。

    いつも通りに楽しめる1冊ではあったが、最も心惹かれたのは、銀二貫の行方。
    仇討ちに支払い果たせなかった寄進のために、井川屋で爪に火をともすようにしてお金を蓄えても、大切な人の一大事にはあっさりと大金を渡してしまう。
    主人の和助のお金の使い方には惚れ惚れした。
    こういうお金の使い方ができるオーナーはなかなか現代には出てこないでしょう。
    お金は使ってこそ。血のように巡ってこそ。
    政治経済の授業で聞いた、銀行の等比級数的お金の貸し付け。
    お金の価値を上げるのは使い手次第なんだね・・・。

  • 高田 郁氏の「銀二貫」を読みました。
    ほっこりとした すごくいいお話でした。

    巻末の解説は毎日放送の水野晶子アナウンサー。
    この解説もすごくよかった。。

    最近の中でもヒットですね。
    オススメの一冊です。


    高田 郁氏の「銀二貫」を読みました。
    ほっこりとした すごくいいお話でした。

    巻末の解説は毎日放送の水野晶子アナウンサー。
    この解説もすごくよかった。。

    最近の中でもヒットですね。
    オススメの一冊です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      いるかさん
      図書館でお二人の対談を聴いた事があるのですが、素敵でした。
      いつか水野晶子(元?)アナウンサーの朗読会に行ってみたい!
      いるかさん
      図書館でお二人の対談を聴いた事があるのですが、素敵でした。
      いつか水野晶子(元?)アナウンサーの朗読会に行ってみたい!
      2020/10/30
    • いるかさん
      猫丸さん
      コメントありがとうございます。
      中学生時代から毎日放送ラジオが大好きで、少し前にも川柳の番組で水野晶子アナに読んでいただき、毎...
      猫丸さん
      コメントありがとうございます。
      中学生時代から毎日放送ラジオが大好きで、少し前にも川柳の番組で水野晶子アナに読んでいただき、毎日新聞の一面に載せていただきました、
      水野さん 知的で素敵ですよね。
      私も朗読会に一度行ってみたいと思います。
      2020/10/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      いるかさん
      ヘェ〜川柳を!羨ましい、、、
      高田郁と水野晶子アナの出会いのエピソードを思い出して、ウルウルなっている猫でした。
      いるかさん
      ヘェ〜川柳を!羨ましい、、、
      高田郁と水野晶子アナの出会いのエピソードを思い出して、ウルウルなっている猫でした。
      2020/10/31
  • 読み終わるまでだいぶ長い時間をかけてしまった。普通だったら1冊の本をこれだけ長い時間かけてしまうと、必ずといっていいほど内容を忘れていたり、登場人物の名前を忘れたりするのだが、こちらに関しては、全くそのようなことがなかった。

    時代小説はどちらかというと苦手な方なのだが、時代小説特有の『熱さ』に浸りたくて読み始めた。しかし、これは私が思い描いていた熱さではなかったが、しっかりと熱い物語だった。

    さて、目の前で侍が仇討ちをしようというところに出くわした和助。辻斬りに遭おうとしているのは、親子連れ。親は刺され、あわや、まだ年端もいかぬ子どもも斬られそうなところに割って入った和助。これでこの場を収めてくれと、その侍に銀ニ貫を渡す。銀ニ貫といえば、今で言う相当な金額。それを侍に渡すと、子どもを引き取ったのだった。

    和助は寒天問屋、井川屋の主人。その銀ニ貫は、先の大火で焼けてしまった天満宮再建に用立てて頂こうと必死に貯めたものだった。和助に助けられた子どもは、名を松吉と改め、井川屋の丁稚として必死に働き出す。

    この物語では、火事が度々起こり、その猛威は町を丸々と焼き尽くしてしまう。火事によって多くのものを失う松吉や和助を始めとする多くの人々。それでも何度でも立ち上がり必死に前を向いて生きていく。

    銀ニ貫。和助たち井川屋では何度か貯めることに成功するが、その度災難が起こり、和助は躊躇なくその銀ニ貫を放り出すのだ。和助の心意気は本当に惚れ惚れする。そして、しっかりと成長していく松吉も見ていて気持ちがいい。

    最後に善次郎の耳元で囁いた和助の言葉がなんとも最高だ。
    私からも和助さん、ほんに安うて、ええ買い物でおました。

  • 感無量。こんなに面白い本にめぐりあえるなんて幸せだなぁ。

  • 面白い。
    父親を敵討ちで失った主人公の鶴之助。天涯孤独となった鶴之助を銀二貫で、井川屋主の和助が丁稚として、受け入れるところから始まる。
    火災火災のオンパレードだが、真帆をはじめとするいろいろな人との出会いで、物語が進む。
    最後は良いまとまりになっている。

  • 時代小説初めて読んだけど楽しんで読めた。
    大阪人だからかな?お話がすごく好き。

    アルバイトしてたら張り紙の文字を読んでも店員に質問してくるお客さんいっぱいいる。今まで不満に思ってた。「書いてるやろ」って。
    でもなんかこの本を読んで変わった。
    やっぱり人間同士のやりとりに勝るものは無い。ロボットがどれだけ言っても、紙にどれだけ書いても、信頼関係ってのは人と人とが作るものなんだな。
    商売するということ、お金のやり取りをするということ、全て人との繋がりが根底にある。

    松吉が帰郷するところ、嬢さんに想いを伝えるところ。泣いた。

    大阪の人でよかったと思える作品。

  • 真っ直ぐで心優しい松吉を始め、個性豊かで温かな登場人物達が繰り広げる義理人情のお話。
    大坂の街で生きる登場人物の一人一人が生き生きとしています。文章も読みやすく、登場人物達の関係性も複雑ではないので、時代小説を読んだことが無い人にもオススメです。

  • 唸らされる本です。

    商人の暖簾の考え方、職人の探求心が堪能できます。
    その中でも純愛の話あり、利他の話あり。
    それらが筋が通って物語の最後の一言まで貫いています。

    個人的には高津の梅が高校時代を思い起こさせるのと
    度々おこる火事が神戸の震災の火事とリンクするので
    懐かしいやら自分が励まされるやら、みたいな感じでした。

    ということで初めての作家さんでしたが良い本でした!

  • 涙が出て止まらなかった。松吉の正しく真っ直ぐすぎる生き方と真帆の純粋で温かな眼差しが、ずっと心の中でほかほかと残っている。
    松吉の周りを取り囲む人々の温かさや人情深さにも、いつもホロリときた。
    時代が変わっても、人と人とがこんな風に過ごせたらいいのに。

  • ★二貫!
    というのは冗談で、個人的には文句なし★五つ!

    時代小説は読まず嫌いな分野であったけど、とても読みやすかったうえに、
    感動して何度も何度も目頭が熱くなった。ホントに良かった。

    大阪商人の心意気と義理人情が描かれていてるだけではなく、成功物語、純愛物語でもある。
    いろいろな要素が詰まっているけど、どれも半端にならず、濃く描かれていると思う。

    昔の時代の人の心の温かさや生きていくことの辛さ、生業にかける熱意や信念を感じ、
    そして血よりも濃いものがあるということを教えられた。

    この4月からNHKでドラマ化される。
    こちらも是非期待したい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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