ウツボカズラの甘い息 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344428027

感想・レビュー・書評

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  • 人の欲につけこみ他人に成りすます連続詐欺の話。隣の芝は見ず今の自らの幸せを認識する大切さを感じる。鎌倉の殺人事件を発端に主婦の高畑文江と刑事の秦圭介の視点で交互に展開される。偶然出会った加奈子の化粧品ビジネスに傾倒していく文江。新たな事実が次々と出てきて後半は怒涛の展開。文江の娘二人の死。受け入れられないことによる解離性同一障害。既に加奈子が死亡している事実。さらに追うことで見えてくる連続詐欺。真野知世の不幸な半生が語られる。他人に成りすまし、甘い話で獲物を寄せ付け、金を搾り取れるだけとったあと姿を消す。

    子が生まれるときは健康を願い、無事に生まれると健やかな成長を願い、頭の良さを願い、有名大学への進学など欲はきりがない。多くのものを求めすぎていたと気づくのは当たり前が失われたとき。
    秦の下についた若い女性刑事中川菜月のクールでテキパキな感じもよい。解説の松井玲奈がやりたい役らしい。なんだかなー。
    俺たちの仕事は、犯人を捕らえて被害者の無念を晴らすことだ。その任務を担っている刑事が仏を見られないでどうする。仏を見ることで犯人への憎しみと被害者への同情、検挙への意欲が湧いてくる。

  • 高村文絵は、中学の同級生で顔に傷があることからサングラスを掛けている杉浦加奈子と出会い、化粧品販売のビジネスに誘われ大金を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者になってしまった。秦と中川の捜査により杉浦加奈子が亡くなっている事。そして文絵の子供が亡くなっている事から病気のある文絵の妄想かとも思ったが、サングラスの女が杉浦加奈子の自殺にも関わっていたかもしれない事が分かり、事件は核心に近づいていった。完全犯罪を成し遂げた事で彼女は犯罪を重ねてしまったが、捕まって良かった。

  • 久々の柚月作品。

    すぐに物語の世界にグイグイ引き込まれるこの感じはやはりすごいなぁ。

    で、一気読みでした。

    本作の主人公は文絵なんだろうなぁ。

    でも秦刑事と菜月が良い味を出して作品に一層の深みを与えてくれたと思える。

    文絵を中心に描かれる視点と秦を中心に描かれる視点、最後にはそれが重なり事件の謎が明かされていく。

    キーパーソンである加奈子とは?

    明かされる加奈子の謎と文絵の家族。

    いやぁ、読み応え十分の作品でした。

    説明
    内容紹介
    家事と育児に追われる高村文絵はある日、中学時代の同級生、加奈子に再会。彼女から化粧品販売ビジネスに誘われ、大金と生き甲斐を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として突然逮捕されてしまう。無実を訴える文絵だが、鍵を握る加奈子が姿を消し、更に詐欺容疑まで重なって……。全ては文絵の虚言か企みか? 戦慄の犯罪小説。
    内容(「BOOK」データベースより)
    家事と育児に追われる高村文絵はある日、中学時代の同級生、加奈子に再会。彼女から化粧品販売ビジネスに誘われ、大金と生き甲斐を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として突然逮捕されてしまう。無実を訴える文絵だが、鍵を握る加奈子が姿を消し、更に詐欺容疑まで重なって…。全ては文絵の虚言か企みか?戦慄の犯罪小説。
    著者について
    一九六八年岩手県出身。二〇〇八年「臨床真理」で第七回『このミステリーがすごい! 』大賞を受賞しデビュー。一三年『検事の本懐』で第十五回大藪春彦賞を、一六年『孤狼の血』で第六十九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞する。他の著書に『朽ちないサクラ』『慈雨』『盤上の向日葵』『凶犬の眼』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    柚月/裕子
    1968年岩手県出身。2008年「臨床真理」で第七回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビュー。13年『検事の本懐』で第十五回大藪春彦賞を、16年『孤狼の血』で第六十九回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • トラックが追突して女の子二人が亡くなった事件、あの時のニュースの映像を今でも鮮明に覚えてる。予想しない展開に引き込まれるうえに、登場人物が偶然にも知り合いの名前ばかりで、ますます現実と入り乱れてとても辛い。これはノンフィクションだったか、と混乱してしまった。今日は寝付けないと思う。

  • 章ごとに視点が変わり、最後に繋がる展開は個人的には好きな展開。
    最初は加奈子が文絵の病気が作り出した幻影で文絵が犯人と予想していたが、捜査が進むにつれて新たな登場人物が出てきて、本当に加奈子は存在していた。
    文絵の娘が幻だったことに驚き

  • 物語が二転三転とラストまで一気読み。全く飽きさせないこの展開にただただ舌を巻くばかり。人の弱さに漬け込む悪役たちと騙される人の悲しさが浮き彫りになって心のなかが掻き回された。その辺の葛藤は解説の松井玲奈さんが代弁してくれていて、新しい一面をみたような気がした。
    女性ならではのお金と美に執着する登場人物たちが悲しくもあり人間らしくもありやっぱりせつないんだろうなぁ。

  • 今日の仕事帰りの電車の中で読み始めました。まだ序章なのでこれからの展開にドキドキしているところです。

    柚月裕子さんの作品は、ぼくのツボにとても収まりよくはまっているので、先へ先へと読み進みたくなるけれど、その一方で、物語の残りが少なくなっていくのがもったいないような気がしてしまうのでした…

    でも、読むよ〜、じっくり楽しみながら、読み進みます。評価と感想は読後に追記します…まあ、ぼくの場合は感想になってないことがとても多いんのですが(^^;
    (2020 Jan. 8, 21:33)

    読み切りました…なんて面白い長編作品なんだろう!僕が思うに、柚月作品のいいところは「悪いやつをまっとうに裁かせる」ってところなんじゃないかなぁ、と思います(佐方貞人シリーズの通奏低音がこの作品でも鳴り響いてます…)

    ベテラン捜査一課捜査員と所轄の若い女性刑事のコンビがとてもうまく物語を引っ張っていってくれて、長編の割にサクサクと読み終わりました。気持ちよかったです。

  • 育児に追われる専業主婦が偶然中学時代の同級生に再会し高級化粧品の販売に誘われる。
    成功からの転落。
    だけではない複雑怪奇で予想しては裏切られ想像の斜め上をいく展開が待っていた。
    凄く面白く読めた。
    でも描かれていない文絵のその後の精神が心配過ぎる。

  • とても面白かったが、最後が呆気無かったので
    星は3。人の心の隙間にあっさりと入り込む
    悪魔は親切心を悪意に置き換え人心を把握して
    しまう。
    人間心が弱ると何かに縋りたくなる、そこにつけ込んだ
    トリックは切ないが逸材だった。

  • ミステリ読みなれた読者なら、別々の視点で進んでいく話がどう合致するのか、すぐに想像は着くと思います。
    ネタバレにひっかかりそうですが、宮部みゆきの「火車」を想起しました。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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