じっと手を見る (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344429611

感想・レビュー・書評

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  • 2022/6/6読了。自然豊かなところでも都会に対する劣等感を感じ、仕事、恋愛もうまくいくわけではなく、ただただ日々を過ごす。気がつけば歳をとり、想像していた大人にはなれずに…みたいな重いような話。
    でもこれが現実で、みんな大なり小なり同じようなことがあるんだろう…。
    毎日無気力に過ごして、気づけば周りは誰もいなくなり、淡々と時間が経過していくのだろう。

  • もういいやってなってしまう気持ちがなんでかわかる気がした。そんなお年頃でもないけど。

    窪先生のお話は読んでる途中に日々の自分と対比して考えてしまうことが多い気がする。

  • 『じっと手を見る』窪美澄

    窪美澄さんは本当に、息が詰まりそうなくらいリアルな現実を描くのが上手だと思う。

    富士山の麓、車がなければ生きていけないような小さな町。休日の息抜きはショッピングモール。専門学校を出て、介護の職につけばとりあえずこの町では生きていける。噂話はすぐに町中をかけめぐる。

    そんな町で、たった一人の身寄りであった祖父を亡くして、祖父が遺した広い家に一人住む介護士の日奈。専門学校時代の同級生で元彼氏の、海斗。

    二人の関係を中心に綴られる、7編の連作短編集。

    東京から来た宮澤さん。
    やりたいさかり、畑中。
    畑中の子どもで、発達障害の祐紀。
    樹海。
    首を括ろうとして失敗した父親、睡眠薬を大量に飲む俊太郎さん。

    そのどれもが、富士山の見える町を背景に淡々と描かれる。



    畑中さんの話が好きだ。
    あの「どこにも行かないで」はきっと本心だっただろう。
    それでも。



    ”誰かといっしょにいたって、よるべない夜がまた来るんじゃないか。それでも。”

    夢見たハッピーエンドではないけれど、あたたかく、愛おしい。

  • この人の描く人物にリアリティを感じられない。調べると作者は60歳ぐらいの人らしい。
    あぁやっぱりと思った。

    全てをセックスに結びつける短絡的で単面的な心理の描き方に不快感を感じた。

    読み進めるのに苦労しました。読まなければ良かったとも思った。

  • 劇的なストーリーというわけではなく、日常のその辺にありそうな人間模様です。だからこそ、心に響きます。すごく綺麗というわけでも、すごく闇というわけでもない、そんなこの世の中の多くの人の感情の機微、生き方をリアルに表現していると思いました。こういう作品こそ、画面ではなく活字で活きてくるなと思います。
    物語ではよく、登場人物がなにかを乗り越えて成長したり、何かを成し遂げたりすることが多い気がしますが、この話では登場人物の誰一人、目に見えた進歩とか成功は描かれていません。もがきながら、何かが欠けてて何かに焦がれながらも、元の居場所に戻っていく感じです。
    そこが現実的だなと思いました。


  • 自ら手を伸ばしときながら
    簡単に振り払ったりする。
    身勝手で都合の良いのが人間。

    でもそれぞれいろんな想い抱えてて、
    それに共感はまったくできないけど、
    なんでか寄り添ってあげたくなった。

    遠回りはしたとしても
    みんなが幸せな居場所で落ち着けることを願うばかり、、




    “責任を感じて誰かと生活する、っていうのが1番だめなんだって。”

  • 職業『介護士』が尊重される世の中であって欲しい。
    死に向かっている人と向き合って生活を支える、ことを仕事にしながら自身の生を生きるとはどういうことなのか想像が難しい。それでも悲観ではなく、暮らしが続いていくことが想像できるラストシーンにほっこりしました。

  • *富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗はかつての恋人同士。ある時から、ショッピングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東京の男性デザイナーが定期的に通い始める。 町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説*

    苦しくて、寂しくて、寄る辺なくて。わかっているのに、泣きながら執着してしまう、恋。そんな自分を突き放して見ているもうひとりの自分。登場人物毎の目線で語られるストーリーそれぞれに哀愁が漂います。この方は、揺れ動く情景を文字に起こすのが本当に巧い。秋の夜長に、じっくりしっとり物思いに耽りながら再読したい本。

  • 「自分から伸ばした手で誰かを振り払うような身勝手さも存分に自覚しているのに、その手を伸ばさずにはいられない人々」の「寄るべなさ」に寄り添う物語。前文は、解説に書かれていたものであるが、本作品の概要そしてとてもしっくりくる。
    私の感想はほとんど解説文が代弁してくれている。
    解説文も含めて本作を読了し、なぜ私は窪美澄さんの描く作品にこんなにも惹きつけられるのか?という疑問の答えがようやく見えてきた気がする。
    窪美澄さんの作品はどこか痛くて不完全で寄るべなくて影りを感じるが、そんな中にも何処かにぽっと光る仄かな灯りが感じ取れる。それはまるで、綺麗事やハッピーなだけではない現実世界を生きる自分に、「それでも大丈夫だよ」と寄り添ってもらっているような心強さがや安心感のようなものを感じられるのである。
    目を背けたくなるような人間の欠落を敢えて描く。それを敢えて読む。そこが大事なことな気がする。
    それぞれの人物視点から七篇により構成されている長編だが、私はその中でも特に宮澤の視点で描かれている「柘榴のメルクマール」に自分が重なって見えた。

  • 海斗が幸せを手にする結末でホント、よかった。
    真面目な、海斗が報われてよかったよ。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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