- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344817944
感想・レビュー・書評
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とにもかくにも「綺麗」の一言に尽きる作品。
派手な設定もなく、大きな事件もない。
ただただ二人の心の揺れ動く様子を普遍的で、それでいて美しい文章によって見事に描かれている。
個人的に可愛い系の容姿の受はあまり好みじゃないけれど、そんな事を全く感じさせないキャラクターの魅力が十二分にあった。
鬼門の人が多い女子キャラも適当な当て馬扱いではなく、ストーリーを構成する上できちんと機能している。
ノンケとゲイの関係の難しさや、攻の感情の移り変わり、決意を効果的に魅せる要素になっている。
いわゆる「名ばかりノンケ」のような軽々しさがなく、ひたむきな受の気持ちが作品上で大切にされていて嬉しい。
若干「なぜそこまで受を好きになったの?」という過程が端折られている感も否めないが、充分カバー出来る程度には魅力のある作品ではないだろうか。
そして読み終わった後にもう一度、表紙の絵を見てみる事を推奨する。
こんなにも表紙まで二人の物語を大切にした作品に出会った事はない。
骨のあるしっかりとした恋愛、泣ける話が読みたい方にはオススメ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
彼女がいる攻めと、男にしか恋をしない受け。大学生二人の、そんなすれ違いと哀しい恋の物語を、とても丁寧に書いていると感じます。彼女も、友達としての受けも、どちらも捨てられない攻めの葛藤や、どうしても攻めへと想いを断ち切れない受けの苦しさが、読んでいるこちらも切なくなってくる。描写がとても美しく、静か。こういう書き方をする人、BL作家さんには珍しい気がします。
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ボーイズラブ小説の研究用に。裏表紙のあらすじと、表紙のイラストを見て、まあこれならハズレってことはないな!と思って購入しました。古本屋での購入なので下調べなし。初ボーイズラブ小説です。いつもオンラインの個人サイトのものしか読まなかったので・・・。
どういう風に文章が書いてあるんだろうとか、台詞の感じとか・・・が知りたかったので、内容は重要ではなかったのですが(ごめん)、読み始めてみると観覧車の中の時点ですでに私の好みを外れてしまった現実(本当にごめん)。
文章はともかく台詞とか、ボーイズラブ小説というのはこういうものなのだろうかと悶々・・・作家さんによって違うものですよね? 固有名詞がぽろぽろ出てくるものは、私はあまり好きではなかったみたいです。あと、本当に喋ったままみたいな台詞。・・・ワガママな好みですね、改めて思うと。
全部は読みませんでしたが、終わりには目を通しました。らくらくホンは吹いた。 -
2回も続けて読んでしまいました。ハルの暁行に対する愛情が静かに溢れてくるようなとこがせつなくて愛おしくてたまりません。
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【あらすじ】
夜景、港町、観覧車。完璧すぎるロケーションで入江暁行は「好き」と告げられた。三年間も友達として側にいた柘植遙から。実家が藍を作っていて、爪の先をいつも青く染めている遙。笑うと寂しげな顔が明るくなる遙。男なんて絶対ありえない、でも居心地いい彼の隣は手放したくない。誰にも言えない困惑を、暁行はブログに綴ることにするが―。
【感想】 -
わりと淡々とした話。藍で染まった指先を汚れていると勘違いした後、素直に「家で作ってるものなのに、ごめん」と謝る出会いのシーンは印象的でした。でも攻が元々彼女がいるノーマルな上に、本当にイマドキの子タイプなので、個人的に苦手; BLとして感情移入しにくい話でした。おまけ短編のラブラブっぷりは可愛かったですけどね。
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美しすぎる話。飛び降りるフリとかを筆頭に、ノンケを好きになったのについうっかり口に乗せちゃった後の苦悩と、逆にノンケだったはずなのに惹かれてる事実に対する混乱がどっちもすごく綺麗。
消えるつもりでブログ見てたこと明かしたコメントとかも、ニヤリとする反面切ない。
くっついたあとの甘さも好きですが、この葛藤がいい。 -
一穂さんの作品は「雪よ林檎の香のごとく」が一番好きだったんですけどそれと同じくらいこれも好きです。遥の一途っぷりとかがひたすら切なくてディッシャーのくだりでじわりときました。短編はまた雰囲気が変わってかわいくて素敵です。
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大学の友人でバイト仲間の2人。受けが攻めに告白するところから
始まる。受けは攻めには何も求めない。攻めはそのことをきっかけに
意識するんだけど、やっぱり「一番大事な友達」。
「大事な友人だから、傷つけたくないから会えない」と、切ない別れを
選ぶほど、“恋”へ進んではくれない。でも、一番大切にしたくて
一番側に居たいのはわかっている、そういう2人が、結ばれていく
過程が、もの静かに進んでいくからこそ、切なくて感じる良作かと。
恋人になった後の2人の短編も入ってます。さらさらと綴られる
その上品な甘さに「ご馳走様」と言いたくなりました。お気に入り。